第10回
スマホを使いすぎて首が痛いです、ほか
2019.12.21更新
いつのまにか師走。ちまたではインフルエンザの流行も始まっているようですが、ミシマ社一同はなんとか持ちこたえています。忘年会などハレの機会も多くなりますが、体も整えながら年越しを迎えたいものです。今月は、「スマホを使いすぎて首が痛いです」「くしゃみが沢山出ます」「メニエール病と診断されてしまいました」の3つをお届けします。
その1 スマホを使いすぎて首が痛いです(熱乾タイプ、20代、男性)
私は毎日往復四時間かけて電車通学しており、その間にスマホを操作したり読書をしているので首が長時間曲がってしまい、ストレートネック(スマホ首)になりつつあります。その影響で首が凝るようになり顎下がたるむようになりました。実際にスマホを眺めているときの対策、またストレートネックに良いストレッチなどがあればお教えしていただきたいです。
いやぁ・・・原因がわかっているわけで、まずはそこを減らすなりなんなりしないとならないのはわかってくださいね! 人間の体は、同じ姿勢をずっと続けるようにはできていないのです。
エマって知ってますか。
座りっぱなしでオフィスワークをずっと続けたら20年後にこうなるよ・・・というモデルです。前かがみで作業をし続けると、背中や首がこう曲がってくるよ、という話。「習慣」の破壊力たるや、そりゃあもうものすごいものがあるのですよ。
どんなに頑張っても、下向いている時間が長ければ首には負担がかかります。対策を講じるにしても、長時間同じ姿勢を続けているなら、やはりその形に変形してくるわけなのです。
PC作業で、ノートパソコンが一番問題のある姿勢を作り出します。下を向かないと画面が見られないからです。私は、自宅のデスクトップパソコンは、アームを使って目の高さにモニターを持ち上げてあります。画面と正対できるようにしてあるのです。こうすることで、脊柱に負担がかからない姿勢で執筆ができるようにしてあります。ついでに、座っている椅子はバランスボールが座面になっているものです。どうやっても背骨に無理のない姿勢でしか座れないようにしてあります。
ですから、スマートフォンを使っていても首に負担がかからない方法とは、「目の高さにスマートフォンを持ち上げて観ること」なのです。とはいえ、この姿勢は今度は肩に負担がかかります。ですので、私はよく、肘の下に反対側の手の甲を置いてやったりします。
ストレッチ・・・に関してですが、特にストレートネックに対して特異的に効くストレッチというよりも、一般的な首のストレッチしかないですね・・・。
骨自体の変形まで行かないうちに、長時間下を向く習慣事態を考え直した方がいいと思います。骨格自体も変形させてくるのが、習慣の恐ろしさなのです。
鍼灸医学の最重要古典である「黄帝内経 素問」宣明五氣篇には
五勞所傷.久視傷血.久臥傷氣.久坐傷肉.久立傷骨.久行傷筋.是謂五勞所傷.
とかかれています。
「五勞の傷る所、久しく視れば血を傷り、久しく臥すれば氣を傷り、久しく坐すれば肉を傷り、久しく立てば骨を傷り、久しく行けば筋を傷る。是れを五勞の傷るところ、と謂う。」
という内容です。久しくとは、長時間という意味ですね。長時間同じ姿勢や動作を繰り返せば、あっちこっち壊れますよ・・・と書かれています。こんなことを、約3000年ほど前から言われているのです。
3000年前の人類より、進歩していたいじゃないですか、ねえ。養生しましょう。
その2 くしゃみが沢山出ます(冷乾タイプ、20代、女性)
くしゃみが沢山出ます。一度に三回は当たり前、多いと十回連続出ることも。症状は小学生の頃からあり、年間を通してのことなので、花粉症ではないと思います。市販の点鼻薬は効果を感じられませんでした。
くしゃみのし過ぎで頭がボーッとする、体がダルい、ということもしばしば。どうにかおさめる方法がないか、アドバイスいただきたいです。
東洋医学ではくしゃみのことを、「噴嚏」って書きます。これは、肺が弱くて、肺から気が逆巻いてしまうというものだと考えられているのです。相談者さんは冷乾タイプでいらっしゃるから、肺と腎がたぶん弱いタイプだと思うんですよね。この二つが弱いと、気の量が少なく、巡りも悪いって考えるのです。おそらく皮膚も弱いと思います。市販の点鼻薬が効かないものまあ当たり前と言えば当たり前。問題はそこじゃないですからね。
