第11回
森の案内人・三浦豊さんと行く! 京都御所ツアー(2)
2019.09.25更新
こんにちは、ミシマガ編集部です!
今年もいよいよこの季節がやってまいりました。『ちゃぶ台』Vol.5「宗教×政治号」、10月20日刊行です!(予約はじまりました!)
今年の『ちゃぶ台』、特集タイトルは「ぼくらの宗教 みんなのアナキズム」です。
宗教特集ということもあり、『木のみかた』(コーヒーと一冊)の著者三浦豊さんから、「森の案内人、『糺の森』の言霊に迫る!」についてのご寄稿をいただきました。
下鴨神社の境内という立地、そして「ただすのもり」という言葉の響きからわかるように、神聖な場所として敬われてきました糺の森。聖地と人々がどのように関わってきたのか、森の案内人の三浦さんが迫ります。
さて本日のミシマガも昨日に引き続き、復活ミシマガジン。『木のみかた』刊行直後の2017年4月に掲載された記事を再掲します。本日は後半をお届けします。
ミシマ社メンバーが京都御所の森を、三浦さんに案内してもらいました!
「木のみかた」がわかると、森へ出かけたくなります!
庭園の極意
三浦 いいですね〜、庭園。昔は貴族たちが船を浮かべて楽しんでいたんでしょうね。滝の音、聞こえますか?
滝まわりの石の配置も考えられていて、太鼓の内側のような構造を作って、反響して滝の音が聞こえやすいように配置しているんです。
景色も昔はもうちょっと開けていて、東山の景色まで見えました。借景ですね。それで、この滝も東山から来た水ですよ、ということをアピールしていたんです。そうやって庭園っていうのは、各要素のありがたみを最大化するように作られているんです。
―― 庭園の極意、奥が深い・・・。そして、貴族、いいなあ。
短距離向きの木、マラソン向きの木
三浦 これは、全然性格の違う木がとなりあってますね。椋の木と樫の木です。どう違うかというと、椋の木は、冬には葉っぱを全部落とすんです。理由は、冬は日照時間が短くなるし、太陽の日射角度も低い。だから「葉っぱをつけてても無駄だ」って思うタイプの木です。冬は休もうって思って生きてるのがこいつです。
逆に樫の木は、冬でもあったかい日はある、だったら「葉っぱずっとつけとこう」と考えるのがこいつの生き方です。効率悪いからと捨てちゃうんじゃなくて、ずっとつけてたらいいことある、と信じてつけ続けます。
葉っぱを落とす椋の木の方が、春の芽吹きの勢いはすごいけど、冬は丸裸。樫の木は安定して葉を茂らせ続ける。だから、短距離向きとマラソン向きの木ってかんじですね。
宮内庁V.S.環境省
―― こうなってくると、木も人も同じ。メンバーも三浦さんと同じように徐々に徐々に木と人の境界があわくなってきたところで、ツアーもいよいよ終盤。
どうやら三浦さん、一本の木に何かを感じたようです。
三浦 この木は面白いですね。ここのエリアは、最近迎賓館ができたこともあって、宮内庁と環境省の管轄の境目なんですよ。それで木に対する見解が宮内庁と環境省で違うように思います。
宮内庁的には、迎賓館の裏を鬱蒼とした森にしたくないから、松など見栄えがする木を植えてほしいと思ってます。でも環境省は「自然のまま」にしておきたい。
結果的には、松は生えてはいるんですけど枯れてしまって、環境省からしたら「ざまあみろ」という思っているような気がしますね。
―― 一本の木から水面下の政治的な争いまでみてとる三浦さん、おそるべし...。そして京都御所おそるべし...。
メンバーおすすめの木
三浦さんに京都御所を案内していただいたメンバー。京都御所に生えていた木のなかから、メンバーが共感したり、グッときた木をご紹介いたします!
【メタセコイアの推しポイント!】
メタセコイアの巨木を下から見上げてみると、ドーンと空に向かってまっすぐ伸びていて、眺めれば眺めるほどそれが心地よく、わが気持ちまでまっすぐ突き抜けていくような感じがしました。この木は化石でよく見つかって、当初は絶滅種だと考えられていたそうですが、70何年か前に中国で生木が見つかって以来、各地に植えられているそうです。生ける伝説っぽくて、なんだかカッコいいのもポイントです。(渡辺佑一)
【伊呂波紅葉(イロハモミジ)の推しポイント!】
樹高がそれほど高くなくて、傘のように丸くひろがる枝が優雅な感じ。今の季節は、芽吹く直前の葉っぱが少し赤味を帯びていて、木全体がうっすら赤く発光しているように見えて、すごく色気があるなぁと思いました。
紅葉は「楓」とも呼ばれますが、それはこの木が、風に乗せて種を飛ばすという生存戦略をとっているからだそうです。三浦さんが見つけてくださった種は、羽の形をしていて、遠くへ飛べるような「強くていい風」が吹いたときに、木から離れるように出来ているそうです。「いい風に乗る」。見習いたいです。(星野友里)
【姥目樫(ウバメガシ)の推しポイント!】
御所ツアーのはじまりは、まずこの姥目樫から。御所のまわりは、ずーーーっと生垣で覆われています。この生垣こそが、姥目樫です。ということを、毎日この御所を横目に通勤していたのに、まったく知りませんでした。名前を知るだけで、その地との距離が一気にちかく感じます。
姥目樫は、もともと海岸沿いに生える植物です。海岸沿いに生えるということは、イコール、潮風や悪環境に強いということ。御所のまわりは車や人がたくさん行き来する道路なので、排気ガスなどの人が生み出す環境にも耐えられる植物を...ということで、明治時代に植えられたそうです。急な環境変化にも負けず、凛々しく御所を守っている姿、なんだか心にじーんとくるものがありました。(新居未希)
