第73回
イベント「戦争と私の結びつけかた」を開催します
2024.08.13更新
7月20日に発売となった『中学生から知りたいパレスチナのこと』が、大きな反響をいただいています。
本書は、今も進行するガザのジェノサイドを前に、三人の人文学者が、「歴史」の学び方・捉え方への痛烈な危機感を抱いて執筆した、新しい世界史=「生きるための世界史」の書です。
アラブ文学者の岡真理さん、ポーランド史を専門とする小山哲さん、ドイツ史や食と農の歴史を専門とする藤原辰史さんの対話から、パレスチナ――ヨーロッパ――日本をつなげる、これまで見過ごされてきた歴史観が立ち上がっていきます。
読者の声、続々
ミシマ社には日々、読者の方からのご感想はがきが届いています。その一部をご紹介します。
パレスチナ問題がこんなにもグローバルな事とは知りませんでした。中東問題は難しいと思考停止状態に陥っていたことを反省し、目の前にある差別、偏見にも地球の一員として学びながら進んで行きたいと思います。
この年まで、パレスチナやイスラエルのことを全く知らずに来てしまったなと思います。暴力の歴史、声の大きい方の歴史というものを考えさせられました。
それぞれの専門の方が枠をこえて、これまでの世界史に疑問を投げかけ、今起きている(特にガザでの)虐殺を「植民地主義」としてわかりやすく解説してくれており、「詳しくはないけどモヤモヤしている人」にすすめたいと思いました。1冊は友人にプレゼントします。
「今の世界史は地域史の寄せ集め」「今の世界史には構造的欠陥がある」「日本史・東洋史・西洋史の区分は政治的にニュートラルなものではなくて、日本が近代化していくための歴史学の体制として戦略的に構築されたもの」...自分が学校の授業を受けていた時に感じたモヤモヤが言語化されていて衝撃だった。歴史を学ぶ意味、当事者意識を持つことの重要性を深く理解することができた。
中学・高校の先生や研究者の方々にもお手にとっていただいています。
今まで自分が持てていなかった視点をたくさん得ることができました。社会科教師として反省しつつ今後の授業作りに活かしていきたいです。
イベント「戦争と私の結びつけかた」を開催
『中学生から知りたいパレスチナのこと』刊行を記念し、8/23(金)にイベントを開催します。本書の共著者・藤原辰史さんと、人類学者の石井美保さんの対談です。
藤原辰史×石井美保「戦争と私の結びつけかた」
日時:2024年8月23日(金)19:30開演 (21時 終了予定)
場所:恵文社 一乗寺店
〒606-8184 京都府京都市左京区一乗寺払殿町10
★オンライン配信もあります。
「終戦」から79年が経とうとする今も、戦争はまったく過去のものとなっていません。
ガザやウクライナで起こる暴力は報道で見えにくくされ、また、日本における戦争経験者は年々亡くなっていく――。そんな今、私たちはどのように戦争と自分を結びつけ、歴史に出会い直すことができるでしょうか?
藤原辰史さんは、ガザのジェノサイドは日本の植民地主義の歴史や、私たちの日常(たとえば食卓)とつながっていると述べ、そうしたつながりを見過ごさない「新しい世界史」が必要だと訴えます。
「力を振るってきた側ではなく、力を振るわれてきた側の目線から書かれた世界史が存在しなかったことが、強国の横暴を拡大させたひとつの要因であるならば、現状に対する人文学者の責任もとても重いのです。」(『中学生から知りたいパレスチナのこと』より)
人類学者の石井美保さんは、先月、『裏庭のまぼろし──家族と戦争をめぐる旅』(亜紀書房)を発表。
石井さんは、1930~40年代の日本に生きた祖父母たちの手紙・手記を読み、みずからの家族史をひもときながら、戦争の時代を過ごした一人ひとりの苦しみ、不安、生きる強さに出会っていきます。それは、想像もできなかった近親たちの経験を知るとともに、かれらが「見ようとしなかった」加害の歴史も含めて、語りなおしていく道のりです。
「痕跡と断片を私は探し歩き、拾い集め、自分の言葉に変えて、もうこの世にいない大叔父や、祖父や祖母たちに伝えなくてはならないような気がしている。そしてまた、彼らがその中に深く巻き込まれ、それを駆動してもいたあの戦争によって死に至らしめられた人たちに、捧げるように手渡さなくてはならないと。」(『裏庭のまぼろし』より)
ふたりの人文学者は、どのように、等身大の「私」に「戦争」をひきつけ、言葉にしようとしているのか。
日本とパレスチナ、過去と今をつなげて考える、またとない機会です。本を読んでくださった方も、そうでない方も、一人でも多くの方とともに考える時間になればと願っています。
著者による、今読みたい人文書選書フェア
『中学生から知りたいパレスチナのこと』著者の岡真理さん・小山哲さん・藤原辰史さんによる選書フェアを開催中です。
本書とあわせてお読みいただきたい人文書を展開しています。先生方のコメントが載った特典ペーパーもお配りしていますので、お近くの本屋さんにぜひお立ち寄りください。
丸善 京都本店での展開の様子
<『中学生から知りたいパレスチナのこと』選書フェア「新しい世界史へ」 開催店>
丸善 京都本店(京都市中京区)
恵文社 一乗寺店(京都市左京区)
京都大学生協 ブックセンタールネ(京都市佐京区)