健康番長若林理砂先生のバッチコイ!

番外編 新型コロナウィルスを中医学でどう捉え、どう予防しようとしているか。

2020.02.27更新

りさ先生.jpg 新型コロナウィルス(COVID-19)の流行について様々な情報が飛び込んできますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。わたし? わりとふつうに過ごしてるよ。
 去年の12月の初旬あたり、こんな風に暖冬だと温病・・・温疫流行るっていうよなあ・・・ってふと思っていたんですな。まあ、そしたらこれでしょう? 「わたしえらい!予測あてたじゃん!」という気持ちと、「こういう予測は当らんでよろしい」という気持ちがない混ぜになってました。でも、まあ局地的な流行ですむだろうと思ってたのですよ。

 ですが。どんどん感染が拡大していくのを見て、これは日本に入ってくるな・・・という予測になっていきました。
 その頃には、中国政府発表の情報を見るようになっていました。

国家卫生健康委在1月22日发布了《新型冠状病毒感染的肺炎诊疗方案(试行第三版)》

 中華人民共和国国家衛生健康委員会というのは、日本の厚生労働省みたいなものですね。
 ここに、中医学的な見解が掲載されています。
 これには予防法は入っていなかったのですが、

陕西省卫生健康委发布新型冠状病毒感染的肺炎中医药防治方案

 こちらには予防方剤の案が出ていました。体の皮膚表面の防御力を増やす「玉屏風散」を基本に加味したものですね。
 で。このページには、罹患した人の舌の写真がありました。

 これで、わたしがどう対処するかが決まったんですな。胃腸の状態を整えることが最優先になるなあと。舌の写真をみると、みんな苔が分厚く、ゴッテリのった状態で、しかも色は黄色味を帯びています。舌の状態をみて病の鑑別するのを「舌診」と言います。これは、肺炎を引き起こすものだけれど、症状的には胃腸症状だということなのです。ですので、この舌診を見たわたしは、予防案をTwitterに掲載したりしています。

 その上で、わたしが主催する武術スタジオ「Studio Libra」の先生方に漢方薬をお渡ししたりしていました。内容は、

清暑益気湯+六味丸
補中益気湯+六味丸
玉屏風散+補中益気湯+六味丸

のどれかです。胃腸を整え、腎陰を増やす。玉屏風散が入っている処方があるのは、服用する方が気虚タイプだったからです。

 なお、現在の最新版の発表はこちらです。
 こちらでは、「温疫」の表現がきえ、「疫病」となっています。これは、温病ではなく傷寒の方ではないのかという指摘があったためではないかと思います。方剤としては藿香正気散(かっこうしょうきさん)という、夏風邪用の薬を使っています。肺炎に先立って胃腸症状があるのはやはり間違いがないようです。
 藿香正気散の藿香とは、パチュリのことです。わたしはこの精油が好きなのですが、このところバスタブに一滴落として入浴することが多いです。まあ、おまじないみたいなもんだと思ってください。

 もう一つ。こちらには、お灸による予防法が提示されています。

江西省新型冠状病毒感染的肺炎中医药防治方案(试行第二版)

0227-1.png

 方法1は、棒灸・・・これを燃やした香りを30秒嗅ぐというもの。ちょっとどうなんだろうこれは(苦笑)。

 方法2が、一般的なお灸の話をしています。使われる経穴は、中脘、神闕、関元。推奨は、棒灸をかざして使う方法ですね。施灸中に熱が浸透、移動、拡散などの特殊な感覚を感じる場所があればそこを重点的に行う事。艾をひねって使うことが可能なら、足三里に麦粒大の施灸を追加すると良好。棒灸は1日一回、45分くらい行うこと・・・と、かかれています。
 中脘、神闕、関元、足三里はどれもこれも、胃腸と腎の状態を整えるものです。これは、ペットボトル温灸で応用が効きますので、やっておいていいのではないかと思います。

 方法3は、棒灸を煮出してそれで足湯をする方法ですね。額に汗が出るくらいまでやれと。・・・もったいないなあ、棒灸。

0227-2.png

 検索するとこのくらい出てきます。

 COVID-19に対しては胃腸を整えて睡眠をしっかり取り、手洗いを欠かさず人混みに出かけないようにするという一般的な方法をお勧めします。わたし自身は、これにペットボトル温灸での施灸(失眠・湧泉が常に使う経穴です。これに上記の中脘、神闕、関元、足三里のうちの触って違和感や冷え感があるところをプラスです)と、六味丸+補中益気湯を使って体の力を増やしたりして生活しています。

