白山米店の季節つれづれ

第12回

3月のお便り

2019.03.30更新

 3月はご卒業、ご入学、社会人へのスタート、転職など、新生活への準備で慌しい月です。年を重ね、日常に大きな変化が少なくなりましたが、3月ほど、普通に暮らせる日々に感謝する月はありません。

 2011年3月11日、東日本大震災から9年目を迎えました。あの時から言葉に出来ない想いをしょって生活されている方々に心が痛みます。

 あの年の3月10日木曜日は、『白山米店のやさしいごはん』の全国発売日。震災の日、3月11日金曜日は、翌日の「出版記念感謝の会」のおもたせ(カステラ)を買いに中目黒におりました。翌日3月12日土曜日は、TV、ラジオもニュースだけになり、我が家での感謝の会は、中止と思いましたが、お料理を頼んだ友人の「やるよ!」の一言で、歩いて来られる方だけの集まりとなりました。暗い空気の中、「予定通りやるよ」の3人の友人の言葉に励まされ今も、力となって、店を続けられています。

 1996年3月12日は、お弁当屋の開店日です。本の初版日は、編集者のお計らいで3月12日にしてくださり、沢山の方々、お客様に支えられ、今日を迎えられております。

0330_1.jpg

 さて、季節に「そんなに急がないで!」と肩をたたきたくなるような、春のおとずれです。

 ご近所の「ねこじゃらし公園」の桜は、私の開花宣言桜。なんと春分の日に咲いておりました。名残の沈丁花も咲いておりますのに。入学式まで桜がもつか心配です。

0330_9.jpg

 昨年までは、鼻先まで延びた桜の枝と開花を喜び、触って、匂いをかいでおりましたが、近頃の街の桜は、広がったり、下がった枝を切られてしまって、風情にかけ、見上げ桜となり首が疲れます。

 3月17日朝7時、自由が丘3丁目の「平岩米吉邸白日荘」から、ウグイスの初鳴きをききました。まだ下手で、か細い声で、売却される住処を案じているようです。

旬のものたち

 我が家の食卓は、例年よりずっと早く、初物をいただいております。鰹(カツオ)、しらす、生ワカメ、アスパラ、空豆、スナップエンドウ。

 春の鰹は、脂のノリが少なくさっぱりとしています。ニンニクを入れた醤油に酢とみりんをたし、ごま油でコクを加えタレにします。新玉ネギの千切り、たっぷりでいただきます。タレに卵黄をからめていただくのも、おすすめです。

 グリーンアスパラは、定番のニンニクとカリカリベーコン、半熟玉子、黒胡椒、オリーブオイル、岩塩に酢少々でいただきます。ホワイトアスパラは、特に旬らしさがあって、以前よりお値段もさがりました。酒蒸しした旬の魚貝と合わせて、茹でたホワイトアスパラに岩塩や粗塩パラパラふり、あれば空豆やエンドウ豆もちらし、散歩で摘んだタンポポの葉をふんわりおき、(半熟卵をのせても)オリーブオイル、夏みかんをしぼり、いただきます。タンポポの代わりに、ルッコラやカット野菜でもいいかな。春にはきれいな場所のタンポポの葉を探す楽しみもあります。

 店前の鉢植えに、今年も花ニラの花(観賞用)が咲きました。1年中出回るニラですが、春が旬です。5〜7mmに切り、お薬味としてお味付けや、ラーメンにたっぷり入れたり、3〜4cmに切って卵とよく混ぜ、だし汁でニラ玉にしたり、もやしや肉の炒め物にとかかせないニラです。

 1年目のニラは、株を大きくするために収穫せず、2年目の春から夏にかけて、年に3回ほど収穫されます。苅りとったニラは、混ざっている短い葉を取り除き、売られている一束にします。これがとても手間のいる作業だそうです。ちゃんと根元までいただきます。

