第38回
『ちゃぶ台12』の特集発表!
2023.11.11更新
こんにちは。編集班のスミです。
そろそろ半年に一度のあの時期がやってまいりました。
12月上旬、生活者のための総合雑誌「ちゃぶ台」の最新号、『ちゃぶ台12』を刊行します!
「ちゃぶ台」はこれまで、創刊号の「移住×仕事」号以降、さまざまな特集を組んできました。たとえば、「教育×地元」「宗教×政治」「非常時代を明るく生きる」「ふれる、もれる、すくわれる」「自分の中にぼけを持て」などなど。そのときごとに、編集部が「これだ!」あるいは「これかも・・・?」と直感的に思った言葉を掲げ、気になる場所を取材したり、著者の方にインタビューや寄稿を依頼したりして、いろいろな切り口から問いを探るように雑誌をつくってきました。
そんな本誌が次号で掲げる特集は、こちら!
・・・編集長ミシマによる書、お読みになれましたでしょうか・・・?
次号は、「捨てない、できるだけ」を特集します!
この一冊に込める思いをミシマが綴った「巻頭言」を、全文公開いたします。
捨てない、できるだけ
ほぼ毎号、特集を決めた直後には、この巻頭文を書き終えている。だが、今号はぜんぜん進まない。特集タイトルの「捨てない」は早々に決定したものの、自ら掲げた言葉に苦しんでいる。
なぜか。理由は明らかだ。捨てているからである。
家では、週に二度の燃えるゴミの収集日に三〇リットル分のゴミ袋に満杯のゴミを詰め、週一度のプラスチックゴミの日も袋はいっぱい。仕事では出荷不能となった書籍を断裁する。自分の足元を見れば、捨てない生活など不可能に思えてならない。「できるだけ」を付けたのは、わが心のうしろめたさ故だろう。
それでも、「捨てない、できるだけ」を特集しようと思った。
持続可能とか地球環境とか、大きな題目を掲げるまでもない。地球の資源を人間の都合だけで消費し尽くし、循環の流れを妨げる。そうした生活に別れを告げないといけないのは当然だ。今あるものを大切にする、大量生産大量消費を見直す。これらはずっと言われつづけているのに、大きく改善したようには思えない。なにより自分自身の日々のなかで。
こう考えたとき、まずは自社でできることからやろうと考えた。それで「捨てないミシマ社」というレーベルを立ち上げることにした。断裁対象となっていた再出荷不能の傷んだ書籍ばかりを集めて販売しようという試みだ。「捨てない、できるだけ」の実践である。
とはいえ、断裁する本はゼロにはならない。返品の過程で、「少し傷んでます」というレベルを越えて、折れたり汚れたりした本たちも出る。それに、そもそも、本をつくる過程でこそ、大量の廃棄物が出るのだ。今回、この特集を進めるなかで、あらためて知った。
きっと、まずは自分たちの関わりのあるところから、ちゃんと知ることから始めるしかない。そして、「捨てない」という選択肢だけでなく、「何を、どう捨てる」かも重要な気がしている。メーカーとしては、何を何でつくるか。余ったり、戻ってきた商品をどうするか、をもっともっと考えなければいけない。
知る、考える、実行する。うまくいかなかったことを改善する。そのささやかな行為の積み重ねが、九回裏逆転満塁ホームランを生む。とは限らないが、それからしか逆転が起きないのは確かなのだ。
本誌編集長 三島邦弘
ミシマ社は今、「捨てないミシマ社」という新レーベルを準備中です。日々の仕事のなかでできることに取り組んでいくためにも、まずは「捨てる」ということについて、この社会が直面する問題や、最前線の実践、足元の「本づくり」の現状を、しっかり知りたい。そうした思いでこの号を企画しました。
(「捨てないミシマ社」の構想については、ぜひこちらもあわせてお読みください。)
その内容の一部をご紹介します!
①藤原辰史さんインタビュー「九回裏の「捨てる」考」
インタビューの様子。右が藤原辰史さん。
そもそも今、この社会で、私たちがしている「捨てる」ってなんだろう?
食糧廃棄、環境破壊、腐敗や分解・・・といったテーマを考え抜いてこられた、歴史学者の藤原辰史さんに、まずお話を伺うことにしました。
今の社会を「九回の裏」とたとえる藤原さん。試合終了が目前に迫っているかもしれない(!)なかで、私たちはどう生活し、仕事していく?
②土井善晴先生と、上勝町ゼロ・ウェイストセンターを訪問!
上勝町ゼロ・ウェイストセンターのゴミステーション
町をあげて「ごみゼロ」を目指し、リサイクル率約80%を達成する徳島県上勝町を、料理研究家の土井善晴先生と訪問しました。
「ゼロ・ウェイスト」ってどういう意味? 日本最先端のごみ処理施設「ゼロ・ウェイストセンター」は、いったいどんな場所?
③平尾剛さん×中野遼太郎さん対談「下手でも『楽しい』を捨てない」
大反響の新刊『スポーツ3.0』。著者の平尾さんは、スポーツを心から、健やかに楽しめる人を、社会にもっと増やしたいと訴えています。
その大きな支えになったのが、元プロサッカー選手の中野遼太郎さんの言葉でした。中野さんは、日本にサッカー文化が根づかないのは、「めっちゃ楽しそうにサッカーをする、死ぬほどサッカーが下手なおっさん」がいないからではないか、と指摘しています。
下手な人やできない人を切り捨てない、これからの競技や指導のあり方とは? 生活者のための、まったく新しいスポーツ論です!
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ほかにも、おもしろい読み物をたくさん掲載予定です。
近日中に、装丁デザインや目次もご紹介いたします。どうぞお楽しみに!