第21回
ミシマ社のFAQをつくるのじゃ!
2020.04.22更新
こんにちは。ミシマガ編集部です。
4月も後半に差し掛かりました。曜日や時間、空間の感覚がぬるっと溶け出したような日々を過ごしているものの、一応暦の上では新年度。「はじめまして」という気持ちで、スパッと心機一転、やってみたいことがありました。それは・・・ミシマ社の自己紹介。
先月発売された、代表三島の3作目となる著書『パルプ・ノンフィクション〜出版社つぶれるかもしれない日記』(河出書房新社)を読んだとき、「ミシマ社って変わった会社だな〜」「謎な会社だな〜」と思いました。自分も働く会社なのに。灯台下暗し。
それから数日寝起きをつづけたある日、こんなことを思いました。毎日ミシマ社のオフィスに生息している私でさえ、謎な会社だな〜と思うのだから、周りからしたらもっと謎に包まれているのではないか、このミシマ社っていう会社は!? え!? と。そしてそんな折、偶然にもこんなありがたいお声をいただきました。
ミシマ社のHPには「こんな会社です」という記事がないので、友人に「こんな出版社がある」と紹介したいときにうまく説明できない
「こんな出版社がある」と紹介したい場面・・・! そんなことがあるのですか!!!!
こうなればもう、やるしかない。われわれが慣れ親しんでしまった生息地「ミシマ社」について、具体的にどんな場所なのか(会社なのか)を説明してみるというコーナーを立ち上げてみよう。人知れず熱気を帯びながら、あれあれどんなことがあるんだっけなと項目を書き出していくうちに、謎は膨大に膨れ上がり、「ミシマ社のFAQをつくるのじゃ!」なんて軽快に言ってはいるけれど、実際これは壮大な超重大プロジェクトになってしまうのではないかと体内に沸き起こる震えを抑えているうちに4月も後半に差し掛かりました(いいから早くして)。
これからほそぼそと、このページを充実すべく、不定期更新で奮闘してまいります。
本日は、「その一 ミシマ社ってどんな会社?」をメンバーの言葉でお届けします。
目次
その一 ミシマ社ってどんな会社?
・ミシマ社メンバー紹介
・一冊入魂、直取引を中心にした出版社です
・ミシマ社の仕事、ずばり5チーム
・ミシマ社のオフィスは、どんな場所?
・あなたはなぜミシマ社に?
その二 ミシマ社の本
・ミシマ社の本づくり
・コーヒーと一冊
・手売りブックス
・ちいさいミシマ社
その三 ミシマ社の本屋さん
・オフィスは時として本屋さんになる
・通販もしています、ミシマ社の本屋さんショップ
その四 みんなのミシマガジン
・毎日更新、ウェブ雑誌
・知るひとぞ知る音声コンテンツも
その五 ミシマ社サポーター制度
その六 一冊!取引所
・出版社と書店を繋ぐ、最強のマッチングサイト
その一 ミシマ社ってどんな会社?
