第1回
寝ている間に身体が固まる、ほか
2019.03.15更新
『絶対に死ぬ私たちがこれだけは知っておきたい健康の話』の著者、若林理砂先生のミシマガ新連載がいよいよスタート! 健康のお悩みにバシバシ答えていくこの連載、第1回のお悩みは、「寝ている間に身体が固まる」「口呼吸になってしまう」「朝ご飯は食べたほうがいいですか?」の3つをお届けします!
その1 寝ている間に身体が固まる (冷湿タイプ、20代、女性)
朝起きると、首から背中にかけて身体が固まっていて、ひどい時には痛みを感じることもあります。昼間に机に向かって本を読んだり、PCを使ったりしていることが多いです。また、ベストな枕の高さもよくわかっていません。生活習慣や寝具の選び方などに関して、アドバイスをいただきたいです。
ご質問ありがとうございます。寝て起きると身体が固まってるとのこと。・・・んとねえ、横になるってことをまずどういう状態なのか考えることから始めようかな。
布団の上で寝る状態って、重力に抗う力って必要がないでしょ? ほぼ水平だったら、チカラ入れなくてもその状態でいられる。立ってる時は、重力で地面にひきつけられまいとして無意識にしっかりと体に力を入れてその状態を維持しているわけです。ここまではOKかな?
けれど、あなたはそういう重力に抗うことがないはずの、寝ている状態の時に、体が固まっちゃう。これってねえ、寝ている最中に何か無駄に力を入れて、りきんでることを示しているのね。時々、寝ている最中に歯を食いしばって、歯が欠ける人とかいるんだけど、そういう場合は大抵ストレスがかかってるのだ。
何か心配事だったり、ムカつくことない? 最近。寝てる最中に体が固まる最大の理由はそこなの。なんらかのストレスがあって、寝ているのに力が抜けなくなっている。それが身体が固まる原因です。
ストレスを直接取り除けるならそれが一番いいんだけれど、現代におけるストレスは、たいていのばあい人間関係に端を発するのです。これって、そうそう簡単に取り除けるものではないのね。自分がいる環境ごと取り替えないとどうにもならないことが多くて、転職や転校など大掛かりなアクションが必要になることが多いからね。
こういう場合は1日に10分程度でいいから強度の高い運動をすると改善することが多いです。いろんな治療とか寝具の選び方とか、特別な生活習慣の処方は必要がなくてねえ。ごく単純な運動習慣をつけるだけで結構改善しちゃうのよ、こういうのって。運動すること・・・ここだけを避けようとして改善しない人がたくさんいるんだけども。
養生の3本柱である、「寝る・食う・動く」の動く以外は全部できてるのだけど、「動く」だけはどうしても手がつけられない人は多いの。やらない理由を口から滝のように、だだ漏らしに喋るのよね。こればっかりはやってみて体が楽になることを知ってもらわないとどうにもならないのよね・・・。ラジオ体操だけでいいから、朝一回行うことから始めて見てほしいです。
体質的にも冷湿だものね。水はけが悪くて冷えてしまう状態。これも、筋力不足から来る人がとても多いのです。強力におすすめしておくわ、ラジオ体操。
その2 口呼吸になってしまう (冷湿タイプ、20代、男性)
生まれつき喘息などアレルギー体質で、なかでも鼻水がひどいです。耳鼻科に掛かると、「アレルギー性と副鼻腔炎と花粉症だね」と言われました。おかげで鼻呼吸ができません。親や友達に「口あいてるよ」と注意されているうち、口呼吸がコンプレックスになってしまいました。寝ている間も口呼吸で、朝目覚めると喉がパサパサして、糊がはりついているようです。鼻の奥が腫れてしまっているのか、鼻を何回かんでもダメなんです。口呼吸は「ウィルスに感染しやすい」とか「顔が大きくなる」と聞きますので、鼻呼吸ができるようになりたいです。
小さい頃から喘息などを持ってらっしゃると、なかなか大変よねえ。冷湿タイプということは、手足の冷え感もあるのかな。男性の冷湿タイプ、そんなに多くないのですよ。もともと陽気が強いのが男性なので、湿気が多くても発散できちゃう人が多いんだけど、生まれつき喘息があるとなると、この体質は生まれ持ってのものだね。
口呼吸を止めるには、鼻粘膜の腫れを改善しなきゃならない。こういうの、東洋医学だと呼吸器系ってとらえないで、消化器系の問題ってとらえるのよね。専門的な言葉だと、「脾胃」の問題とするのだ。よく使われる処方だと越婢加朮湯とかです。消化器の働きを助けて、水分のハケを良くして改善してくのね。もちろん、私は相談者さんと直接会っているわけじゃないから、この処方があっているかどうかはちゃんと鑑別できない。なので、漢方がわかる薬剤師さんか、漢方外来のある病院に行ってみてね。
その上で。この脾胃の問題。養生でどう改善していくかというと。こういうアレルギー体質で鼻づまりが出やすい人の鬼門になるのが炭水化物とか甘いものの多食なのです。なぜかこういう方、甘いもの好きだったりするんですよ。
東洋医学では胃腸は「甘」味を欲しがると考えられています。この甘みは穀物の甘みも砂糖の甘みも含みます。ご飯・パン・麺と、甘いものは同列に並べるのね。もちろん甘いもののほうが、「甘」の強度は高いけどもね。胃腸は甘さを取り込んで力を増すと考えられてるんだけど、多すぎると困ったことが起こるのだ。力が増大しすぎて暴走し、あちこちで水分の渋滞を引き起こすようになるって考えられてるの。何でも過ぎたるは猶及ばざるが如し。ほどほどじゃないとエライ目にあうってことなんだけど。
もし、私が言ったように甘いものとか炭水化物が好きだったら、一回減らしてみてください。食事の炭水化物量は、全食事量の1/4に、そして、間食や食後のデザートの甘いものは全面的にやめてみて。2週間くらい続けてみて、鼻づまりが改善するようなら大当たりです。あ、そうそう、この「甘」はお酒も含みます。アルコールは甘いものと同列です!
