第2回
tupera tuperaと父の日特集 お父さんはおもしろい!(2)
2018.06.15更新
子どもも大人も一緒に読んで、大好き! tupera tuperaさんの絵本は、そんな魔法のような魅力にあふれていますよね。その魔法はいったいどんなふうに出てくるのでしょう? 今回、その秘密にすこしだけ迫ることができました。
2日目の今回、おじさん代表ワタナベが、ついに絵本づくりに挑戦します。tupera tuperaさんのアドバイスのもと打ち合わせていると・・・わ、絵本ができちゃった!
前日の「お父さんはすげ〜」につづいて、「すげ〜」の技をぜひ実践してみてくださいね。
(聞き手:ヒゲのミシマン、渡辺佑一(ミシマ社))
2日目 ワタナベ父さん、絵本に挑む
ナーベが登場する『なんでパパ』
(渡辺、絵本朗読)おしまい・・・
一同 お〜〜〜!!
亀山 よい絵本だと思います。
中川 すご〜い。(渡辺のイラストを見ながら)この絵は、初めて描いたんですか? 前からいるキャラなんですか? すごく味のあるいいキャラですね!
渡辺 これは小学生くらいのときから描き始めたキャラで。ミシマ社に入ってからも描いてたんですけど。そうしたら「ナーべ」という名前をつけらました。
亀山 いいですね。「ナーベ」。
―― (笑)。
パパにもパパはいるのか?
亀山 さて、じゃあどこから広げていって絵本にしますか?
渡辺 いやぁ、なんかこれで満足してしまって・・・。
一同 (笑)!
中川 じゃあこれで、今回の企画はもうOKですね(笑)。
渡辺 いや(笑)、もう少し深めたいです。
「パパにもパパはいるのか?」みたいなことも子どもに聞かれたことがあって。「じゃあそのパパのパパにも、パパがいるのか?」みたいなのを、もうちょっと子どもが小さい時に無限ループで言ってて。だから「パパパパパパパパパ」みたいなプランもあったんですよ(笑)。でもそれって画力がいるなと思ってあきらめました。
亀山 「パパパパ」いいじゃないですか。いいアイデアですね。今なんか、後世に残る絵本の可能性が。
―― おお(笑)。
中川 最初がパパで、次がパパパパってことだよね? 「パパのパパ」で、「パパパパ」。
亀山 いいじゃないですか!
―― いけますか(笑)?
亀山 ちょんまげが「パパパパパパパ・・・」ときて、最後にゴリラみたいになって。それでオチはちょっとひねりたいですけど。類人猿みたいになって・・・。最後はどうしましょう?
渡辺 最後ですか。そうですねぇ。最後に太陽とかになるとスピリチュアル的すぎますかね(笑)?
亀山 そうですね(笑)。でも作るのはおもしろいかもしれないですね。「なんで?」ってなりそうですけどね。
―― (笑)
中川 長谷川義史さんの本で、こういう続くのあったよね。「パパパ」じゃないけど、タイトルは『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』でした。
絵本は展開が飛んでも大丈夫!
渡辺 自分の場合絵心がないので、文字に頼ってしまいがちなんですが、そうすると「漫画と何が違うんだろう」と考えました。
中川 絵本はなんでもありですよ。漫画のような絵本も、画集のような絵本も、図鑑のような絵本も・・・すごく懐が深い分野だと思います。
渡辺 なんでもありですか・・・。
ワタナベ出演の写真絵本?
亀山 じゃあ「パパ」で笑わすのがいいんじゃないですか? 「パパ・・・、(で、ページをめくって)パンツ!」みたいな(笑)。
渡辺 ははははははは(笑)!
亀山 ページ見開きで渡辺さんがTバックを履いてるとかね(笑)。それで、「パパ〜〜〜〜・・・パンツ!!!」みたいな感じで(笑)。
―― (大笑)!!
亀山 きっかけはバカバカしくても「おもしれぇ!」「すげぇ!」につなげていけばいいと思うんです。
―― なるほど(笑)!
亀山 自分をいじりながら。
渡辺 それいいですね!
