La Cialdaさん

第3回

La Cialdaさん

2020.02.08更新

 こんにちは、ミシマガ編集部です。

 みなさま、「チャルダ」というお菓子をご存じでしょうか?
 日本では馴染みがないですが、実はワッフルの原型でもあり、イタリアスカーナ地方で700年以上にわたる歴史を持つお菓子なんです。

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 そんな由緒あるチャルダの専門店「La Cialda(ラ チャルダ)」は、ミシマ社自由が丘オフィスから歩いて5分ほどの所にあります。
 ミシマ社もいつもお世話になっている、La Cialdaの代表である飯田尚志さんに、お話をうかがいました! 

フィレンツェの人だけが知っている、婚礼の贈り物

 

飯田 チャルダはイタリアのトスカーナ州で14世紀から伝わっているという記述もある、伝統的なお菓子です。メディチ家ってご存じですか?

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ーー あっ、世界史で聞いたことがある気が・・・

飯田 イタリアのトスカーナ州にいたメディチ家の人々が、自分たちの婚礼のお祝いのお菓子として、チャルダを式の参列者に振る舞っていたそうです。チャルダは2つの円盤状の焼き型で挟んで焼いて作るお菓子で、その作り方が変化して生まれたものが、ゴーフルやワッフルです。

ーー たしかにワッフルにも網目のような焼き型がついていますね。

飯田 トスカーナではチャルダは昔から一つ一つ手作りで焼いて作られているので、当店でも現地から取り寄せた焼き型をつかって、現地と同じように手作りをしています。
 模様は裏と表で別々の模様になっています。そのことが婚礼のお祝いとして大きな意味を持っているんです。

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ーー そうなんですか?

飯田 メディチ家は片方に自分たちの家紋を入れて、もう片方にお嫁に迎える方の家紋を入れて、両方の家紋で挟んだチャルダを両家の結びつきの印として、参列者の貴族や王族に渡していました。
 そういう成り立ちから、お祝いの場で使われるお菓子として、トスカーナ州では愛されています。ただ、今でも手作りで作られているので、大量生産ができないんですよね。だからイタリア国内でも知らない人の方が圧倒的に多いです。今は、ワッフルやゴーフルのほうが有名になりましたので・・・

ーー チャルダのほうが大元なのに・・・

飯田 フィレンツェの人だけが知っているという、すごく貴重な郷土菓子です。

ーー なかなか意味の深いお菓子なんですね。

飯田 そうなんです。お祝いのお菓子なので、この店を開いてからもブライダルのお客様からの注文をいただくことも多いです。

ーー 引き出物にはもってこいですね。

飯田 とはいえ、日本の引き出物の市場って割れやすいものを避けますからね。

ーー あー・・・(笑)

飯田 繊細で割れやすいチャルダをブライダル業界に提案しようとするとなかなか難しかったりするんですけど(笑)。でも、引き出物として使われるお客様や、チャルダは手でお渡ししやすいサイズなので、式の最後のプチギフトとしてお渡しするお客様も増えてきています。

こだわりはおいしさと・・・

ーー 日本でチャルダの専門店はLa Cialdaさんだけと伺ったのですが。

飯田 そうですね、イタリア展のようなフェア以外で、チャルダが経常的に手に入るのはLa Cialdaだけです。

ーー そうなんですか! 「日本初」に挑戦するのは勇気がいりそうです。どういう経緯でお店を開かれたんですか?

飯田 僕はもともと宝石販売をしていまして。

ーー そうなんですか!

飯田 仕事柄ブライダル関係の引き出物の話に触れることもあったのですが、チャルダのことはまったく知らなかったんです。ある日、友人がチャルダを持って来てくれて、「このお菓子、実はブライダルで使われてるらしいよ」と教えてくれたんです。自分で調べたんですけど最初は全然出てこなくて・・・。ようやくみつけて「本当だー」と。
 ストーリーとしても魅力的ですし、思いが込められたお菓子として、ブライダルのお客さんに喜んでいただけると思いました。あとはイタリアの、ご飯を食べることをとても大事にする文化、会話をしたりしながら食事をする文化が大好きなんです。そういった背景があるなかでの伝統的な郷土菓子を広める価値がある、知ってほしいと思いました。

ーー 素敵ですね! イタリアのお菓子であるチャルダを日本で売る際に、味つけなど変えたところはありますか?

飯田 現地のチャルダは日本人の感覚では結構甘っ! と感じるくらい甘いです。チャルダは1枚食べるとお腹がいっぱいになるぐらい大きいので、最初は美味しいと感じても、甘すぎるとだんだん飽きてしまいます。「また食べよう」とか「もう一枚食べよう」と思ってもらえるような味にしたかったので、日本向けに味を変えています。あとは、「ご年配の方がお孫さんと一緒に同じものを安心して食べてもらいたい」という思いがあります。ご年配の方には懐かしいと思ってもらえる、そしてちいさなお子さんが食べても安心なものってなんだろう、と考えて、オーガニックのきび砂糖を使うようにしています。

ーー お菓子は特に原材料が気になりますから、ちいさい子にも安心というのは嬉しいですね。
 製品へのこだわりは、伝統を大切にすることと、安心して食べられる食品をつくることなんですね。

飯田 はい! もちろんおいしさにもこだわっていますよ!(笑)

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チーズチャルダは味噌マヨネーズも合う

ーー La Cialdaさんのチャルダは、「プレーンチャルダ」と「チーズチャルダ」の2種類があります。先日、両方食べてみたのですが、かなり印象が違いました。

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(左がプレーン、右がチーズ)

飯田 そうですね、まったく逆といいますか。「プレーン」はオーガニックのきび砂糖を使っておりまして、ちいさなお子様も一緒に食べれるようにとイメージしたものです。
 反対に「チーズ」は大人向けです。じつは「チーズチャルダ」ってイタリアにはないんですよ。

ーー えっ、そうなんですか? チーズと言えばイタリアじゃないですか。

飯田 最初は僕らもそう思って、チーズの配分に苦心しながら作ったんです!