1-1 ミシマ社メンバー紹介
三島邦弘 ミシマ社代表。編集者。今日も明日も明後日も、熱をもった本をつくるため動き回る。合気道歴11年。
渡辺佑一 営業チーム。関西・北陸・東海・広島・山口エリア担当。ミシマ社の社員第一号。長年の直取引営業経験と趣味の将棋から得た知見を若手に伝える軍師。『キングダム』好き。
星野友里 編集チーム。若手メンバーを教え諭す自由が丘の姉御。涼しげな表情の裏側は満身創痍? ラジオ体操を欠かさないでください(byスガ)。
新居未希 営業チーム。通称「ミッキー」。ミシマ社の新卒第一号。ドーナツ好き。2018年に出産し、子育てに奮闘しながらいろいろ手探りで仕事中。
長谷川実央 仕掛け屋チーム。ミシマ社通信やポップ、パネル作り、展覧会の設営もこなす。いつも明るくほがらかな仕事人。
池畑索季 営業チーム。関東・東北・九州エリア担当。元山岳部その1。苔と土を愛するネイチャーボーイ。
田渕洋二郎 営業チーム。関西・北海道・四国・岡山・山陰エリア担当。社内で一番(いい意味で)軽い男。歌が好きで、急に歌い出す悪癖がある。足が速い。
野崎敬乃 編集チーム。元山岳部その2。2018年入社で、その働きぶりは以降の新人のハードルを上げた。笑い上戸で、ピースが苦手。
岡田森 営業チーム。関東・静岡・甲信越エリア担当。ミシマ社にIT革命を起こすべく奮闘中。特技はセールストークで、気に入った商品はメンバーにもご紹介。合気道愛好家。
須賀紘也 営業チーム。関東・東北エリア担当。2019年入社の新卒。「西郷どん」という通称とは反対に、社内でアタフタしている。めちゃくちゃ硬い髪質に深い悩みを抱える。地味にお調子者。
佐藤美月 営業事務。自由が丘オフィスで出荷まわりを担当。好きなものはお笑いとパン全般。湘南生まれのピアニスト。
*記載は入社順です。紹介文は須賀が書きました。この4月から入社した新人の紹介、近日中に公開いたします。
1-2 一冊入魂、直取引を中心にした出版社です
ミシマ社は、東京・自由が丘と京都の2拠点で活動する出版社です。2006年に東京・自由が丘で単身創業し、2011年から京都にもオフィスを構えています。
14年目の現在、メンバーは東京・京都あわせて14名。毎月1〜2冊の書籍を刊行するほか、書籍のイベントをおこなったり、ウェブマガジンの運営や月に1度オープンの本屋さんも営業するなど、少人数ながらもさまざまな取り組みをしています。
Q ミシマ社メンバー、どんな会社ですか?
田渕 本屋さんや読者の方と濃く繋がるということを大事にして、「一冊入魂」を掲げて本づくりをおこなっている会社です。出版業界はこれまで「薄利多売」という売り方を続けてきました。いまも毎日、平均して200冊以上の本が出版されています。そんななかで「一冊に力を入れて一人のお客さんに熱を届ける」というのは、なかなか今の出版業界の仕組みだと難しい。それを試行錯誤しながら挑戦する会社です。
野崎 私が思うミシマ社は、ずばり「総合出版社」です。本のジャンルは、たとえば学術書や実用書、漫画などいろいろありますが、ミシマ社のような10人前後の規模だとジャンルを絞って出版する専門出版社が多いのかなと思います。でもミシマ社はジャンルには括りがなくすごく多様で、年齢層や読者層を絞らない本をつくる会社です。
池畑 「おもろい」というのが会社の中心にあって、みんなが「おもろい」以外のことにあまり気を取られずに集中できる会社なんじゃないかなと思っています。そうすることで、読者の方や書店員さんともほがらかに関わることができる。まさに会社のホームページに「ほがらかな総合出版社」と創業当初から掲げているのですが、業界のしがらみや既存の枠組みにとらわれないことで生まれるおもしろさがあると思います。また、「直取引」を中心に本を書店に卸しています。
Q 社長、直取引ってなんですか?