亀山 ものすごいヒョウ柄のTバックがいいですね。
渡辺 ははは(笑)!!
中川 じゃあ「パ」がつくものをみんなで集めてみましょう!
一同 パンツ、パイナップル、パンダ、パーマ、パンク、パーティー、パンチ、パステル、パリ、パキスタン、パクチー、パープル、パーカッション、パズル、パノラマ、パラシュート、パレード、パチンコ、パンタロン・・・、まだまだありますね。
渡辺 写真絵本以外だったら、ちょっとやりたいですけどね。
亀山 じゃああえて写真絵本でいきましょう。
渡辺 ははは(笑)!
中川 子どもにとっては、自分のお父さんが実際に出てくる写真絵本が一番おもしろいと思う。
父のギャグはなんでもウケる!
亀山 やっぱり子どもはパパには笑ってくれるんですよね。他の人が見たらものすごくつまんないことを言ってても、笑わせることができる。これが父親の特権だと思います。
―― 確かに!!
中川 他のおじさんが言うよりね。お母さんも、その部分では負けますよねー。
亀山 そうなんですよ。「ドゥーン!!」とかやるだけで大ウケですから(笑)。他で僕が「ドゥーン!!」ってやっても全然ダメなんだけど、自分の子どもは大爆笑してくれるから。それは父親の特権ですから。
渡辺 そうですよね。めっちゃわかります。
亀山 だからやっぱり自分をいじりながら写真でやるのがいいですよ。
中川 私、ちっちゃい時に自分のお父さんのこと、すっごいおもしろいと思ってて。くだらないダジャレばっかり言ってたんですけど。
亀山 大きくなると嫌になるようなね。
中川 そのおもしろさを友だちにも知ってほしくて。「うちのお父さんおもしろいよ」って紹介しても、友だちの前では全然すまして、そんな素ぶり見せない。でも、やっぱり自分のお父さんが一番おもしろいって信じてました。
―― ははは(笑)!!
亀山 じゃあ、もうTバックも取って鴨川の中州あたりで裸でいきましょうか(笑)。
―― はははは(笑)!!
アイデアの膨らませ方
渡辺 普段の、絵本の着想とそこからの膨らませ方ってどうやってるんですか?
中川 わりとこんな感じです。きっかけになるようなテーマが決まったら、2人で会話しながら、お互いにアイディアを出し合って進めていきます。
亀山 アイディアが浮かぶのは、テレビ観てる時とか、車運転してる時とか、いろいろですね。
―― ヘぇ〜〜。
亀山 僕が絵本の種になるようなテーマを思いついて、敦子がどんどん膨らませていくっていうパターンが多いですかね。それでまた戻ってきて。もちろん他の感じもありますけど。
中川 『うんこしりとり』とか『かぜビューン』とか、ひとつのテーマがあって、そのバリエーションで展開していく絵本が多いのは、tupera tuperaのひとつの特徴かもしれませんね。
『わくせいキャベジ動物図鑑』の時も、野菜と動物の掛け合わせで何を見せられるか。共通点は何があるかというのを、いろんな図鑑を見ながら2人でとにかく出していきました。
渡辺 そこで、絵を描くか切り絵で表現するかとか、表現方法は「このアイディアだったらこれがいい」という決め方なんですかね?
亀山 そうですね。絵本のアイディアが固まってから、どんな技法でつくったらいいかを考えていきますね。そこが一番おもしろいところです。今回の場合はヌードで(笑)。
渡辺 (笑)。実写がいいのではないかと(笑)。
中川 『パンダ銭湯』もラフは線画で漫画みたいに描いてて、それも気に入ってたんですけど、漫画の世界ならパンダがどこに行ったって、おかしくもなんともなくて。普通なんだけど、なるべくリアルにというか。本物のパンダが銭湯に行くからおもしろいんじゃないかと。
それで、背景をデッサンっぽく描いて、手前のパンダはそこに立体感を持たせて貼り絵で登場させるみたいな。舞台背景と役者さんみたいな感じにしたんです。
渡辺 なるほど〜。
左:『わくせいキャベジ動物図鑑』tupera tupera(アリス館)/右:『パンダ銭湯』tupera tupera(絵本館)
歳いった父と子をつなぐ絵本?
