月刊ちゃぶ台

第5回

周防大島・宮田正樹さんの畑レポート

2019.05.03更新

suga.jpg こんにちは、新人の須賀です!
 4月27日〜29日まで、『ちゃぶ台』でおなじみの、周防大島に伺ってきました!
 イベントなどを通して、多くの方のお話を聞くことができて、好天にも恵まれ、とても濃密な3日間になりました。

 島についたミシマ社メンバーは、まず、周防大島に移住して農業をされている宮田正樹さんの畑へ伺いました。

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 宮田さんは『ちゃぶ台 vol.2』で「命をつなぐ食糧をつくる人があまりにも日本には少なすぎる」という言葉ではじまる、『命をつなぐ仕事を』という記事を執筆されています。

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『ちゃぶ台 Vol.2 革命前々夜号』 ミシマ社編

 そして昨年発刊した『ちゃぶ台 vol.4』では『春夏秋冬 島で農業をして生きる』という記事に登場して、集中豪雨の被害など、直近1年間の野菜づくりを振り返って、そのなかで考えたことをお話されています。

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『ちゃぶ台 Vol.4 「発酵×経済」号』 ミシマ社 編

 暖かい人柄の中に、深い信念と、野菜への愛情を感じさせる宮田さん。柔らかい語り口で話される野菜づくりや自然についてのお話に、驚かされることばかりでした。

① 重機を使わないわけ

 『春夏秋冬 島で農業をして生きる』でも、その苦労を話されているように、大木が生い茂った、森のような耕作放棄地を何年もかけて開墾してきた宮田さん。それだけでも気が遠くなる話ですが、トラクターなど重機はなるべく使わず、一本一本チェーンソーなどで切っていったとのこと。

 重機を使わないのは、『命をつなぐ仕事を』にも書かれている、「だれでもできる方法で野菜づくりをやる」という宮田さんのコンセプトのため。値段が高い重機は、なかなか買えるものではありません。手に入りやすい、スコップやチェーンソーでも畑がつくれると証明して、農業に興味のある人に、「ああ、自分もできるんだ」と思ってもらい、そうして「いのちをつなぐ仕事」をする人が増えてほしい。

 大木が前や横に倒れて周りの民家を傷つけることを防ぐため、ワイヤージャッキを3本も使って南に傾いていた木を北側に倒したことも。倒した太い幹はすべて手で軽トラにのせて薪置き場に運んだとのこと。体を張って理念を守ろうとする情熱と、畑のあちこちにある太い切り株を目にして、心を打たれました。

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②島全体が菌でつながっている

 「菌根菌」という菌を知っていますか? 宮田さんは最近、この菌を強く意識されているとのこと。
 この菌は野菜の根っこに入り込んで、土と野菜のあいだで栄養をやりとりする仕事をしています。

 さらにこの菌、菌糸を伸ばして、他の植物の菌根菌とつながります。それはつまり、菌を通して植物どうしが土の中でつながる、ということになります。

 

 森の中の古い木は弱っている木があると、なんと、長年培った菌糸のネットワークを通して栄養を与えるそうです! そういう仕事をする木を「マザーツリー」と呼びます。マザーツリーが栄養を与える様子を記録した映像を見て、「自然に対して、打ち震えるような感動を覚えた」宮田さん、その時から肥料のやり方など、野菜づくりにも変化があった、とおっしゃっていました。

 菌根菌によって、島全体の植物が菌によって結ばれている。本州だったら、青森から山口まで、植物どうしがつながっているかもしれない! というお話に、菌と植物が隠し持つ、スケールの大きさに圧倒されました。

 

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ミシマガ連載『ダンス・イン・ザ・ファーム』でおなじみ、中村明珍さん

③その土地の味をつくるため

 「その土地でとれた資材を使って、その土地の気候の中で育ったら、同じ野菜でも他の場所とはちがう、そこの味になっていく。いろんな場所の味がある方が、毎日選べて楽しいですよね」という宮田さん。

 その考えを実践して、腐葉土や肥料など、畑づくりは全て100パーセント周防大島産の資材を使われているんです! 周防大島で米づくりをしている農家の方から、籾殻をもらって籾殻燻炭(もみがらくんたん・・・土の保水性がよくなるなどの土壌を改良する効果がある)をつくることも。

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 上の写真の支柱も伐採した笹竹から作っています。
 2年生以上の笹竹は硬く丈夫なので支柱にし、軟らかい1年生のものは全て焼いて畑に撒かれたそうです。支柱にした笹竹は2~3年使った後、もろくなってきたら短く切って土にさして目印にしたり、炭にしたりと、全て活用されています。

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 宮田さんの畑では、スナップエンドウが食べ頃を迎えていて、その場でごちそうになりました。甘みが強くて、めちゃめちゃおいしかったです。思わず、「これが周防大島の味か」と唸りました。

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***

おまけ 野生に帰りました

 宮田さんのお話を伺ったあと、裏山でたけのことフキの収穫を体験させてもらいました。

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 宮田さんの奥様のきみこさんに収穫の方法を教わりながら、慣れない鎌と鍬を手に苦戦する、代表ミシマ・ワタナベ・ハセガワ・スガ。一人だけ手にしないタブチ。両手両足を駆使して斜面を駆け上がり、素手でたけのこを引っこ抜くタブチを見て、きみこさんは「野生に帰ったね」と笑っていました。

 収穫した野菜たちは、きみこさんの手によって、それぞれおいしい煮物になりました。「自分で収穫したものはおいしい」というのは、農業の原点であるような気がします。

 そして、さっきまで山に生えていたたけのこやフキが、目の前で煮物になっているというのは、当たり前といえば当たり前ですが、なんだか不思議な気分になりました。今思えば、「いのち」をいただくことを実感した瞬間だったと思います。いろいろなことを感じ、考えることができた、素晴らしい3日間になりました。

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