自由が丘で外食

 外食が少ない我が家ですが、ランチに、フランス料理の「デトレゾン」で、プロの技術と旬の味を堪能しました。特に、ビーツのソースを敷いた上に、ホワイトアスパラとエビと春野菜のカラフルな彩り。野菜の茹で、焼き、塩の加減がすばらしい。

 鹿肉のソテーは、豊潤なピンク色にノックアウトされ、こんなに美味しくいただいたのは初めてです。三田シェフの食材扱いに感心しきりです。

0330_3.jpg

今月の食卓

今回のお料理は、この2品です。

1. ニラたっぷり「ニラの水餃子」鍋
2. 香り良くすっきりした「自家製ラー油」


ニラたっぷり「ニラの水餃子」鍋(2人分)

0330_7.jpg

材料

〈水餃子〉
・餃子の皮 1袋(20個)

A 肉あん
・豚挽肉 150g
・生姜 大さじ1(皮ごとする)
・醤油 小さじ1
・粗塩 小さじ2分の1
・ごま油 小さじ1
・片栗粉 小さじ2
・胡椒 少々  

・ニラ 1束(5mm幅に切る)

〈いただく時のたれ〉
・ニンニク 3個(荒みじん切り)
・ラー油 適量
・醤油 適量
・黒酢(又は酢) 適量

作り方

  1. Aをボールを握るような手つきで、粘りが出るまで、20〜30回同じ方向に混ぜ合わせる。
  2. ニラを加え全体に混ぜる。
  3. 具を大まかに4分割して、量が均一になるように皮のふちに水をつけて、しっかり包む。
  4. 鍋で茹でて、たれをからめいただきます。

〈白山米店お母さんより〉

 花粉症も収まりそうなニラの水餃子です。花冷えの夜、1人でも2人でも家族でも温まります。残った鍋の湯は、粗塩少々でスープとしていただけます。かき玉スープにしたり、しめのおじやにして食べてしまいます。手作りで皮をつくれば、もっちりして、更においしいですよ。


香り良くすっきりした「自家製ラー油」

0330_8.jpg

材料(出来上り400ccくらい)

A
・一味唐辛子 14g
・中挽唐辛子 7g
・サラダ油 50cc

B
・サラダ油 400cc
・青ネギ青い部分 1本
・生姜の皮 10グラム 
・鷹の爪 5本

・五香粉 小さじ2分の1

仕上げに

C
・ごま油 35cc
・炒りゴマ 15g(大さじ1強)

・保存瓶 油こし紙、又はクッキングペーパー

作り方

1. ステンレスのボールに、Aを合わせなじませておく。
2. 鍋にB(五香粉以外)を入れ、中の弱火でゆっくりと野菜の香りをひき出す。野菜から出る泡が消えるまで。五香粉を入れ香りを移し火を止める。
3. クッキングペーパーをひいたザルで、1のボールにこす。すぐにCを加える。
冷めたら、瓶に分けて冷蔵庫で保存します。半年位で使い切ります。

0330_4.jpg

〈白山米店お母さんより〉
 五香粉は、豚バラ肉のルーロー飯にしたり、家で卵の醤油漬に加えれば中華風。ネギにからめてラーメンにのせたり、お豆腐にかけたり、チャーシュー丼にかけたりと、もたれないラー油です。

白山米店お母さん

白山米店お母さん
(はくさんこめてんおかあさん)

自由が丘、白山(はくさん)通りに60年近く前からあるお米屋さん「白山米店」。1996年よりお弁当の販売を開始。毎週水曜日のみ、おかあさん手作りのおいしいお弁当が食べられます。愛情たくさんのおかずと、お米屋さんならではのおいしいお米で地元ファンが通う人気店のお母さん。著書『自由が丘3丁目 白山米店のやさしいごはん』(ミシマ社)。

おすすめの記事

編集部が厳選した、今オススメの記事をご紹介!!