亀山 あれがいいんじゃないの? 顔出し絵本。 「パパ〜〜・・・パイナップル!」みたいな。
―― あ〜〜! なるほど!
亀山 ページに穴がドーンとあいてて、「パール!」だったらパールからお父さんの顔が出てる(笑)。
中川 いいね! 顔はめパネル絵本だね。
―― そうですね(笑)。
中川 普通に絵で描く場合は、1人のお父さんしか描けないけど、穴を開けて顔出すのだったら、その絵本を読むお父さんがそのまま絵本の主人公になれる! そのお父さんの子どもは絶対におかしいと思う。
亀山 これもしかしたら、俺の父親がいまやってもおもしろいかもしれない。
―― (笑)!!そうでしょうね(笑)!
亀山 40オーバーの息子に(笑)。どんなパパでも大丈夫っていうのをウリにしましょう!
90歳のお父さんが70歳のお父さんにやるとかも(笑)。90歳のお父さんが「パパ〜〜・・・、パキスタン!!」ってコラージュでやったらかなりおもしろいですよ(笑)。
―― おもしろいですね(笑)! これは新しい親子の絆を生みますね(笑)。
亀山 たとえば「パパ〜〜・・・、パワフル!!」とかくるじゃないですか。そしたら本当に持ち上げてる写真を撮って、コラージュだったらここでビルとかも持たせられるんですよ。
―― あぁ〜なるほど。
亀山 そしたら「すげぇ!」みたいになるので。コラージュの良さって、そこだと思うので。
―― 顔はめじゃなくて、自分の顔を貼っていくのはどうですか?
中川 お父さんの顔の部分はあけておいて、「自分の顔を貼ろう」っていうのはいいかもしれないですね。
―― シールみたいにして。
亀山 なるほど! いけますね。
中川 新しいかもしれませんね。
―― 剥がせたりもできるようにしといて。
亀山 自分でつくったシールを貼って、その家族にしかない絵本をつくるってことですよね。お父さんが買って、家に持って帰って、つくるっていう設定にしようか。そしたら家族に大ウケみたいな。
中川 逆に、家族が買って、自分のお父さんの顔を貼って仕上げて、お父さんにプレゼントするのもいいですね!
―― 本当にその家にだけある絵本になりますもんね。
亀山 いけるかもしれないですね。ただ、こういうのって冷静になって、2、3日経つと「あれ?」みたいな感じになるときもありますよ(笑)。
―― そうでしょうね(笑)。
亀山 そうなんですよ。ちょっとわからないですけど、いまのところいけると思います。
***
こちらが完成した絵本の動画です。 ぜひ皆さんも自分で絵本を作ってみてください!
プロフィール
tupera tupera(ツペラツペラ)
亀山達矢と中川敦子によるユニット。2002年より活動を開始する。絵本やイラストレーションをはじめ、工作、ワークショップ、舞台美術、アニメーション、雑貨など、様々な分野で幅広く活動している。絵本など、著書多数。海外でも様々な国で翻訳出版されている。NHK Eテレの工作番組「ノージーのひらめき工房」のアートディレクションも担当。京都造形芸術大学こども芸術学科客員教授
編集部からのお知らせ
tupera tuperaさんの展覧会が7月よりうらわ美術館にて開催されます。ぜひ足をお運びください。
ぼくと わたしと みんなの tupera tupera 絵本の世界展
日常生活などから見いだされる数々のアイデアは、親しみと驚きと遊びの要素があいまって、不思議だけれど圧倒的に楽しい世界を形づくっています。本展は、そのようなtupera tuperaの世界から約300点を、初期の絵本、さまざまなモチーフの絵本、絵本のつくりかた、イラストレーション&アートディレクション、tupera tuperaのものづくり、工作&ワークショップの6つの章でたっぷりと紹介する、初めての大規模展覧会です。(開催概要より抜粋)
■開催時期:2018年7月7日(土)~8月31日(金)
■場所:うらわ美術館