第33回
編集部が『ちゃぶ台10』をあつあつに語る(3)
2022.12.13更新
「わ、黄色い!!!」
『ちゃぶ台10』の見本が届いたときの自由が丘メンバーたちの第一声です。
目にするだけで元気が湧いてくるようなイエロー。
そして、ネコたちのイラストに見入ってしまいます。家の造り、ネコたちの表情、あれこれの生活雑貨・・・。今号では、満を持してしてこの方に表紙絵をお願いしました! 発表はのちほど・・・。
もちろん色校正で色味の確認はしているのですが、他の本にもまして、仕上がってみないと実物の雰囲気をつかみきれないのが、この『ちゃぶ台』なのです。
そしていつも、色校正で見ていたよりも数段階パワーアップしたエネルギーを、実物からは感じます。
(奥が色校。右手前が完成品)
発売日の前日には、本号では「土と私のあいだ」と題したインタビューでご登場くださっている、周防大島の宮田正樹ご夫妻から採れたての大きなカブが届き、カブのパワーと『ちゃぶ台10』の黄色のパワーが炸裂する、こんな写真も撮影したのでした。
「編集部が『ちゃぶ台10』をあつあつに語る」の3回目は、そんな装丁に着目して、リニューアルした『ちゃぶ台6』以降の表紙デザインを振り返りつつお伝えしたいと思います。(第1回、編集長ミシマが語るちゃぶ台への思いはこちら。第2回、ジャンルを横断する多様な読み物たちの紹介はこちら)
まずはじめに結論めいた話になるのですが、一番お伝えしたいのは、デザイナーの漆原悠一さんが、毎回、攻めるデザインをし続けてくださっているということです。
表紙だけではなく本文も含めて、雑誌のデザインといえば基本的には、ベースとなるフォーマットを決めて、毎号、イラストなどのあしらいを差し替える、ということが多いと思います。ところが『ちゃぶ台』の場合、「ちゃぶ台」という書体と判型以外、メインビジュアルから表紙まわりと本文見出しのテキストの書体(漆原さんのオリジナルである確率高し!)まで、思い切り変わるのです。
編集チームももちろん、表紙に関してのアイディアや意見は出すのですが、途中からは漆原さんの中で発酵する期間となり、そのあとで出てくる最終案を見るときには、いつもプレゼントをもらったような感覚になり、雑誌完成に向けて、編集チームのギアがマックスになるのでした。
・・・ついつい長くなりましたが、それでは時系列で振り返ります!
『ちゃぶ台6』、誌上初めて、写真が表紙に!!
この号から『ちゃぶ台』の装丁デザインを担当くださることになった漆原さん。それまでにも『おなみだぽいぽい』など、何冊かの書籍の装丁でお世話になっていたものの、どんな雑誌になっていくのか、漆原さんも編集チーム一同も、探り探り。新型コロナによる緊急事態宣言などでヒリヒリする状況のなか、「非常時代を明るく生きる」と謳った特集の表紙としてあがってきたのは・・・齋藤陽道さんの、この写真、しかも、この入り方!!
『ちゃぶ台』に新しい風が吹いた瞬間でした。
『ちゃぶ台7』、「イメージがあるんです」
半年に1冊刊行となってから最初の号で、思いのほか、制作の時間がない! 表紙に写真や絵を入れるのであれば、早めに依頼しないといけないところですが、zoom打合せをしていると「ちょっと、イメージがあるんです」と言いながら、具体的な固有名詞をあげない漆原さん。そうしてでてきたのは・・・まさに「ふれて、もれて、すくわれている」アートワークでした。
『ちゃぶ台8』、雑誌もひっくり返った!
ミシマ社創業15周年記念号となったこの号の特集は、「さびしい」が、ひっくり返る。『ちゃぶ台2』以降、毎号「ギャグマンガ家山陰移住ストーリー」を連載くださっている榎本俊二さん、超ご多忙のなか、連載に加えて表紙用の漫画を描き下ろしていただくというのは現実的に可能なことなのかどうか、不安に思いながらもご依頼をしたところ、ご快諾! 想像もしていなかった「ちゃぶ台返し」をしてくださいました。そして。デザインではさらに、裏表紙でその漫画自体をひっくり返すという新しい技が展開。たまに、上下さかさまに本を開いてしまうのはご愛嬌です。
『ちゃぶ台8 ミシマ社創業15周年記念号 特集:「さびしい」が、ひっくり返る』
『ちゃぶ台9』、ゴールデンな組み合わせ、再び。
この号の特集は、ちゃぶ台にありそうでなかった、書店さんの特集。しかも、同じ年に発刊となった平川克美さんの『共有地をつくる』からの展開で、「共有地としての書店」を営業メンバーが取材しました。だから表紙も、具体的すぎず、抽象的すぎず、そのバランスを考えると・・・「後藤美月さん!」と漆原さんとの打合せで即決。後藤美月さんの『おなみだぽいぽい』は、ミシマ社と漆原さんが初めてご一緒したお仕事でもあり、後藤さんと漆原さんはそれ以外でもご縁のある、ゴールデンな組み合わせなのです。そして、表紙まわりのテキストは、ほぼすべて手書きであることにも、ご注目ください。
『ちゃぶ台10』、満を持して益田ミリさん。
「ミシマ社は雑誌は出さない」と宣言していた三島が、「雑誌をつくる」と見事なちゃぶ台返しをして創刊となった『ちゃぶ台』が、10号の節目を迎えたというのは、とてもとても感慨深いです。その節目の10号の特集が「母語ボゴボゴ、土っ!」。第1回の記事にもありましたが、これまでにも増して、生き物のような雑誌ができあがったというのは、『ちゃぶ台』らしい成り行きだと思います。
そしてその表紙の絵は、創刊号の巻頭にエッセイを寄稿いただいたことに始まり、10号すべてに登場いただいている、益田ミリさんに、満を持してお願いすることに。そして届いた絵にはなんと、生活者ならぬ生活ネコたちが!!
おもての表紙では、各自思い思いのスタイルで、ちゃぶ台を囲んでいます。そして裏返すと裏表紙では、ちゃぶ台を庭に集めての宴会の準備が始まっています。2階のちゃぶ台を1階に下ろすやり方がかなり大胆。下にいる本好きと思われる白ネコ、大丈夫でしょうか・・・。
なんと、こちらの装画の原画を、今週末からの展示にてご覧いただけます!
大阪市にある「本」のお店スタントンさんで、12/16(金)より、「益田ミリ『東京あたふた族』エッセイのことば展」を開催いたします。本展示は、益田ミリさんのエッセイ集『東京あたふた族』(2022年11月刊)の刊行を記念して、全国を巡回する予定です。この大阪会場に、『ちゃぶ台10』の装画がやってきます! ことばと絵の両方にゆっくりと触れていただき、益田ミリさんの作品世界を味わっていただけたらうれしいです。
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10号の発刊を記念して、全国40店近くの本屋さんで、全号を展開するフェアも開催くださっています。装丁も、そしてもちろん中身も、ぜひお手に取ってじっくり見てみてくださいませ!
(ジュンク堂書店 名古屋店さんでの展開の様子)