月刊ちゃぶ台

第2回

編集長による巻頭言を掲載します

2018.10.04更新

 今月19日に発刊となる、『ミシマ社の雑誌 ちゃぶ台Vol.4「発酵×経済」号』。今号の特集は、「菌をもっと!」「やわらかな経済」の2本立てでお届けします。登場してくださった著者の方々は、「月刊ちゃぶ台」のコーナーの第1回目にてお知らせした通りなのですが、そもそも雑誌のタイトルにある、発酵と経済って? 菌? 経済? この組み合わせから生まれる雑誌とは一体?! まだまだ未知なことが山積みであろう読者のみなさまに、少しでもこの雑誌の面白さを知ってもらいたい! ということで、第2回目の今回は特別に、編集長・三島邦弘による巻頭言を先行掲載いたします。

 ・第1回目「『ちゃぶ台Vol.4「発酵×経済」号』を発刊します」はこちら

chabudai4_shoei.jpg

ミシマ社の雑誌 ちゃぶ台Vol.4「発酵×経済」号

先進県・秋田との出会い

編集部(三島邦弘)

 今年の1月に出た、ある一冊の本が与えた衝撃は実のところはかりしれない。平川克美著 21世紀の楕円幻想論』。ひとつの中心点しかもたない「真円」ではなく、ふたつの焦点のある「楕円」。どっちか、ではなく、どっちも。

 田舎と都会、資本主義と贈与経済、敬虔と猥雑、身体性とデジタル性、有縁と無縁、死と生・・・。平川さんは言います。人間、ほっとけば真円に近づこうとする。真円の潔癖性にどうしても憧れてしまう。だが、一見相反するように思えるこれらのことは、同じひとつのことの異なる現れにすぎず、「どちらか」しか見ないことは、知的怠慢にすぎない。金融中心の資本主義を中心点とする真円から、もうひとつの焦点をつくって、楕円にする。それが現代社会に必要なものである。そして、それを可能にするのは野生のモラルであったり、贈与社会のあり方にほかならない。

 平川さんのこの思想に出会ったとき、『ちゃぶ台』が追い求めてきたものの意味が後追い的にわかったような気がしました。「移住のすすめ」「今までにない就活」「会社の終わり、companyの始まり」「百姓(たくさんの仕事をもつこと)のすすめ」「学びの未来」「新しい地元」、このような特集を組んできたのも、もうひとつの焦点をつくろうとする動きの現れではなかったか。そんなふうに思えてきたのです。

 いずれにせよ、こうして楕円幻想論を知ってしまった以上、次の『ちゃぶ台』では、もうひとつの焦点を求める動きを意識的にとるほかありません。

 では、その焦点はどうすればつくることができるのか?

 そう考えたとき、迷いなく断言できるものがありました。

 それは、菌! もっとも、断言できるといいつつ、その根拠は? と問われると、いやあ、直感です、と申し上げるほかないのですが。ただ、期せずして、これまでの『ちゃぶ台』でも、菌のことを取り上げていました。たとえば、Vol.1,3に寄稿いただいた鳥取県智頭町のタルマーリーさんは、「菌本位制」を唱え、菌が先にあって、人間があとにくる、という生活と仕事を実践されていますVol.1の特集「今までにない就活」に登場いただいたバッキー井上さんは、自身のことを「森のキノコ」と言ってもいましたし・・・。

 そんなことを考えていた4月下旬、「のんびり」編集長の藤本智士さん、発酵デザイナー・小倉ヒラクさんと会う機会がありました。京都の恵文社一乗寺店でトークイベントをご一緒した際、「次の『ちゃぶ台』は菌特集でいきます!」と高らかに(?)宣言したのです。打ち上げも終わり、帰り道で二人は声を揃えてこう言いました。

「菌特集するなら、絶対、秋田来な!」(藤本)

「三島さん、絶対に秋田に行くほうがいい」(小倉)

 二人がそういうのなら、訪れない手はない

 ということで、翌月の521日~23日に行ってきました。約3年ぶりに訪れる秋田ですが、正直なところ、秋田のどこを訪れるのかさえ知らず、まっさらな状態で大阪伊丹空港から秋田空港へと飛んだのでした。二人の言うがままに動くつもりで。

 空港で待ってくれていたのは、「のんびり」編集部の矢吹さん。彼女の運転する車に乗せられ、連れて行かれたのは、秋田県五城目町にある酒蔵・福禄寿酒造さんでした。ここから始 まった23日の旅は、目から鱗の連続でした。