三島 「取次」と呼ばれる卸(本の問屋)を介さず、直接書店に本を卸す方法を「直接取引(直取引)」といいます。
「一冊」と読者をつなぐのが書店さんの役目ですよね。では、どのようにして出版社は、一冊を書店に届けるのか? といえば、大半の出版社は「取次」という本の卸を介して書店に書籍を流通させます。しかし、ミシマ社ではこの「取次」を利用せず、出版社から書店へ直接書籍を卸しているんです。
取次を介すると、出版社がつくったものが本屋さんに置かれるまでにワンクッションがある。僕たちはそのワンクッションをなくして、ダイレクトに、現在約1000店の書店と直接取引をしています。創業1年目からこの直取引をはじめ、今に到るまで同じ方法をとっています。
さらに、取次を経由すると、本屋さんに自動的に本が配られる「配本」という仕組みに組み込まれます。注文していなくてもお店に本が届き、それが店に並ぶということができる。とても便利な仕組みですが、書店側は新刊などを気にしていなくても本が届くため、「うちには合わない」という本が流れてきてすぐに返品する、ということがいま出版業界では問題になっており、不幸なミスマッチが起きています。
直取引の場合はこの「配本」がなく、直接お店に案内をして注文をもらい、それから本を送ります。そのため、お店の人が本当に欲しい本だけを入れることができる。出版社側も、その本がどういう本なのか、どういうふうに売ってほしいのか、どういう可能性があるのかということを一緒に相談しながら売り場をつくっていくことができます。
1-3 ミシマ社の仕事、ずばり5チーム
2006年、代表の三島がミシマ社を立ち上げたときはたった一人だったミシマ社も、14年目となる今は、計14人のメンバーで活動しています。
ミシマ社では、大きく5つのチームに分かれてそれぞれの仕事をしています。5つチームがありますが、チームを兼任している人も多いそう。また、メインで担当するチームはあるものの、最終的には「全員全チーム」がモットー。「これだけやっときゃいい」「それはあの部署の担当だから......」は通用せず、すべてが重なり合って動いています。
1-4 ミシマ社のオフィスは、どんな場所?
田渕 ずばり、働いているオフィスは一軒家。普通の会社ではない、というか普通の家ですね(笑)。しかも京都オフィスは月に一度不定期で、一階を「ミシマ社の本屋さん」として解放しています。
(京都オフィス。ぱっと見、ふつうの一軒家)
(自由が丘オフィスも民家。中は畳で、お昼はちゃぶ台を囲んで食べる)
1-5 あなたはなぜミシマ社に?
野崎 私は、新卒の採用があるタイミングまで、ミシマ社の本は持っていたけれど「ミシマ社」という版元(出版社)は意識しておらず、知らなかったんです。単にその著者の面白そうな本、ということで持っていました。採用についての三島さんのツイッターを見て、ミシマ社という会社が新卒を募集しているんだと知り、そこから意識するようになりました。前情報なしからのスタートでした(笑)。
田渕 本を読みながら、出版社を意識することってあんまりないかもしれないですね。
野崎 大学院のころは、周りには学術書などの硬い本を読んでる人が多くて、私もそうだったんですけど、ミシマ社の本を読んだときに、おなじようにアカデミックな内容でもこんなに開かれている、やわらかくてポップな学術書を作れる会社だなと思いました。なぜそう思ったのかは忘れたんですけど......ふわっとしているというよりは、芯の強い出版社だなと思って、採用に応募しました。あ、でも当時持っていたのは益田ミリさんの『今日の人生』(コミックエッセイ)で......その時点でミシマ社の学術っぽいものを読んでもいない......。
池畑 僕はもともと『小商いのすすめ』(平川克美著)、『街場の文体論』(内田樹著)などを読んで面白いなと思っていて、「ミシマ社」という出版社があるということはぼんやりと知っていました。大学生のときに読書会サークルをやっているなかで、出版社の人にきてもらえたら面白いよね、ミシマ社の本面白いよね、という話になって、ある日三島さんに電話をして「読書会に出てもらえないか」と打診したらOKしてくれて。それで初めてお会いしたという感じです。
その読書会のとき、装丁家の矢萩多聞さんも三島さんと一緒にいらっしゃって。ちょうど『飲み食い世界一の大阪』(江弘毅著)という本を作っている最中だったみたいで、その打ち合わせの流れで一緒に。「どの装丁がいいですか」と装丁案を見せてもらったりして、現在進行形の本づくりを見せてくれたんですね。一冊の本ができあがるまでの過程を垣間見せてもらったことで、それまでただ読むだけだった本の世界に、一気に奥行きが感じられるようになりました。
そのあとミシマ社でデッチ(※)を募集していることを知り、デッチにいくようになり、徐々にミシマ社にいる時間が長くなりました。
(※)デッチ...ミシマ社の仕事を手伝って見たい、感じてみたい!という思いでミシマ社にきている学生さんのこと。