第6回
西尾の寺田商会さん
2021.10.24更新
ある春の日、ミシマ社サポーターの「寺田商会」さんから京都オフィスに、一通の茶封筒が届きました。それまでは数回メールのやりとりをしたことがあるのみで、テント製品を作っている会社ということ以外、寺田さんのことはあまり知りませんでした。封筒の中にはテント生地のパッチワークでできた、カラフルなブックカバーやしおりが。それらは寺田さんが数年前からお仕事の合間に取り組んでいるという、製品を作った際に出る余り布を使った、新商品開発の一部でした。
テントの可能性を信じ、日々模索しながら新しいことに挑戦し続ける、寺田商会さん。今月はそんな、とってもおもしろい会社をご紹介します。
サポーターNo.660 株式会社 寺田商会さん(愛知県)
こんにちは。愛知県の三河湾に面した西尾市にある株式会社寺田商会という「テント屋」の社長、寺田和宏です。私たちがミシマ社を知るきっかけになったのは、2017年秋に名古屋の書店「ON READING」で開催された「タラブックスフェア」に妻が訪れたことでした。同じ年の7月に私が脳梗塞を発症。幸い処置が早く九死に一生を得ましたが、主治医から「失語症」と診断されました。この時期は言語リハビリの真っ只中で、私の発語力がどこまで戻るのか、妻は不安だらけの気持ちで毎日を過ごしていたようです。
そんな中、妻がフェアで出合った本が、矢萩多聞さんの『偶然の装丁家』でした。多聞さんの生命力あふれる数々の行動に圧倒され、とにかく目の前のできることをして、先に繋げていこう! と、当時の不安な気持ちを奮い立たせてもらったそうです。
この本の中に「ミシマ社との出会い」というくだりがあり、"いま一番一緒に仕事をしたいのはミシマ社です"という多聞さんの言葉に惹かれ、「みんなのミシマガジン」のめざす「身体性を取り戻す雑誌」という、人の生活に寄り添う取り組みが、まさに我が社のめざす方向性だったので、ミシマ社にますます興味を持ちました。その中でサポーター制度を知り、翌年から登録した次第です。ミシマ社の活動を拝見するたびに、我が社も通常業務に埋もれすぎず、新しいことにも少しずつ挑戦しよう!と初心にかえらせてもらっています。
この4年間、身内や従業員の協力のもと、毎日仕事をリハビリ代わりにしながら、幸いにも脳能力(?)が8割戻ってきました。難しい文章の理解はかなり遅くなりましたが、もともと本好きなのでがんばって読んでおります。
「テント屋」の仕事
さて、私の仕事を紹介いたします。我々はいわゆる「テント屋」です。といっても、テント屋? 初めて聞いた、何を売っているの? キャンプ用品? と世の中の反応はこんな感じです。イメージしにくいですが、実際には意外と身近なものだと分かっていただけると思います。例えば、街の飲食店の店頭を彩るお洒落なテント、運動会や縁日などで使われる組立式テント、街を走るトラックの荷台シート、工場用の倉庫からドーム球場や万博パビリオンの屋根などの大型のもの、また災害時に使われるブルーシートやコロナ禍で当たり前になった飛沫防止ビニールも、全てテント・シート業界に関わるものです。主に防水性、高耐久性の生地の特性を活かし、しなやかさと強さをあわせ持つ1枚の布を使って、快適な環境を提供することが、「テント屋」の仕事なのです。
しかし、このような無限の可能性ある素晴らしい素材と扱う技術があるのに、なぜ世の中に知られていないのか、を考えました。そして業界自体が職人気質の裏方仕事、ゆえのPR不足だという結論に行きつきました。これでは勿体ないと思い、生地を手に取り、実感と知識を持って帰ってもらう方法=ワークショップ併設の出店を7年ほど前から始めました。まず地元の物産フェアなどに出店し、生地に触れてもらいました。3年くらい続けると、「今年も出てるね」とお客様が声をかけてくれるようになりました。やはりレギュラーで出店しないとダメなんだなあ、と実感しました。
テントの可能性を探して
そんな頃、東海地区で主に活動する「似てない屋」主催『お仕事道具市』というイベントに出合い出店する機会を得ました。これはいろんな職業の方、職人・作家さんが出店し、仕事で使っていた道具や素材・材料などを売る、自称「日本一マニアックなフリーマーケット」。個性的な出店者とお客様が多く集まるもので、今年で我が社の出店も5年目となりました。雑多なものに混ざっても今なお珍しい「テント屋」の個性を、"残念ながら"今でも発揮しておりますが、毎回新しいものを持って行き、お客様の反応も再発見の連続で、飽きることのない楽しい体験となっています。