くしゃみのし過ぎで頭がぼーっとする・・・これは、東洋医学だと、肺の気が外に飛び出しすぎて腎に戻らなくなるためと考えるのですよ(笑)。呼吸すると、大気から「天の気」を体に取り込むのですが、こいつは臍下丹田、腎のタンクみたいなところに納められるとされます。くしゃみしてると、ここまで気がおりてこなくて、頭に登りっぱなしになり、結果的にだるいとか、ぼーっとするという症状につながるって言うんです。
西洋医学的に言うなら、これは気温差による反応ではないかと思います。自律神経系の問題ね。寒冷蕁麻疹とかって聞いたことないですか? あれは寒さ刺激でカラダが勘違いしてしまい、蕁麻疹という炎症反応が起こってしまうものです。止まらないくしゃみというのは、寒さの刺激を体に害のあるものと勘違いしてしまい、くしゃみという外的を排除する反応を繰り返し体に起こさせてしまうというものです。
こういう場合は、おおもとのからだの力を増やすことに注力します。まずは、睡眠をきちんと確保し、食事の量をしっかりとって、カラダに少し厚みを作ってください。そして、腎を強化するということで、足腰を強化ですね。よく歩くこと!
ペットボトル温灸では湧泉、太白、経渠あたりを使います。とにかく体力を増やすことが大切。がんばってねー。
その3 メニエール病と診断されてしまいました(冷湿タイプ、30代、女性)
以前頭痛がひどいと相談させていただき、脾虚と診断していただいた者です。先生のアドバイスに従い、少しずつ良くなってきたように感じます。その節はありがとうございました。しかし、最近メニエール病と診断されてしまいました。幸いそんなに症状はひどくないのですが、いつめまいや難聴が来るかわからず、怖いです。何かアドバイスいただけたらと思い、再度メールをさせて頂きました。よろしくお願いいたします。
メニエール病・・・めまいや難聴がでたのでしょうか。
メニエール病の診断基準がこちらですね。
それと、メニエール病って言われるからには、どの程度の診断を受けたのかなあ。
メニエール病と確定するには結構大変なんですが、質問者さんはどんな診断を受けたのかが不明なのでここでは一般的な話にとどめることになるね。病院の治療は受けているとして。東洋医学的な話をちょっと。
脾虚タイプの頭痛持ちですから、まあ、水滞があるんですよね。冷湿タイプだから間違いなくそうだと思います。水滞ってのは、西洋医学の上記のサイトに書いてある「内耳の水腫」を発生させることもあるものです。体の中の水分が滞って偏在するんです。これをいかに解消するかが、東洋医学的な治療の中心を成します。
水滞を減らすとなると、最初の脾虚を何とかしないとならんのです。脾胃の働きがうまくいっていないと、水が滞るんですよ。なので、前回の相談時の方法を踏襲しつつ。アルコールは極力避けてください。飲まない方がいいです。
これねえ、脾虚に肝気上逆という症状がもう一つ加わってると思います。なんかストレスかかったんじゃないかしら。そうすると、脾虚が加速したうえで、肝の気が逆巻いて頭まで上がって、一気にめまいなんかを引き起こしてくるんだわ。気逆はアルコールが加速させるから、飲酒はダメなんですよ。
最近ストレス耐性についていろいろ思うことがあるのですが・・・あらゆることに最悪のことを考えてしまうというのは、カラダがヒマだからかなあと思います。思考だけフル回転させているとどんどん頭の方に気血が集まってメニエール病が治りませんからね。運動した方がいいですよ!
りさ先生の先生 武術の先生たち編②
先月からの本コーナーでは、りさ先生が主宰するStudio Libraにて武術を教える先生方(高無宝良先生、嘉陽与南先生、駒井雅和先生、北川貴英先生、米倉竜太先生)との座談会トークをお届けしています。2回目の今回は、練習の楽しさや、練習する「場」の影響力についての語りを中心にお届けします。
お知らせ
この連載が、書籍になりました!
連載以外の相談もたっぷり収録されています。
ぜひ書店でお買い求めください!
『謎の症状 心身の不思議を東洋医学からみると?』