第23回
『ちゃぶ台8』、発売まであと1カ月です!
2021.10.30更新
こんにちは。ミシマガ編集部です。
雑誌『ちゃぶ台8』の発刊まで、いよいよあと1カ月となりました! 11月26日(金)からリアル書店先行発売、そして、11月30日(火)にネット書店を含むすべてのお店での発売となります。
『ちゃぶ台』は、ミシマ社が2015年に創刊した「生活者のための総合雑誌」です。はじめは年に一度発刊していましたが、6号(2020年11月刊)から半年ごとの発刊となりました。ハイペースな制作状況に、編集チームはちょっと目を白黒させています。が、毎号ほんとうに豪華な著者陣にご寄稿いただき、号を重ねるごとに新しい書き手の方々が次々とご登場くださっています。数カ月に一度、感動・興奮・怒涛の波が押し寄せるのがこの『ちゃぶ台』発刊時期です。
現在、最新号の『ちゃぶ台8』の制作は最終段階にさしかかっています。魅力がたっぷりの今号について、できるだけ早くみなさまにお伝えしたい・・・! 抑えきれない思いを込めて、本日のミシマガでは、誕生しつつある『ちゃぶ台8』の見どころをリアルタイムでご紹介いたします!
榎本俊二さんによる描き下ろし漫画が表紙に!
ミシマ社は、この10月に創業15周年を迎えました。『ちゃぶ台8』はみなさまへの感謝を込めた「ミシマ社創業15周年記念号」。そして特集名には「『さびしい』が、ひっくり返る」を掲げています。この特別な号に、ぜひ装画を描いていただけないかと編集メンバーが切望したのが、漫画家の榎本俊二さんでした。
榎本さんは『ちゃぶ台Vol.2』以来ずっと、本誌に「ギャグマンガ家山陰移住ストーリー」を連載されています。地方移住にまつわる悲喜こもごものエピソードを、まさに困難をひっくり返すようにして、何度読んでも笑いが込み上げるギャグ漫画にしてくださっています。
こちらが出来立てほやほやの表紙です!
「ちゃぶ台」「さびしい」「ひっくり返る」「15周年」というキーワードが見事につながる1ページの漫画。それをデザイナーの漆原悠一さん(tento)が、おしゃれで、かつ、どこかひょうきんさのある素敵なデザインに仕上げてくださいました! 特集名の可愛くてコミカルなフォントがたまりません。見るだけですでに気持ちがふわっと揺らぎはじめ、「これ、なんだろう?」と心を持っていかれる表紙になりました。
(漫画の内容とデザインの細部は、実際に現物をお手にとってご覧いただけますとうれしいです! 裏表紙にもしかけがあります。)
「さびしい」が、ひっくり返る
ちゃぶ台は昨年のリニューアル以来、「非常時代を明るく生きる」「ふれる、もれる、すくわれる」という特集を組んできました。今回のテーマに寄せた三島の巻頭文を掲載いたします。
「さびしい」が、ひっくり返る
ちゃぶ台返しという言葉があるが、実際にするものではない。してはいけないと思う。家庭でそんなことをすれば、起死回生の関係回復より、崩壊が訪れる確率がずっと高くなる。仕事の現場でも、あの人のちゃぶ台返しのおかげで成功した、などとしばしば耳にするが、それは、ちゃぶ台返しというより、適切な軌道修正と言うのが正確だ。
ただ、気分はわかる。長引く行動の自粛。先行きの見えない商売。ストレス発散もままならぬ日々。鬱屈とするのももっとも。あらゆるものを台に載せ、全てを投げ打ってしまいたい。そうして、0から再出発したい......。
とはいえ、実際にストレスやら理不尽さからくる怒りを載せて爆発させると、自分たちが傷ついてしまう。一度や二度では済まないほどに怒る材料はあるわけで、身がもたない。
では何をひっくり返す? と考えたとき、「さびしい」が脳裏に浮かんだ。
理由は簡単。なんともいえず、さびしいのだ。仕事であれ日常生活の中であれ、人と会うことや接触が圧倒的に減った。そうして、だんだんとさびしさが募っていっている。いや、さびしくなったわけではない。生きることはもともとさびしいもの。それに気づかずにいただけかもしれない。ただ、確かにさびしいはある。
その「さびしい」を、ひっくり返したい。
本号では、尊敬してやまない書き手の方々に、さまざまな「さびしい」を載っけてもらい、ひっくり返してもらうことにした。そうしてみると、どんなことが起こるだろうか?