こうして外の風にあたりながらヒントをもらい、新たな取り組みもおこなってきました。その一つは、素材の可能性を探る「カケラ」シリーズの商品開発です。「カケラ」というと、「茶碗のかけら」「ひとかけら」など、負を連想させる場面が多いと思いますが、我が社では、さまざまな色や生地の可能性を考えて作られた商品の総称をさします。例えば、トラックの荷台シートの色は、ホームセンターで売っているグリーンだけだと思っている方が多いのですが、写真のように様々な色を組み合わせれば、新たな生地が生まれるわけです。その中で発売にこぎつけたのは、軽トラック用「カケラシート」(4種類)です。
このようなシートを掛けた軽トラックが走っていると、なんだか楽しそうな町になりますよね。また、裁断の工程で、どうしてもハギレの部分、いわゆる「カケラ」が出てきます。そんな「カケラ」にも、さまざな素材・色があり、それぞれとても魅力があります。それらを活かした配色や用途を考えれば、バッグなど小物アイテムの素材には十分使用できます(現時点ではイベント用の限定商品です)。
少しずつ工夫を重ね、1年半前には、自社商品をPRしイベントを開催できるようなスペースも作りました。しかしいきなりのコロナ禍で、人が集まるのはNGの世の中になってしまいました。また様子を見ながら、イベントを開催しようと思っています。
おととし創業50年を迎えたのを見届け、今年2月に創業者の父・稔が他界しました。今回、我が社そしてテント・シート業界を紹介する機会をいただき、亡き父も喜んでいると思います。これからも時代の流れを肌で感じながら、オーダーメイドならではの、ものに愛着を持てる気持ちを大切に、お客様と日々商品づくりに取り組んでいきたいと思っております。そして我が社と同じく、あなたの町にある「テント屋」さんも頼りにしてくださいね。
株式会社 寺田商会
営業日時:8:30-17:30 日曜、祝日定休(臨時休業あり)
住所:愛知県西尾市上町下中田4-3
電話:0563-56-0881
ウェブサイト:https://terada-shokai.jp/
フェイスブック:https://www.facebook.com/profi
編集部からのお知らせ
2021年度ミシマ社サポーターのご案内
サポーター期間:2021年4月1日~2022年3月31日
*募集期間以降も受け付けておりますが、次年度の更新時期はみなさま2022年の4月となります。途中入会のサポーターさまには、その年の特典をさかのぼって、すべてお贈りいたします。
サポーターの種類と特典
下記の三種類からお選びください。サポーター特典は、毎月、1年間お届けいたします(中身は月によって変わります)。
◎ミシマ社サポーター【サポーター費:30,000円+税】
いただいたサポーター費のうち約25,000円分をミシマ社の出版活動に、残りをサポーター制度の運営に使用いたします。
【ミシマ社からの贈り物】
* ミシマ社サポーター新聞(1カ月のミシマ社の活動を、メンバーが手書きで紹介する新聞)
* 紙版ミシマガジン(非売品の雑誌。年2回発行・・・の予定です!)
*生活者のための総合雑誌『ちゃぶ台』(年2回発刊)と今年度の新刊1〜2冊(何が届くかはお楽しみに!)
* 特典本に関連するMSLive!(オンライン配信イベント)へのご招待
* ミシマ社オリジナルグッズ
・・・などを予定しております!(※特典の内容は変更になる場合もございます。ご了承くださいませ。)
◎ウルトラサポーター【サポーター費:100,000円+税】
いただいたサポーター費のうち約95,000円分をミシマ社の出版活動に、残りをサポーター制度の運営に使用いたします。
【ミシマ社からの贈り物】
上記のミシマ社サポーター特典に加え、
*ウルトラサポーターさん交流会
◎ウルトラサポーター書籍つき【サポーター費:150,000円+税】
上記のウルトラサポーター特典に加えて、その年に刊行するミシマ社の新刊(「ちいさいミシマ社」刊も含む)を全てプレゼントいたします。いただいたサポーター費のうち約100,000円分をミシマ社の出版活動に、残りをサポーター制度の運営に使用いたします。
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