健康番長若林理砂先生のバッチコイ!

第11回

へその上あたりが膨れた感じがします、ほか

2020.01.24更新

 新年おめでとうございます。暖冬とはいえ、寒い日が続いていますが、みなさま体調はいかがでしょうか。今月は、「へその上あたりが膨れた感じがします」「予防接種は必要でしょうか?」「手汗が止まりません」の3つをお届けします。

その1 へその上あたりが膨れた感じがします(冷乾タイプ、20代、女性)

多部杉謙信.jpg ご飯を食べた後、ときどき、立ち仕事をしていると、おへその上あたりがぷくーっと膨れた感じがします。「誰か私のお腹を圧縮してくれ〜」と思いつつ、アルバイトをしています。だんだん膨らんだ感覚が長続きすると吐き気がします。これは何なのでしょうか。

りさ先生.jpg たぶん脾虚なんだと思うんですが・・・脾虚の説明をするべきですねきっと。冷乾タイプっていうことは、体は薄くて体重が軽いタイプだと思います。こういう方は、消化能力が低いことが多いのです。それで、この症状はたぶん胃下垂と呼ばれる症状ですね。消化器って何でできてるかというと、筋肉なのです。

 何か食事を取ると、胃にそれが入るわけです。そして、食べたものを消化する時って胃が蠕動運動をするのですが、筋力が弱いので、胃が下がってしまって十二指腸あたりを圧迫。長時間これが続く場合は、十二指腸へ食物が流れていくのを阻害して、吐き気を催してくる・・・というわけです。

 胃そのものの力が足りないだけではなくて、腹筋が足らない場合もあります。おなかまわりは骨がないので、腹筋のテンションによって内臓が下がってしまうのを抑える働きがあるのですが、運動量が少なくて腹筋が薄すぎると、食事の重みに耐えられず下がっちゃうことがあります。これは高齢者には時々見られますね。流石に20代だとそれはないと思うけども。

 で。上記の、「胃の筋肉の動きが弱い」「消化力が低い」「内臓が下がる」という症状が、東洋医学では脾虚と呼ばれる症状群に含まれるんです。対処方法は、一回あたりの食事量は控えるけど、回数を多くして量は確保します。甘いものは厳禁。炭水化物偏重の食事もダメです。脾虚が加速します。対処方法は、足三里と胃の六つ灸のところにペットボトル温灸して養生させることが多いです。

その2 予防接種は必要でしょうか?(熱乾タイプ、30代、女性)

ネッツー.jpg この季節になると、インフルエンザの予防接種を受ける人をまわりにちらほら見かけます。でも、予防接種をしたけれど別の型のインフルエンザにかかったという話もきくので、どれくらい意味があるのか疑問もあります。とはいえ、子どもやお年寄りなど、体力がない人はやはり、受けたほうがよいのでしょうか?

りさ先生.jpg インフルエンザくらいだと、自分自身の体力があると別にかかっても平気だったりするから、受けなくてもいいかなーってなるね。特に今年みたいに、流行期がインフルエンザワクチンの接種時期よりもずっとはやく、1ヶ月以上早く来ちゃった場合は、わたしでも「もうしょうがないな」って打たないってこともありますね。理由は、インフルエンザウィルスに先にエンカウントしてしまうだろうから、ワクチン接種してもあまり意味がないだろうと思うから、です。

 インフルエンザって、流行期間中にはほとんどの人が不顕性感染をしていると言われています。んで、子供らは、インフルエンザワクチンを2回接種しなければなりません。2から4週間開けて2回目を接種。今年はインフルエンザ流行が9月から始まっていたので、通常ワクチン接種が始まる10月末から11月頭に行っても、免疫が形成される前にたぶんどっかでインフルエンザウィルスには出会ってしまっているでしょうね。

 とはいえ。集団生活をしている子供達と共に暮らしている人は感染確率は上がるし、家族に体力が低下している人や基礎疾患がある人は重症化しやすいし、妊婦さんは治療薬が使えなかったりもするので、流行期が前倒しになっていてもワクチンを接種する方がいいのではないかと思います。軽症で済むことが多いからね。

ということで、今年はインフルエンザワクチンを打たなかったけど、通常の流行期の場合は打つことにしている・・・のが私です。

その3 手汗が止まりません。(熱乾タイプ、20代、男性)

アツガーリー.jpg 基本的に乾燥肌なのですが手のひらだけ汗っかきです。手に関しては常に潤っているのですが緊張すると水浸しになります。恋慕う異性と手を繋ぐ際に相手に引かれてしまわないか心配です。手汗を抑えるツボや方法はないでしょうか。

りさ先生.jpg あああ。手汗ね〜。あなたの「恋い慕う」って表現が素敵ねえ・・・。うん、わかるわかる。これは、精神性発汗というもので、交感神経の緊張で汗か出るのよ。同じく緊張によって発汗するところがあって、脇の下と足の裏、頭なのね。わたしこの間、カポエイラの稽古中に、初めて担当する打楽器を叩いたのだけど、一気に脇の下に発汗したわね・・・。

 精神性発汗はからだの自然な反応なので、完全に止めることはできません。ですが、からだに過度な緊張を起こさないことで汗の量を抑えることはできるかな。

 相談者さんは普段、運動習慣はありますか? 日常的に運動で発汗しておくことで、全身の汗腺の働きを良くしておくことで、一部分に過度な発汗が起こるような自律神経の過剰な反応を減らすことができます。乾燥肌らしいし、おそらく身体全体の発汗量が少ないんではないかなと思います。

 また、副交感神経の訓練として、呼吸法もおすすめします。呼吸法はシステマで習うといいと思うよ。

 リラックスだけを追求するとうまくいかないのが呼吸法だし、場合によってはスピリチュアルな方面にはまり込んでしまったりもするのね。精神性発汗をコントロールするのに、スピリチュアルは必要ないからね。

りさ先生の先生 武術の先生たち編③

 3回にわたってお届けしてきた、りさ先生が主宰するStudio Libra にて武術を教える先生方(高無宝良先生、嘉陽与南先生、駒井雅和先生、北川貴英先生、米倉竜太先生)との座談会トーク。最終回の今回は、武術がもつある種のネガティブさをふまえて、あえて楽しく学ぶ、ということについてお届けします。

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若林 理砂

若林 理砂
(わかばやし・りさ)

臨床家・鍼灸師。1976年生まれ。高校卒業後に鍼灸免許を取得。早稲田大学第二文学部卒(思想宗教系専修)。2004年に東京・目黒にアシル治療室を開院。現在、新規患者の受け付けができないほどの人気治療室となっている。古武術を学び、現在の趣味はカポエイラ。著書に『絶対に死ぬ私たちがこれだけは知っておきたい健康の話』『気のはなし 科学と神秘のはざまを解く』(ミシマ社)、『東洋医学式 女性のカラダとココロの「不調」を治す44の養生訓』(原書房)、『安心ペットボトル温灸』『大人の女におやつはいらない』(夜間飛行)、『その痛みやめまい、お天気のせいです――自分で自律神経を整えて治すカンタン解消法』(廣済堂出版健康人新書)、『決定版 からだの教養12ヵ月――食とからだの養生訓』(晶文社)、など多数。

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