 高齢化率、人口減少率日本一の秋田県は、実のところ、先進国ならぬ「最」先進県だったのです。


 いかがでしょうか? 『ちゃぶ台Vol.4』の発売日は2018年10月19日です。発売が待ちきれない、まだ『ちゃぶ台』の全貌がわからないという方、まずは既刊の『ちゃぶ台』Vol.1〜Vol.3をぜひ手にとってみてください!

chabudai_shoei1.jpg

ミシマ社の雑誌 ちゃぶ台「移住×仕事」号
ミシマ社 編、1500円+税

chabudai2_shoei.jpgミシマ社の雑誌 ちゃぶ台 Vol.2 革命前々夜号
ミシマ社 編、1500円+税

chabudai3_shoei.jpgミシマ社の雑誌 ちゃぶ台 Vol.3 「教育×地元」号
ミシマ社 編、1500円+税

ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

編集部からのお知らせ

ちゃぶ台ツアー、やります!

ちゃぶ台Vol.4「発酵×経済」号の発刊を記念して、全国各地でイベントを開催予定です。

【11/7】ちゃぶ台Vol.4発刊記念 トークイベント 
出演:松村圭一郎×三島邦弘

『うしろめたさの人類学』(ミシマ社)の著者でもあり、『ちゃぶ台Vol.4』には「人間の経済 商業の経済」をご寄稿くださった松村圭一郎さんをお招きして、編集長三島邦弘との対談イベントが実現します。

■開催日:2018117日(水)
■場所:恵文社一乗寺店
〒606-8184京都市左京区一乗寺払殿町10

■タイトル:人間の経済をとりもどす!

■内容:『うしろめたさの人類学』でいきづまる世界に「スキマ」を空けた松村さん。年一度刊行の雑誌「ちゃぶ台」で、すでに始まっている未来の種をレポートする三島さん。ふたりが共通して求めるものに、「人間の経済」があります。「人間の経済 商品の経済」を『ちゃぶ台Vol.4』に寄稿した松村さんの考え、そして意図とは? 三島さんが雑誌づくり、出版社運営を通してめざす「経済」とは? 無二の親友でもある二人がこの日、ぞんぶんに語り合います。また、「ミニブックトーク」の時間を設け、「人間の経済」を取り戻すために必読といえる本も紹介してもらう予定です。

詳しくはこちら


【11/15】香川県高松市に編集長三島邦弘が行きます!

『ちゃぶ台Vol.4』編集長三島邦弘によるトークイベントを開催します。

■開催日:20181115日(木)
■場所:本屋ルヌガンガ
〒760-0050香川県高松市亀井町11番地の13 中村第二ビル1階

詳細は決定次第、お知らせいたします。


【11/16】高知県土佐町に編集長三島邦弘が行きます!

『ちゃぶ台Vol.4』の発売日に編集長三島邦弘によるトークイベントを開催します。

■開催日:2018年11月16日(金)18:30〜20:30
■場所:あこ
高知県土佐郡土佐町田井1485

■タイトル:「本」で世界を面白く。「一冊」が起こす豊かさ。

■内容:一冊の本と出会う。それが人生を変えることもある。
そんな大きな変化でなくても、日々の滋養のような効果が「紙の本」には宿っている。
そうした生命のような「一冊」を生み出し、明日の世界を一冊分面白くしようと、一冊一 冊に思いを込め出版しつづけている人がいる。 2006年10月に単身で出版社ミシマ社をたちあげた三島邦弘。彼はいま、11人のメンバーとともに、京都と東京(自由が丘)の二拠点で「原点回帰」の出版活動をおこなっている。出版業が厳しいと言われて久しいこの時代に、いったい、どのように発想をし、どのように一冊分ずつ世の中の面白みを積んでい るのか。明日、あなたが本に出会うのが今よりも一冊分わくわくするようになる、今回はそんな座談会。


【11/23】ちゃぶ台Vol.4発刊記念 トークイベント 
出演:松村圭一郎×三島邦弘

さらに岡山でも、松村圭一郎さんとミシマ社代表三島邦弘による対談イベントが開催決定!

■タイトル:もういちど「近代」を考える:次の『ちゃぶ台』Vol.5はどうなるの?

■内容:雑誌『ちゃぶ台』で、つねに時代の流れのその先を見つめてきたミシマ社代表の三島邦弘さん。今春、スロウな本屋で日本の近代を問いなおした石牟礼道子作品の寺子屋をはじめた松村圭一郎さん。
 20年来の旧知の仲であるお二人が、いまあらためて「近代(菌代?)」について語り合います。『ちゃぶ台 Vol.4「発酵×経済」号』が発刊されたばかりですが、お二人の目は、もう次の Vol.5 で何を世に問うかに向けられています。さて、お二人は「近代」という時代をどう乗り越えようとしているのか? 岡山の地で、はじめてその先の話があきらかに!

