第2回
特別編 地元の中学生が訊く! 不二屋書店さん
2019.10.05更新
こんにちは! ミシマガ編集部です。
今回の「自由が丘の贈り物」は、自由が丘駅正面口のすぐ目の前、不二屋書店さんにお話を伺いました!
ミシマ社の創業以来、ずーっとお世話になっている不二屋書店さん。かつてはミシマ社刊の『自由が丘の贈り物』に、先月はミシマ社の棚、あっちこっちに、それぞれご登場いただきました。
ところで、みなさまも中学生のころ、「職業体験」をされましたでしょうか?
「職業体験」といえば、学校の近所にあるお店や会社に出かけて、仕事の一部を実際に体験するという学習です。
私・スガは近所のスーパーで品出しを手伝ったことを覚えています。
そんな職業体験として、ミシマ社の自由が丘オフィスにも近所の中学校の生徒が、3日間来てくれました!
青木くんと狩野さんです!
アオキくんとカノさん(自由が丘駅前・自由の女神像の前で)
今回2人には、不二屋書店さんの書店員さんである忠鉢さんへのインタビューと、インタビューを記事にまとめる作業をお願いしました!
その記事を、本日掲載いたします。ぜひお楽しみください!
(取材、写真、構成:青木くん、狩野さん、須賀紘也)
大正12年から続く歴史ある書店
ーー(一同) よろしくお願いします!
ーー(アオキ) まずは、不二屋書店の歴史についての質問です。不二屋書店はいつ頃できたのですか?
忠鉢 大正12(1923年)に、僕のひいおじいさんがはじめました。
ーー(一同) ええっ、すごい!
出版社の営業さんと話をする忠鉢さん(右)
ーー(アオキ) ひいおじいさんはなぜ、自由が丘を選んだのだと思われますか?
忠鉢 やっぱり電車ですよね。たぶんその時点で、現在の東急電鉄がこのあたりに駅をつくりそうだったのではないでしょうか?(なんと不二屋書店さんは自由が丘駅[1927年・昭和2年開業]より歴史が長い!)
ーー(アオキ) これから発展するんじゃないかなというふうに?
忠鉢 そうでしょうね。そのあとこういう街に発展したので、ひいおじいさんにはものすごく先見の明があったんだと思います。
ーー(カノ) 不二屋書店はそんなに昔からあるとは知りませんでした!
忠鉢 そうですよね。僕が生まれる前からずっとあったんだから。自由が丘のお店の中でも、何番目かに入る古いお店かもね〜。
ーー(カノ) ここまで続けられた工夫とか秘訣は何かあるんですか?
忠鉢、よく来てくれるお客さんのお子さんが来てくれたり、そのまた子どもが来てくれるということもあるように、不二屋書店自体も代替わりしながらお客さんも代替わりして、続けて来てくれています。やっぱりあとは場所ですよね。駅から徒歩ですぐ来れますから。駅のホームから見えますし、そういうところも大きいんじゃないかなと思います。
ーー(スガ) 自由が丘は昔はもっとたくさん書店さんがあったと聞いたことがあります。
忠鉢 ありましたね。かつては今のピーコック(スーパーマーケット)の中とか駅前の東急プラザ(ショッピングセンター)にも書店さんが入っていました。青山ブックセンターもありましたし。今は東急大井町線沿線(自由が丘もその一つ)は本屋さんがほとんどないです。昔は等々力とか尾山台とか奥沢にもあったんですけど、今ほとんどなくなっちゃてて。
ーー(スガ) なんでなんですかね。
忠鉢 ま〜、完全に不景気ですよね。書店自体が全国的になくなっているので、なかなか書店続けていくのも大変は大変です。それだけ今出版業界自体がずいぶんと下火になってるというか・・・。出版社さんなり、問屋さんなり書店も、それぞれ工夫をしていかないと、生き残れないんじゃないかなと思います。
少しでもお客さんの目に入りやすくなるように
ーー(アオキ) 不二屋書店のいいところ、また、他の店とは違うところは何ですか。
忠鉢 個人商店なので各々担当の好きなようにできるところがチェーン店と違うところですね。チェーンの書店さんだと、本部の方が何部入れるか決めるというやり方をとるところもあると聞きますが、僕たちはわりと個人個人で好きなようにできます。そこで他の書店さんとの違いがでるかな。もちろん適当にやっていたら劣ってしまいますが。
ーー(カノ) 書店が残っていくための工夫は何ですか。
忠鉢 ただ次々送られてくる本だけ並べていると余所の店とラインナップが同じになってしまうから、ある程度うちのお客さんの年齢層を考えた上で入れるようにしています。
ーー(カノ) 本を並べる時はどのようなことを考えているのですか。
忠鉢 入ってくる量にもよりますが、少しでもお客さんの目に入りやすくなるように、出来るだけ売りたい本は表紙を見せてあげています。たとえば、平台に表紙を上にして置いてあるものと、棚にしまって本の背表紙しか見えないものがあるとき、後者より前者の方が本の内容をイメージしやすかったり、興味が湧きやすかったりしますよね。だからお客さんの目を引くのは大事だなと思います。
具体的には・・・、ちょっと本棚を見てみてください。
人の目線に近い本棚の下から2段目と3段目は、本の表紙を正面に向けています。そうすることで、よりお客さんを引くことができるのではないかなと思っています。
ーー(一同) 確かに目に入りやすい!