もう一つは、肝経を刺激してみるのもアリかな。行間(こうかん)という経穴があります。経穴って、一般的に「ツボ」って言われるアレです。足の親指と人差し指の間、水かきのところにあります。ここを、箸の先くらいの太さのもので押してみて。ぎゃーっていうくらい痛かったらこれも大当たり。
炭水化物控えめ、甘いもの禁止、経穴刺激。試しにやってみて!
その3 朝ご飯は食べたほうがいいですか? (熱乾タイプ、30代、女性)
朝ご飯を食べたほうが、日中のエネルギーも湧くし、身体にいいのだろうな・・・と頭では理解しているのですが、朝、まったく空腹を感じません。体質のタイプなどによって、朝食を食べなくてもいい人もいるのか、あるいはやはり食べたほうがいい場合には、どんなものを食べるのがいいのでしょうか??
まず、質問者さんが熱乾タイプのところに注目しますね、私は。
・・・ねえ、何時くらいに寝てるかな? すっごい遅かったりしない?? あと、前日の晩御飯、何時頃に食べてるかな? 熱乾タイプの方って、寝るのがもったいない・食事時間を確保するのがもったいない・・・って、夜遅くまで仕事とか趣味に勤しんでる人が多いのです。 標準的な時間帯、8時くらいまでに夕食をとって、12時前に寝て、翌朝7時ごろまでに起きるなら。食事と食事の間は11時間から12時間ほどあきますね。
だいたい、食事と食事の間隔が4から7時間ほど開くと空腹を感じるようになるのですが、夕食と朝食の間はそれよりも相当長い時間が挟まっているんです。ですから、上記のような生活リズムを採用しているなら、普通は朝はお腹がすくもの・・・なのです。
だけど、夕食が10時や11時、寝るのが1時ごろ、起きるの7時・・・なんて生活だったら。これは、夕食が胃に残っている状態で睡眠に入ることとなり、なんとなく胃もたれしたような状態で目が醒めることになります。
なので、お会いしていないのに勝手な推測ですが、多分夕食が11時、場合によってはスイーツ付き、寝るの1時半、起きるの7時半・・・この辺じゃないかな? と。これだと、お腹すかなないですから。
もし、生活習慣はしっかりしているようなら、朝食を食べないことにより、昼食・夕食の順番に食事量が多くなっているケースも考えられます。この場合、夕食を意識的に減らし、朝食時にお腹がすくように仕向けることが必要です。
乾熱タイプの方は、なかなか太れない・のぼせやすい・乾燥肌などの症状をお持ちの方が多いのですが、この状態を改善するには胃腸の状態を良好に保ち、三食食べたものがきちんと吸収されるように仕向けることが近道なのね。夜って寝るだけでしょ。そこに、重いもの食べて胃が疲れた状態で寝ちゃうと、次の日の朝、胃に石でも入ってるみたいに重くなっちゃうの。だから、夕食を少々減らし、その分を朝食でとるようなイメージが必要なのね。
朝食は、野菜入り暖かいスープものと何か炭水化物、タンパク質の組み合わせが基本です。一般にはご飯、野菜入り味噌汁、焼き魚とか、パン・野菜スープ・卵料理とかだよね。だけど、めんどくさかったらお粥や雑炊、ウチみたいにうどんに鶏肉と野菜たっぷり・・・とかでいいです。ワンディッシュに全部突っ込んじゃえ。
・・・そして、「いや、そんなことないです。きちんと7時に夕食で、食事量も良好で、寝るのは11時ごろ、起きるのが6時半から7時ごろです!」という方で、あさにお腹が減らないなら、これはなんの問題もないので、食事は1日2回の昼・夕食でかまいません。水分だけはとってくださいね、寝起きは血液が濃くなっているから水分もとらないで出勤では、血栓ができたりするのでね!
りさ先生の先生 鍼灸の先生編①
さて始まりました、「りさ先生の先生」のコーナーです。このコーナーでは、若林先生がお世話になっている、いろいろな「先生」たちにお話を聞きに行きます。
今回から4回にわけて、若林先生の鍼灸の師匠である足立先生や、若林先生とともに足立先生が代表を務める勉強会、鍼道五経会(しんとうごけいかい)に所属する鍼灸の先生たちと語らう模様をお届けします。
本日のテーマは、「死生観」です。100年前と比べると、現在は平均寿命が倍近く伸びています。そのため、昔とは違って、日常生活で死を意識することはあまりありませんが、本当にそれでいいのか・・・? というお話です。
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