■開催日:2018年11月23日(金)
■場所:スロウな本屋
〒700-0807 岡山県岡山市北区南方2-9-7

詳しくはこちら

ほかにも続々と計画中です。今後のちゃぶ台ツアーにぜひご期待ください!

おすすめの記事

編集部が厳選した、今オススメの記事をご紹介!!

  • 生まれたて! 新生の「ちゃぶ台」をご紹介します

    生まれたて! 新生の「ちゃぶ台」をご紹介します

    ミシマガ編集部

    10月24日発売の『ちゃぶ台13』の実物ができあがり、手に取った瞬間、雑誌の内側から真新しい光のようなものがじんわり漏れ出てくるのを感じたのでした。それもそのはず。今回のちゃぶ台では、いろいろと新しいことが起こっているのです!

  • 『tupera tuperaのアイデアポケット』発刊のお知らせ

    『tupera tuperaのアイデアポケット』発刊のお知らせ

    ミシマガ編集部

    10月の新刊2冊が全国の本屋さんで発売となりました。1冊は『ちゃぶ台13』。そしてもう1冊が本日ご紹介する、『tupera tuperaのアイデアポケット』です。これまでに50冊近くの絵本を発表してきたtupera tuperaによる、初の読みもの。ぜひ手にとっていただきたいです。

  • 「地獄の木」とメガネの妖怪爺

    「地獄の木」とメガネの妖怪爺

    後藤正文

    本日から、後藤正文さんの「凍った脳みそ リターンズ」がスタートします!「コールド・ブレイン・スタジオ」という自身の音楽スタジオづくりを描いたエッセイ『凍った脳みそ』から、6年。後藤さんは今、「共有地」としての新しいスタジオづくりに取り組みはじめました。その模様を、ゴッチのあの文体で綴る、新作連載がここにはじまります。

  • 職場体験の生徒たちがミシマ社の本をおすすめしてくれました!

    職場体験の生徒たちがミシマ社の本をおすすめしてくれました!

    ミシマガ編集部

    こんにちは! ミシマ社自由が丘オフィスのスガです。すっかり寒くなってきましたね。自由が丘オフィスは、庭の柿の実を狙うネズミたちがドタバタ暗躍しています・・・。そんな自由が丘オフィスに先日、近所の中学生が職場体験に来てくれました!