 大丈夫、みんなそんなにこの病気は怖くない。大丈夫。この記事がみんなの健康維持に幾らかでも役に立つなら幸いです。

お知らせ

この連載が、書籍になりました!
連載以外の相談もたっぷり収録されています。
ぜひ書店でお買い求めください!
『謎の症状 心身の不思議を東洋医学からみると?』

書影.jpeg

若林 理砂

若林 理砂
(わかばやし・りさ)

臨床家・鍼灸師。1976年生まれ。高校卒業後に鍼灸免許を取得。早稲田大学第二文学部卒(思想宗教系専修)。2004年に東京・目黒にアシル治療室を開院。現在、新規患者の受け付けができないほどの人気治療室となっている。古武術を学び、現在の趣味はカポエイラ。著書に『絶対に死ぬ私たちがこれだけは知っておきたい健康の話』『気のはなし 科学と神秘のはざまを解く』(ミシマ社)、『東洋医学式 女性のカラダとココロの「不調」を治す44の養生訓』(原書房)、『安心ペットボトル温灸』『大人の女におやつはいらない』(夜間飛行)、『その痛みやめまい、お天気のせいです――自分で自律神経を整えて治すカンタン解消法』(廣済堂出版健康人新書)、『決定版 からだの教養12ヵ月――食とからだの養生訓』(晶文社)、など多数。

おすすめの記事

編集部が厳選した、今オススメの記事をご紹介!!

  • 生まれたて! 新生の「ちゃぶ台」をご紹介します

    生まれたて! 新生の「ちゃぶ台」をご紹介します

    ミシマガ編集部

    10月24日発売の『ちゃぶ台13』の実物ができあがり、手に取った瞬間、雑誌の内側から真新しい光のようなものがじんわり漏れ出てくるのを感じたのでした。それもそのはず。今回のちゃぶ台では、いろいろと新しいことが起こっているのです!

  • 『tupera tuperaのアイデアポケット』発刊のお知らせ

    『tupera tuperaのアイデアポケット』発刊のお知らせ

    ミシマガ編集部

    10月の新刊2冊が全国の本屋さんで発売となりました。1冊は『ちゃぶ台13』。そしてもう1冊が本日ご紹介する、『tupera tuperaのアイデアポケット』です。これまでに50冊近くの絵本を発表してきたtupera tuperaによる、初の読みもの。ぜひ手にとっていただきたいです。

  • 「地獄の木」とメガネの妖怪爺

    「地獄の木」とメガネの妖怪爺

    後藤正文

    本日から、後藤正文さんの「凍った脳みそ リターンズ」がスタートします!「コールド・ブレイン・スタジオ」という自身の音楽スタジオづくりを描いたエッセイ『凍った脳みそ』から、6年。後藤さんは今、「共有地」としての新しいスタジオづくりに取り組みはじめました。その模様を、ゴッチのあの文体で綴る、新作連載がここにはじまります。

  • 職場体験の生徒たちがミシマ社の本をおすすめしてくれました!

    職場体験の生徒たちがミシマ社の本をおすすめしてくれました!

    ミシマガ編集部

    こんにちは! ミシマ社自由が丘オフィスのスガです。すっかり寒くなってきましたね。自由が丘オフィスは、庭の柿の実を狙うネズミたちがドタバタ暗躍しています・・・。そんな自由が丘オフィスに先日、近所の中学生が職場体験に来てくれました!

この記事のバックナンバー

07月19日
第16回 夏の虫除けと日焼け対策 若林 理砂
06月29日
第15回 分子栄養学って、どうなんでしょう? 若林 理砂
06月06日
第14回 新型コロナウィルス関連しぐさ 若林 理砂
05月07日
第13回 疫病対策あれが効くこれが効くについて 若林 理砂
03月26日
第12回 【新企画】それって効くの? を確かめる 若林 理砂
02月27日
番外編 新型コロナウィルスを中医学でどう捉え、どう予防しようとしているか。 若林 理砂
01月24日
第11回 へその上あたりが膨れた感じがします、ほか 若林 理砂
12月21日
第10回 スマホを使いすぎて首が痛いです、ほか 若林 理砂
11月18日
第9回 忙しくて心がザワザワします、ほか 若林 理砂
10月18日
第8回 眠りにかかわるすべてが苦手です、ほか 若林 理砂
09月19日
第7回 歩くと体がかゆくなります、ほか 若林 理砂
08月16日
第6回 生後すぐからアトピーです、ほか 若林 理砂
07月11日
第5回 がんばらないとうんちが出ません、ほか 若林 理砂
06月19日
第4回 子育て中、細切れに起きてしまい疲れがとれません、ほか 若林 理砂
05月13日
第3回 週に1~2回ドカ食いをしてしまいます、ほか 若林 理砂
04月17日
第2回 半年前から毎月風邪をひいています、ほか 若林 理砂
03月15日
第1回 寝ている間に身体が固まる、ほか 若林 理砂
ページトップへ