ーー(笑)

飯田 お菓子屋なんですけど、「甘いもの一択というのもなあ」と思って、対極にあるのは何かな? と考えたときに、クラッカーのような、しょっぱくてお酒と楽しめるようなお菓子もあるなと。

ーー いいですねえ。

飯田 そういう食事として食べられるようなお菓子も作りたいなと思い、当店オリジナルのチーズチャルダを作りました。

ーー そうなんですか。チャルダと馴染んでいるので、イタリアにもあるのかなと思っていました! ちなみにどんなお酒が合いますか?

飯田 基本的にワインは合いますよ。

ーー イタリアっぽい!

飯田 チャルダに何をのせるかによって、いろんなお酒と合わせてみるのがいいと思います。チャルダはそのまま食べるのもいいですが、チーズや生ハム、スモークサーモンとかレバーペーストなどを添えていただいたり、甘いものが好きな人には、濃厚なジャムやマロンクリームなども塩気に合うのでおすすめです! 「ちょっと贅沢なクラッカー」のように食べていただけると、食べ方が無限に広がります。
 あとはチーズチャルダを砕くとクルトンのようにも使えます。サラダの上にオリーブオイルと一緒にかけるとおいしいですし、個人的に一番好きなのは、トマトスープの中に入れると、スープの中にチーズの旨味が染みておいしいです。

ーー 本当に「お食事」として使えますね。プレーンチャルダはどうですか?

飯田 お店で出すときは、クリームを塗って食べていただいたりだとか、夏にはアイスをのせて食べていただいたりしています。個人的にはあんこ、それからりんごバターがよく合うと思います。
 ケーキ屋さんやお菓子屋さんは完成されたものをそのまま食べてもらう、というのが一般的だと思いますが、うちのお店はお菓子屋なのにチャルダは、「食べ方に決まりはないので、自由な発想で好みの食べ方をみつけてください、好きにやってください!」と考えています。

ーー 組み合わせを研究してみるとおもしろそう!

飯田 そういえばこのまえ、友達に「どうやって食べてる?」と聞いたら、「チーズはみそ味噌マヨネーズかな」と言ってました(笑)。

ーー 本当ですか?(笑)

飯田 「すっごく合う」と言われて、やってみたら本当においしかったんです。

マリクレールはフランス語

ーー どうして自由が丘でお店を始められたのですか?

飯田 最初は他の場所を検討していたのですが、あるとき「お菓子のお店をやるのにどうして自由が丘を選択肢に入れていなかったんだろう」と思いました。最初は自由が丘の南口のほうに降りたんですけど、なんとなくイメージと違うなー思って歩いていたのですが、通りの名前を見て「あっ、マリ・クレールってフランスだ」と気がついた。

ーー そこですか、確かにチャルダはイタリアですもんね(笑)。

飯田 それで駅の反対側に行ってみたんですけど、いい感じだなと。南口は観光地のような賑わいがありますが、正面口のほうは神社があったりして落ち着きがあります。それで今のお店があるところがちょうど空いていて、すぐ内見を申し込みました。

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コーヒーとスプレッドサンド(クリームを挟んだチャルダ)を振舞っていただきました

ーー ありがとうございます!! おお、おいしそう!!!

飯田 ちなみにチーズチャルダは女性に、プレーンチャルダは男性に人気です。

ーー 女性のほうが甘いものを好むイメージがありましたが、チーズチャルダが人気なんですね。

飯田 そうなんです。
 スプレッドサンドはクリームを食べる直前に塗っています。La Cialdaオリジナルブレンドの豆を使ったエスプレッソベースのコーヒーと一緒に食べてもらいたいです。

ーー コーヒーもおいしそうです。

飯田 イタリアンローストのオリジナルブレンドのコーヒー豆を使って抽出したエスプレッソをベースにしています。プレーンチャルダあうように酸味控えめでコクと苦味がしっかり楽しんでもらえるようなブレンドにしています。

ーー それにしてもお店の雰囲気が落ち着いています。

飯田 このあたりは落ち着いた雰囲気でゆっくりできるのでぜひ、お店でくつろぎにきてください!

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取材にうかがった12月にクリスマスリースが飾られていました

***

 飯田さんありがとうございました。チャルダ最高でした!

 ちなみに飯田さんは大のマンガファンとのことで、おすすめのマンガに『王様の仕立て屋』(イタリアのスーツについて学べる!:飯田さん談)、そして『ジョジョの奇妙な冒険』(人生で一番おすすめ!:同)を挙げていただきました。

 自由が丘にお立ち寄りの際には、ぜひLa Cialdaさんへ足をお運びください!

La Cialda

住所:〒152-0035 東京都目黒区自由が丘1-25-9 自由が丘テラス
営業時間:木・金・土・日・祝日 営業
11:00-18:00

Tel&FAX : 03-5726-9622
Email : jiyugaoka@cialda.jp

ホームページはこちら

ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

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