【榎(エノキ)の推しポイント!】
御所のなかで大きな榎に対面したときの衝撃と感動は、本当に忘れられません。今回のレポートは京都オフィスを出たところから始まっていますが、実は出発前に三浦さんが、オフィスのお庭の片隅に、榎の子どもが生えているのを教えてくれたのでした。ひょろ〜っとしていて弱々しく、「なんか小枝が地面から生えてるな」くらいのものでした。それがこんなになるなんて...!素直に生命の力強さを感じたし、夢が広がるなあ、とすごくわくわくしました。(長谷川実央)
【椋(ムクノキ)の推しポイント!】
三浦さん曰く「ケヤキ(欅)はキレイ好きなんです」。樹表にコケが生えたら、樹皮ごとボロボロと落としてしまうらしいです。対してムク(椋)は、コケが生えても、そのまま生やしっぱなし。ズボラなのか、慈悲深いのか......それぞれに生存戦略があるようですが、わたしは断然ムク派です。コケと共に生きる姿勢に強い共感を覚えます。きっとコケがコート代わりになってくれて、身も心もいい心地......だと思います。木に生まれ変わるならば、わたしはムクになりたい。(池畑索季)
【欅(ケヤキ)の推しポイント!】
初日のレポートで、欅の漢字の語源は木の幹が「拳」の跡に見えるから、というお話がありましたが、言葉の語源は、ケヤカ、とか、ケヤケシ、つまり著しく目立つ、とか、上品で普通とは違っていると云う古語からきたそうです。そういえば、高校の芝生広場に1本大きなケヤキの木が生えていて、それにちなんでなのか、生徒の優秀レポートをまとめた冊子のタイトルが「欅」でした。僕のものが掲載されたことは一度もありませんでした。(田渕洋二郎)
編集部からのお知らせ
2019年度ミシマ社サポーター、募集中です。
ミシマ社では、日々の出版活動を応援してくださるサポーターを募集しております。2013年に「サポーター制度」が始まって以来、サポーターのみなさまといろんな活動をご一緒してきました。「サポーター制度」についての考え方は、下記をご一読いただけますと幸いです。
また、サポーター制度の具体的な活動について知りたい方は、こちらをご覧ください。
現在、2019年度のサポーターを募集しております。サポーター期間は2019年4月1日〜2020年3月31日です。ミシマ社メンバー一同、これからもっとおもしろいことを、サポーターのみなさまとご一緒できたらうれしく思います。お力添えをいただけましたら幸いです。
2019年度ミシマ社サポーター概要
募集期間:2019年1月3日より
サポーター期間:2019年4月1日~2020年3月31日
※ どの月にご入会いただいても、次年度の更新時期はみなさま来年の4月で統一です。ご了解くださいませ。その年の特典は、さかのぼって、全てお贈りいたします。
2019年度のサポーター特典
以下の特典を毎月、1年間お届けいたします(中身は月によって変わります)
* ミシマ社サポーター新聞(1カ月のミシマ社の活動を、メンバーが手書きで紹介する新聞)
* 紙版ミシマガジン(年2回発行・・・の予定です!)
*『ちゃぶ台』をはじめとした、今年度の新刊6冊ほど(何が届くかはお楽しみに!)
* ミシマ社で作ったグッズや冊子
* サポーターさん限定イベントのご案内
* ミシマ社主催イベントの割引
・・・などを予定しております!(※特典の内容は変更になる場合もございます。ご了承くださいませ。)
お申し込み方法
新規でサポーターのお申し込みをご希望の方は、下記項目を、お電話、FAX、メール等にてご連絡くださいませ。
クレジット決済をご利用の場合には、こちらから直接お手続きいただくことも可能です。
- お名前(フリガナ):
- 性別、ご年齢:
- ご住所:
- 電話番号:
- FAX番号:
- メールアドレス:
- サポーター種類:ミシマ社サポーター(3万円+税)or ミシマ社ウルトラサポーター(10万円+税、こちらは法人・個人問わず、年間10名様限定です)
- お振込み方法:郵便振替(こちらから払込用紙をお送りします)または クレジット決済 どちらかお選びください。
- クレジット希望の有無と掲載名:
※ウェブ版ミシマガジンの「編集後記」や紙版ミシマガジンの「奥付」に、ご希望されるサポーターの方々のクレジットを入れさせていただきます。掲載をご希望される場合には、
・お名前をそのまま記載
または
・掲載用のハンドルネーム
のいずれかをお知らせください。
FAXご送付先:075-746-3439
E-mail:hatena@mishimasha.com
(件名「ミシマガサポーター申込み」にてお願いいたします)
TEL:075-746-3438
「ちいさいミシマ社展」
【会期】2019年8月21日(水)〜10月14日(月・祝)
【場所】国立新美術館 地下1階
ミュージアムショップ "スーベニアフロムトーキョー"
【開館時間】10:00-18:00(金・土曜日は20:00 まで)
火曜日定休(祝日または休日に当たる場合は開館し、翌日休館)
【アクセス】〒106-8558東京都港区六本木7-22-2
東京メトロ千代田線乃木坂駅 青山霊園方面改札6 出口(美術館直結)
※ミュージアムショップへの入場は無料です。