この記事のバックナンバー

10月23日
第42回 生まれたて! 新生の「ちゃぶ台」をご紹介します ミシマガ編集部
10月12日
第41回 「30年後」なイベント開催! ミシマガ編集部
03月19日
第40回 『ちゃぶ台13』の特集を発表します! ミシマガ編集部
12月04日
第39回 『ちゃぶ台12』の「捨てない」本づくり? ミシマガ編集部
11月11日
第38回 『ちゃぶ台12』の特集発表! ミシマガ編集部
06月11日
第37回 『ちゃぶ台11』刊行しました~! ミシマガ編集部
06月05日
第36回 これまでの『ちゃぶ台』で「書店、再び共有地」特集に登場したお店を紹介します!(後編) ミシマガ編集部
05月28日
第36回 これまでの『ちゃぶ台』で「書店、再び共有地」特集に登場したお店を紹介します!(前編) ミシマガ編集部
05月21日
第35回 『ちゃぶ台11』、ついに表紙と読み物をご紹介します! ミシマガ編集部
04月22日
第34回 「自分の中にぼけを持て」への旅 ミシマガ編集部
12月13日
第33回 編集部が『ちゃぶ台10』をあつあつに語る(3) ミシマガ編集部
12月12日
第32回 編集部が『ちゃぶ台10』をあつあつに語る(2) ミシマガ編集部
12月10日
第31回 本日発売!編集部が『ちゃぶ台10』をあつあつに語る(1) ミシマガ編集部
11月07日
第30回 校了目前! あたふた編集チームが、『ちゃぶ台10』の見どころを紹介します ミシマガ編集部
09月08日
第29回 雑誌『ちゃぶ台』って、どんなことを「特集」してきたの?(後編) ミシマガ編集部
09月07日
第29回 雑誌『ちゃぶ台』って、どんなことを「特集」してきたの?(前編) ミシマガ編集部
09月03日
第28回 『ちゃぶ台』次号は10号! こんどの特集は「ボゴボゴ」!? ミシマガ編集部
06月07日
第27回 おお!周防大島!合宿 レポート(後編) ミシマガ編集部
06月06日
第27回 おお!周防大島!合宿 レポート(前編) ミシマガ編集部
04月19日
第26回 『ちゃぶ台9』を発刊します。特集発表! ミシマガ編集部
03月06日
第25回 時間銀行って何だろう?――つながりで生きる(後編) ミシマガ編集部
03月05日
第25回 時間銀行って何だろう?――つながりで生きる(前編) ミシマガ編集部
01月26日
第24回 『ちゃぶ台8』刊行記念 榎本俊二×漆原悠一×三島邦弘 鼎談(2) ミシマガ編集部
01月25日
第24回 『ちゃぶ台8』刊行記念 榎本俊二×漆原悠一×三島邦弘 鼎談(1) ミシマガ編集部
11月01日
雑誌『ちゃぶ台』バックナンバー ミシマガ編集部
10月30日
第23回 『ちゃぶ台8』、発売まであと1カ月です! ミシマガ編集部
07月14日
第22回 ちゃぶ台7刊行記念イベント「ふれる、もれる、すくわれる雑誌!?」 ミシマガ編集部
05月26日
第21回 『ちゃぶ台7』を刊行します! ミシマガ編集部
01月11日
第20回 「ちゃぶ台6」各紙で話題に! 読者の方からもぞくぞくご感想が届いています! ミシマガ編集部
11月29日
第19回 非常時を明るく生きる、ってどういうこと? 三島邦弘×Title 辻山良雄(2) ミシマガ編集部
11月28日
第19回 非常時を明るく生きる、ってどういうこと? 三島邦弘×Title 辻山良雄(1) ミシマガ編集部
10月30日
第18回 『ちゃぶ台6』巻頭文を掲載します。 ミシマガ編集部
09月12日
第17回 雑誌『ちゃぶ台Vol.6』を刊行します! ミシマガ編集部
07月15日
第16回 ちゃぶ台編集室レポート(2)コロナの時期の周防大島 ミシマガ編集部
07月14日
第15回 ちゃぶ台編集室レポート(1)コロナの時期の周防大島 ミシマガ編集部
03月15日
第14回 若者は政治に興味がない? ーー2人の学生とちゃぶ台でお話しましたーー(2) ミシマガ編集部
03月14日
第14回 若者は政治に興味がない? ーー2人の学生とちゃぶ台でお話しましたーー(1) ミシマガ編集部
03月03日
第13回 中島岳志さんインタビュー いまの政治のこと、教えてください。(2) ミシマガ編集部
03月02日
第13回 中島岳志さんインタビュー いまの政治のこと、教えてください。(1) ミシマガ編集部
03月01日
第12回 はじめてのアナキズム|松村圭一郎 ミシマガ編集部
02月22日
第11回 移住してみて(中村明珍・内田健太郎) ミシマガ編集部
11月14日
第10回 えっ、みんなでアナキズム!?(2) 近代以前の回路とつながるには ミシマガ編集部
11月13日
第10回 えっ、みんなでアナキズム!?(1) 自分の持ち場でアナキズム ミシマガ編集部
10月22日
第9回 白川密成さんインタビュー ミシマガ編集部
10月21日
第8回 渡邉康衛さん×三島邦弘トークイベント 「本づくりと酒づくり〜ちいさいものづくりで目指すこと〜」 ミシマガ編集部
09月14日
第7回 『ちゃぶ台Vol.5「宗教×政治」号』を発刊します。 ミシマガ編集部
07月19日
第6回 参院選直前特集 タルマーリー 渡邉格さんインタビュー「政治が何かを変えること」は重要だと思わないでいい ミシマガ編集部
05月04日
第5回 「おお!すおうおおしま」レポート ミシマガ編集部
05月03日
第5回 周防大島・宮田正樹さんの畑レポート ミシマガ編集部
11月11日
第4回 もっと菌を!? ミシマ社が考えるこれからの10年(2)「黄金時代がやってくる」 ミシマガ編集部
11月10日
第4回 もっと菌を!? ミシマ社が考えるこれからの10年(1)「未来の種はこんなふうに」 ミシマガ編集部
10月19日
第3回 『ちゃぶ台Vol.4』発刊! ミシマ社メンバーのおすすめ記事紹介 ミシマガ編集部
10月04日
第2回 編集長による巻頭言を掲載します ミシマガ編集部
09月25日
第1回 『ちゃぶ台Vol.4「発酵×経済」号』を発刊します。 ミシマガ編集部
ページトップへ