白山米店の季節つれづれ

第14回

5月のお便り

2019.05.27更新

 大好きな八重の十薬(ドクダミ)の開花は19日でした。翌日は結婚35周年。よく持ちました。それぞれの夫婦で、なんだ坂こんな坂あんな坂とあるでしょうが、私たちも何とか続けられました。

街に精霊

 街を歩いていると、花や新緑の匂いが漂います。とりわけ若葉の匂いは、生命の息吹のように力強く感じ、坂を上り武蔵野段丘にある白日荘へと足が向かってしまいます。

 動物学者である故平岩米吉邸(白日荘)の、90年の樹木から醸し出されるエネルギーは、1000坪の塀越しにも充分に体感でき、自由が丘を守る森の精霊がいるようです。

 庭の古い松は、東横線の設地にかかった熊野神社の松を、昭和3年に移植したものだそうです。江戸時代には、九品仏浄真寺参拝者の目印になって、「法印松」と呼ばれていた松。20mを超えるすずかけの木(プラタナス)の大木は、まっすぐにそびえ立っています。

 この場所が取り壊されるとなると、春に次々と咲いた桜、こぶし、つつじの木々、野鳥、クワガタ虫、カエル、蝶の居場所はどうなるのでしょう。自由が丘で、子供も大人も犬も自然観察出来たら、どんなに素敵でしょう。

 次世代に残したい景観が壊されてゆきます。

玄関のしつらえ

 福を呼ぶ玄関は、きれいにしておきたいものです。

 数年前の家のリノベーションの時に、玄関と手洗い洗面台の板は、マチモノ(街の木ものづくりネットワーク)にお願いしました。切られてしまう街の木や庭の木を活用している社団法人です。

 我が家にやってきた板は、もともとは田園調布のお屋敷にあった、襷の大木だったそうです。

 代表の湯口氏には、近年、相続で土地を維持できなくなり、家族を見守っていた大木が忍びないと依頼が増えたそうです。言葉なく生命を断たれた木が、形を変えて使われることで、大往生するように思います。体力も気力もいる活動に応援したくなります。

 そんな玄関のしつらえは、街ものワークショップで作成した、桜の多用板をおき、白磁のティーポットに石をかませました。陶芸作家、所由香さんの器は、女性らしいセンスと遊び心に力強さを感じます。石は、昨年の筍掘りの時に葉山の海で浅瀬に迷い込んだタコがかかえていた石で、「蛸石」と呼んでいます。

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本のこと

 飾っておきたくなる絵本を見つけました。

 フランスの作家、アントワーヌ・ギョペの切り絵絵本『月夜の森で』。黒と白のページをめくると、切り絵の中の動物の印象も変わります。切り絵を通した光の影も美しく、のんびりとページをめくります。

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今月の食卓

さて今回のお料理は、ついつい手がのびる、作りおき惣菜の二品と、梅雨前のカラットしたお天気に作りたいジンジャークッキーです。

1. 新じゃがのカレー芋
2. 新玉ネギの切り干しバンバンジー
3. ジンジャークッキー


新しい食感! すぐ作れる新じゃがのカレー芋 

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材料(作りおき 6人分くらい)

・新じゃが芋(大3コ) 450gくらい

・酢 大さじ1 1/2
・砂糖 大さじ2
・粗塩 小さじ1/2
・カレー粉 小さじ2
・醤油 小さじ1/2
・サラダ油 大さじ1

・フライパンとフタ

作り方

1. 新じゃが芋はタワシでこすり洗いして、6mm幅のイチョウ切りにし、水にはなしてデンプンをとり、ザルにあげる。
2. フライパンに油を入れ、1を加え中火にかけ炒め、じゃが芋のフチに火が通ってきたら、酢と砂糖を加え、フタをして、ギリギリじゃが芋に火が通るまで蒸し煮する(2分前後)。
3.フタをとり、カレー粉、粗塩、醤油で調味し味見をする。