ーー(スガ) お客さんは中学生など、学生さんも多そうな印象があります。
忠鉢 自由が丘は塾が多いので。小学生のうちから塾に通っている子も多いので、塾終わりの時間や行く前までの時間に買ってらっしゃる子が多いです。
ーー(アオキ) 駅前なので仕事帰りに寄る方もいますか。
忠鉢 そうですね。18時30分ぐらいから19時くらいになると仕事帰りの方が増えてきます。
ーー(アオキ) 全体的にみて、どんなお客さんが多いですか?
忠鉢 時間によって変わりますが、午前中から14時ぐらいまでは年配の方が多いです。そういう方は病院の帰りに寄って買って行きますね。また、「美容院で見つけたんですけど、この雑誌ありませんか?」と、尋ねて来る方もいます。
ーー(一同) そういうこともあるんですか!
忠鉢 そうですね。まあ全体的に見ると、14時から17時ぐらいまでは落ち着いています。そのあと学生さんや仕事帰りの方が増えてきます。今年は8月がものすごく暑かったので、いつもなら午前中に来てくださっている年配のお客さんが、暑さのせいでお見えになれなかったときがありました。書店は天候によって結構左右されます。
地元の人を大切に
ーー(アオキ) ミシマ社のコーナーはどういう経緯でできたんですか?
忠鉢 なんでだろうね。たぶんミシマ社営業のワタナベさんがきっかけかな・・・。もともとワタナベさんが不二屋書店に営業として来てましたから。ミシマ社の創業当時は、点数が足りなくてミシマ社だけの棚をつくるのが大変でしたが、年々ミシマ社の本が増えてきて、だんだんと棚になっていきましたから。ま〜、こうしてミシマ社コーナーをつくれているのは、ミシマ社さんが成長されたからじゃないですかね(笑)。
ーー(スガ) ミシマ社ができた時からやっていただいてるんですか?
忠鉢 創業の時からやってますね。
ーー(スガ) そうなんですか、ありがとうございます!! 忠鉢さんが本を好きになったきっかけはなんでしたか?
忠鉢 子どものころはそこまで本が好きではなくて、むしろ嫌いでした(笑)。だけど、不二屋書店で働き出してからは、それなりに好きになってきました。好きでやり始めたわけではないのですが、やってるうちになにかしら楽しみを見つけていくというのは働く上で大事なことかもしれません。
ーー(スガ) 確かにそうですね! 他に本があまり好きでない人が本好きになる方法とかはありますか?
忠鉢 何でもいいから読んでみることですね。漫画でもいいし、好きな映画の原作になった本とか、そういうきっかけがあるといいんじゃないかなと思います。あとは、たとえばサッカーや野球が好きだったら、それに関する本を読むとか、自分が興味があるジャンルの本を読んでみるのもおすすめです。
ーー(カノ) 今後、不二屋書店は、どんな書店を目指していくんですか?
忠鉢 「町の書店」としてどこまで続けられるか、挑戦みたいになってしまうかもしれません。やっぱり、小さい町の本屋さんがどんどん減ってるなかで、どうやって生き残っていくのかと考えることも大事です。あとは、いかに町の皆さん利用し続けてもらえるかというのが、目標であり課題ですね。休日はたくさんの観光客の方が自由が丘に来てくれるけど、わざわざ旅先で本を買う観光客はそんなにいないと思います。やっぱり地元の人たちを大切にしなければと思います。
ーー(一同) 今日はお時間いただきありがとうございました!
***
感想
今回は、初めて本格的に取材をしたため、とてもいい経験になった。取材の内容もとても興味深いものだった。特に印象に残ったのは全国の書店の現状だ。今、書店の数は全国的に減っている。その中で生き残っている不二屋書店には感銘を受けた。場所がいいのもあるが、やはり工夫に尽きる。例えば、目線の位置の本は面で置いたり、町の書店というの特徴を生かしているなどだ。それにしても、今回の取材で、不二屋書店が、より身近に感じることができた。これからも、生き残っていてほしい。(アオキ)
今回のインタビューで不二屋書店の魅力に迫ることが出来てとても興味深かったです。特に印象に残っている話は今後の不二屋書店についてです。忠鉢さんが書店と地元の方達を大切にしていることが伝わり、私も不二屋書店をこれからも利用していきたいと思いました。(カノ)
忠鉢さんありがとうございました!
青木くん、狩野さん、お疲れ様でした!
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