  • 斎藤真理子さんインタビュー「韓国文学の中心と周辺にある

    斎藤真理子さんインタビュー「韓国文学の中心と周辺にある"声"のはなし」前編

    ミシマガ編集部

    ハン・ガンさんのノーベル文学賞受賞により、ますます世界的注目を集める韓国文学。その味わい方について、第一線の翻訳者である斎藤真理子さんに教えていただくインタビューをお届けします! キーワードは「声=ソリ」。韓国語と声のおもしろいつながりとは? 私たちが誰かの声を「聞こえない」「うるさい」と思うとき何が起きている? 韓国文学をこれから読みはじめる方も、愛読している方も、ぜひどうぞ。

  • 絵本編集者、担当作品本気レビュー⑤「夢を推奨しない絵本編集者が夢の絵本を作るまで」

    絵本編集者、担当作品本気レビュー⑤「夢を推奨しない絵本編集者が夢の絵本を作るまで」

    筒井大介・ミシマガ編集部

    2024年11月18日、イラストレーターの三好愛さんによる初の絵本『ゆめがきました』をミシマ社より刊行しました。編集は、筒井大介さん、装丁は大島依提亜さんに担当いただきました。恒例となりつつある、絵本編集者の筒井さんによる、「本気レビュー」をお届けいたします。

  • 36年の会社員経験から、今、思うこと

    36年の会社員経験から、今、思うこと

    川島蓉子

    本日より、川島蓉子さんによる新連載がスタートします。大きな会社に、会社員として、36年勤めた川島さん。軽やかに面白い仕事を続けて来られたように見えますが、人間関係、女性であること、ノルマ、家庭との両立、などなど、私たちの多くがぶつかる「会社の壁」を、たくさんくぐり抜けて来られたのでした。少しおっちょこちょいな川島先輩から、悩める会社員のみなさんへ、ヒントを綴っていただきます。

  • 「地獄の木」とメガネの妖怪爺

    「地獄の木」とメガネの妖怪爺

    後藤正文

    本日から、後藤正文さんの「凍った脳みそ リターンズ」がスタートします!「コールド・ブレイン・スタジオ」という自身の音楽スタジオづくりを描いたエッセイ『凍った脳みそ』から、6年。後藤さんは今、「共有地」としての新しいスタジオづくりに取り組みはじめました。その模様を、ゴッチのあの文体で綴る、新作連載がここにはじまります。

この記事のバックナンバー

03月29日
第24回 3月のお便り 白山米店お母さん
02月25日
第23回 2月のお便り 白山米店お母さん
01月26日
第22回 1月のお便り 白山米店お母さん
12月30日
第21回 12月のお便り 白山米店お母さん
11月29日
第20回 11月のお便り 白山米店お母さん
10月29日
第19回 10月のお便り 白山米店お母さん
09月29日
第18回 9月のお便り 白山米店お母さん
08月25日
第17回 8月のお便り 白山米店お母さん
07月29日
第16回 7月のお便り 白山米店お母さん
06月26日
第15回 6月のお便り 白山米店お母さん
05月27日
第14回 5月のお便り 白山米店お母さん
04月28日
第13回 4月のお便り 白山米店お母さん
03月30日
第12回 3月のお便り 白山米店お母さん
02月26日
第11回 2月のお便り 白山米店お母さん
01月27日
第10回 1月のお便り 白山米店お母さん
12月26日
第9回 12月のお便り 白山米店お母さん
11月28日
第8回 11月のお便り 白山米店お母さん
10月25日
第7回 10月のお便り 白山米店お母さん
09月26日
第6回 9月のお便り 白山米店お母さん
08月27日
第5回 8月のお便り 白山米店お母さん
07月23日
第4回 7月のお便り 白山米店お母さん
06月24日
第3回 6月のお便り 白山米店お母さん
05月26日
第2回 5月のお便り 白山米店お母さん
04月22日
第1回 4月のお便り 白山米店お母さん
ページトップへ