白山お母さんより

 新じゃが芋は、皮が薄いので、むかずに使います。野沢温泉の「住吉屋」さんでいただいた、おとり回し鉢と云われている郷土料理を食べたくて作ってみました。火は通っていても、食感のあるじゃが芋がなんとも美味しくて、何日も、あきずに食べられます。ついつい手がのびる箸やすめの1品です。


食感のハーモニーが止まらない、新玉ネギの切り干しバンバンジー

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材料(作りおき 6人分くらい)

・切り干し大根 50g
・新玉ネギ 大玉1/2コ 縦うす切り
・胡瓜 1本 縦半分に切り斜めうす切り
・カニかまぼこ 5本 手でほぐす
(または、生食竹輪 3本 縦半分に切り斜めうす切り)
・人参 5cm の縦半量

・市販のゴマドレッシング 適量(あれば、練りゴマで更に美味しく)
・ラー油、酢、醤油、砂糖 など適宜

作り方

1. 切り干し大根は、1回水にはなして洗い、ザルに上げる。
2. 鍋に切り干し大根と水50ccを入れ、火にかけ、水が沸くまで切り干し大根をほぐす。そのまま荒熱をとる。
3. 2.と野菜とカニかまぼこをあえ、ゴマドレッシングで調味し、更に練りゴマ、ラー油、酢、醤油で美味しく味見をしながら。

白山お母さんより

 20年前、お弁当屋を手伝っていただいた、かよさんから、この食べ方をききました。手作りのゴマだれで作るのが一番ですが、市販のごまドレッシングで手軽に作れます。市販品のくせが残らないようにさっぱりと調味料を適宜加えます。練りゴマを加えると更にコクが出ます。

 練りゴマは、ゴマ和えや白和え、味噌汁、味噌ラーメンに加えるととても美味しくなります。切り干し大根のバンバンジー味!! お客様の息子さんが好物と伺いました。我が家でも娘は大好物、息子は煮物より好んでいます。


梅雨になる前に焼きたいジンジャークッキー(甘さひかえめ)

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材料

・黒糖 90g
・水 50ml
・薄力粉 250g
・バター 70g 小豆大に切る
・ベーキングパウダー 小さじ1/2
・生姜のしぼり汁 小さじ2
・シナモンパウダー 小さじ2/3
・ナツメグパウダー 小さじ1/2
・クローブパウダー 小さじ1/2

・型抜き(なければ包丁で好きな形に)
・のし棒
・うち粉(あれば強力粉)

作り方(オーブン150℃/約25分)

1. 黒糖と水を鍋で沸かし、よく溶かし氷にあて冷ましておく。
2. 粉類をふるっておく。
3. バターを小豆大に切っておく。
4. 大きめのボールで2と3を入れ、粉の中でバターを親指と人差し指、中指ですり合わせながらつぶす。
5. 1を加え、粉気がなくなるまでヘラで混ぜ合わせ、ひとまとめにしてラップに包み、冷蔵庫で1時間休ませる。
6. 打ち粉(分量外)をふった台に、生地を2〜3mm厚さにのばし、型抜きする。生地がやわらかいので、ダレてきたら冷蔵庫で10分くらい冷やす。
7. 余熱しておいたオーブンで25分焼く。

※フードプロセッサーをお持ちでしたら、2から5の工程は出来ます。バターは、適当にカットしておきます。

白山お母さんより

 食感はサクサク。孫に初めてのお菓子となりました。ご近所の売却されてしまった平岩米吉博士(白日荘)へのオマージュを込めて、オオカミ型で焼きました。

白山米店お母さん

白山米店お母さん
(はくさんこめてんおかあさん)

自由が丘、白山(はくさん)通りに60年近く前からあるお米屋さん「白山米店」。1996年よりお弁当の販売を開始。毎週水曜日のみ、おかあさん手作りのおいしいお弁当が食べられます。愛情たくさんのおかずと、お米屋さんならではのおいしいお米で地元ファンが通う人気店のお母さん。著書『自由が丘3丁目 白山米店のやさしいごはん』(ミシマ社)。

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