想像するだけでワクワクしてくる。もう、すでに、「さびしい」が自分から去った気さえしてきている。本誌編集長 三島邦弘
編集メンバーが、初登場の著者をご紹介します
今号にご登場くださっている著者はこちらの方々です!(敬称略、掲載順)
益田ミリ、津村記久子、三好愛、斉藤倫、村瀨孝生×松村圭一郎、工藤律子、藤原辰史、齋藤陽道、榎本俊二、滝口悠生、内田健太郎、土井善晴、寄藤文平、中村明珍、中島岳志×辻山良雄、益田ミリ/平澤一平、面白い本屋さん(井戸書店、曲線、本屋・生活綴方)、須山奈津希
「さびしい」という状態をそっと肯定し、捉えなおし、ずらし、いつのまにか別の感覚へと結びつけてしまうような読み物が揃いました。日々の心許なさを否定したり壊したりするのではなく、「こんなふうに見えるものもあるよ」と、腕をすっと摑まれて誘い出されるような感覚が訪れることを願ってやみません。
このなかで、今回初めて『ちゃぶ台』にご寄稿くださった4名の著者について、担当編集がご紹介させていただきます!
須山奈津希さん 漫画「Reflection」
須山さんとお目にかかって「何かお仕事をご一緒できたら」と思ってからちょうど2年ほど。今回「『さびしい』が、ひっくり返る」が特集テーマに挙がったとき、「ついにそのときがきた!」と思いました。
届いた原稿は・・・想像を超える須山さんワールド。タイトル通り、すべてが少しずつズレながら、響き合いながら、時空が混ざり合って進みゆく8ページ。何気なく読み始めたら、いつのまにか心が持っていかれる、傑作です。(担当:星野)
斉藤倫さん 創作「ビルさん」
ある家のちゃぶ台(テーブルのほう)の上にちゃぶ台(雑誌のほう)があったとして、親が読みたくて買ったものだけど、子が暇を持て余して読み出したらいいのに、とずっと思っていました。そういう雑誌にしていきたいという気持ちを号を重ねるごとに着実に盛り上げ、ちゃぶ台至上初、「児童向け創作」を掲載できることになりました。執筆をご依頼したのは『どろぼうのどろぼん』や『レディオワン』『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』『さいごのゆうれい』などなど、たくさんの児童文学や絵本のテキストを手がけ、(私が好きな)作品をあげたらきりがない! 詩人の斉藤倫さんです。感覚が言葉にぎゅっとつまった「ビルさん」は、読むと体の内側の空間が広がる感じがする。気持ちよくて、ダッシュしたくなる、すてきな作品です。(担当:野崎)
三好愛さん 絵と言葉「おかえりアイロン」
今回の特集タイトルは「『さびしい』が、ひっくり返る」ですが、自分が「ひっくり返った」出来事を思い巡らしてみると、初めて三好愛さんのエッセイを読んだとき、が浮かびました。
それはそれは衝撃でした。このおもしろさはどういう種類? と思いました。あることが気になる、でも他人に言うまでもない、でも気になる、自分のなかではめちゃくちゃ気になる、ずっとめちゃくちゃ気になっていた、それを書いている人がいる、わっわあああーーーーーーとなりました。心地よく抽象的な絵とあまりに具体的な言葉。「生活者」三好さんによる、「絵と言葉」の組み合わせを堪能してほしいです。(担当:野崎)
工藤律子さん ルポ「人のつながり、命のつながり パンデミック下のスペインより」
工藤律子さんは、スペイン語圏を中心にして、市民運動、貧困問題、移民などを取材されてきました。『ちゃぶ台』が「生活者のための総合雑誌」であるならば、遠い場所の生活者たちが今どんな景色のなかで生きているかを感じることのできるページがあればいいなと思い、ルポルタージュをご依頼しました。
既存のシステムからこぼれ落ちるものや、制度では対処しきれない困難に自分たち自身で向き合おうと、地域社会、協同組合、学校、高齢者集合住宅といった場で長年にわたって「つながり」を育んできたスペインの人たち。コロナ禍ではどんなふうに試行錯誤し、生きていくためには何が大切だと実感したのか? 私たちの日常につながる「世界の今」です。(担当:角)
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『ちゃぶ台8』は、11月26日(金)からリアル書店先行発売です! 引き続き、ミシマガ上で見どころをレポートさせていただく予定です。ぜひ、発刊をお楽しみにお待ちくださいませ!