第5回
がんばらないとうんちが出ません、ほか
2019.07.11更新
7月なのになんだか涼しくて、ちょっと拍子抜けのこの頃です。今回のお悩みは、「がんばらないとうんちが出ません」「太りたいのに太れません」「風邪が長引きます」の3つをお届けします!
その1 がんばらないとうんちが出ません。(冷乾タイプ、30代、女性)
子どもの頃から、便秘がちです。朝、牛乳とヨーグルトとバナナ、みたいな感じでトイレを促すものを無理やりたくさん食べると、やっとバナナうんちが出てきますが、ふだんはカチコチで、おしりがちぎれそうです。
あわわわわわ・・・冷乾タイプの便秘は、牛乳とかヨーグルトとかバナナとかはダメなんですよ!! これは繰り返し言って行かなきゃダメなヤツね。意外とみんな知らない話。便秘には二種類あるんです。熱の便秘と冷えの便秘。
熱の便秘、熱秘(ねっぴ)は、いわゆる一般的な便秘。野菜を取らずに肉と炭水化物ばっかり食っているような人がなるやつです。これは、牛乳とかヨーグルトとかバナナとか、ケ○ッグのオ○ルブ○ンとか、きんぴらごぼうとか、繊維質が多いものやお腹が冷えるようなものを食べたらうまく排便ができるタイプの便秘なのね。でも、相談者さんの便秘はこれじゃないのです。
あなたの便秘は、冷え便秘。西洋医学で言うところの「弛緩性便秘」。腸の蠕動運動が少なくなってしまい、大便が腸内を通過する時間がやたらに長くなってしまって、水分がどんどん抜けてっちゃうのです。これで、うさぎの糞(医学用語で兎糞便「とふんべん」と本当に言う。)みたいな便になってしまうのです。こちらのタイプの便秘の場合。一般的な便秘に良いとされる食物をとってもほとんど効果がなく、お腹が張ったりガスがでたりするだけだったりします。
さて、対処方法としては。胃腸の動きを活発にしないとならないのよ。なので、牛乳とかヨーグルトとかバナナとかを大量に食べてなんとかするのをやめます。そして、朝ごはんは温かい野菜スープなんかにして、おなかあたためることから始めて。治療方法としては漢方薬を使うことが多いですね。漢方の下剤である大黄甘草湯に、おなかの力をつくる大建中湯だったり小建中湯を使います。この、建中湯が大切なのですよ。下剤がなくても便が出るような力を作るのです。
また、ペットボトル温灸も役に立ちます。中かん、足三里、天枢あたりをペットボトル温灸するのを習慣にしてください。間違っても冷たい牛乳とかヨーグルトとか、 バナナで冷やしちゃダメです! がんばってー!
その2 太りたいのに太れません。(冷湿タイプ、20代、男性)
小学校のあだなでは、ホネホネマンと呼ばれたこともありました。どうしたら、標準体型になれますでしょうか?
ホネホネマン・・・なんとなくわかります。うちの患者さんとか養生団員によくいるタイプですね。なかなか太れないんですよね。これは、とても時間がかかります。多分最低で2年くらいはかかるかなあ。それでもやってみる価値はあると思うので紹介しますね。
まず、この手の方は消化器系が弱いんです。なので、少しでも食べすぎるとおなかがくだってしまい、余計に痩せちゃうんですよね。ですから、一回あたりの食事量は抑えめにして、回数増やしていきます。間食ではなくて、間に小さい食事を挟むようにするのです。これを、養生団では「分食(ぶんしょく)」と呼んでいます。こうやって、胃に負担をかけすぎないようにして、食事量を確保していくのです。
これと並行して、胃腸の状態を整えていきます。先ほどの弛緩性便秘で使っていた大建中湯や帰脾湯や六君子湯を使っておなかのチカラをつけていくのですよ。どれが合うかは漢方薬局に聞いたほうがいいね。あ、うちの「アシル養生堂」に相談してくれてもいいよ。
あとは、ペットボトル温灸。足三里だけでいいので、毎日しっかり続けて欲しいです。消化能力が低い胃腸の状態を整えるのにはこの経穴だけでかまわないから。あちこちたくさんやろうとするとだいたい続かないのでね。お湯が冷めないからもったいないと思ったら失眠と三陰交とか追加しとくといいけどね。
https://www.nhk.or.jp/lifestyle/article/detail/00098.html (動画もあります)
こういうのを地味に続けて体重が増えてくるまで年単位でかかり、標準体重までとなると2年ちょいくらいはかかります。でも、養生団員には、この方法でしっかりとした体を作り上げた人がたくさんいます。本当にちゃんと標準体型までイケるので、がんばってみて。
その3 風邪が長引きます。(冷湿タイプ、20代、女性)
あ、これ風邪引いたなと思っても高熱が出てその後数日で直るタイプではなく、発熱せず咳が出たり頭痛や体のだるさがずっと続き、ひどい時は1、2カ月ぐらい長引きます。なにか違う病気なのかと心配になって病院で診断を受けても風邪ですねとの診断で薬をもらって終わり・・・というのがほとんどです。そしてゆるーく長い期間をかけて治っていきます。風邪を引いても発熱してスパッと治る、というのが理想なのですがなにか心がけることはないでしょうか?
これは、ベースになっている体力のなさと、治りかけで普通に動き始めちゃうことによって長引いてる可能性が高いですね。綺麗に発熱できるということは、体力があるって証拠でもあるのでね。
発熱って、東洋医学では「正気」と「邪気」のぶつかり合いで出るものだと考えられています。正気も邪気も強い場合、ものすごい高熱がでるんだけど、正気の方が強かったら速やかに治ります。正気だけが強かったらそもそも邪気が入り込めない。そして、邪気の方が強かった場合、発熱せずに、相談者さんみたいな症状がずっと続くのです。それは、風邪(ふうじゃ)が体の中にずっと残ってしまうから。
ここでいう、邪気というのは、なにも幽霊や悪魔みたいなやつではなく、あるべきところに存在していれば「正気」なのに、あらぬところにあるから「邪気」になってしまうという考え方に基づいたものです。「風邪(ふうじゃ)」は、体外にあるならただの「風」です。だけど、体の中に入っちゃうと「風邪」になるんだな。東洋医学で言うところの邪気っていうのはそういうものなのです。片付けされずに落ちてるレゴブロックみたいなもの。アレ落ちてるの間違って踏むとすげえ痛いけど、レゴがボックスに入って片付いてたら単なるレゴだよね。
なので、まずは体力をつけないとならんのです。そのためには本読んでください(笑)。
『絶対に死ぬ私たちがこれだけは知っておきたい健康の話』若林理砂(ミシマ社)
養生以外に正気の強さを手に入れる方法はないのです。それがいわゆる体力ってもんだから。
また、治りかけというのは、かなり気をつけて過ごさないと邪気が体の中に再度舞い戻ってしまうものです。回復期は必ず早寝すること。10時半とか11時までには寝てよね。寝床でスマホとか厳禁。目を使うとそこから気血を消耗するからね。わたし、風邪の引きかけの時や治りかけの時、目を極力使わないのです。これでだいぶ違いますよ。
理砂先生の先生 カポエイラの先生編
今月からの4回は、りさ先生がブラジル発祥のカポエイラを習っている米倉竜太先生との対談をお届けします。初回の今回は、体育の授業で運動が嫌いになってしまうような、子どもたちのスポーツ環境についてのお話をお送りします。
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『謎の症状 心身の不思議を東洋医学からみると?』