第42回
生まれたて! 新生の「ちゃぶ台」をご紹介します
2024.10.23更新
こんにちは。ちゃぶ台編集部員のスミです。
いよいよ明日、『ちゃぶ台13』が発売日を迎えます!
『ちゃぶ台13 特集:三十年後』
先日実物ができあがったのですが、手に取った瞬間、雑誌の内側から真新しい光のようなものがじんわり漏れ出てくるのを感じたのでした。
それもそのはず。今回のちゃぶ台では、いろいろと新しいことが起こっているのです!
[新しいこと1]なかなか決まらなかった特集
今号の特集テーマは、「三十年後」です。
これまで「捨てない、できるだけ」「自分の中にぼけを持て」「母語ボゴボゴ、土っ!」など、編集部がそのとき「これを探りたい!」と直感したテーマを掲げてきましたが、今号の企画会議では、そのテーマがなかなか決まりませんでした。
災害や戦争、SNSの議論など、日々流れていく情報に触れると、不安ばかりが先行する。そんななかで、いったい私たちは何をどう考えていけばいいのか・・・?
編集メンバー4人が京都オフィスの和室でさんざん悩み、いつになく沈黙した末に、数時間かけて突如たどり着いたのが、「三十年後」という言葉でした。
「今」「目の前」を凝視するというより、ちょっと先の未来に思いを馳せて雑誌を作ってみるのはどうだろうか? すると、シンプルな「三十年後」という言葉が、頭と心にすこし余白を作ってくれるように感じられたのでした。
こうして今号の制作がキックオフしました。
(特集に寄せて、編集長のミシマが綴った巻頭文をこちらからお読みいただけます。)
『ちゃぶ台13』より 巻頭の松村圭一郎さんインタビュー
雑誌づくりがはじまり、まず編集部は、人類学者の松村圭一郎さんにお話を聞くことにしました。
ちなみに、松村さんと編集長ミシマは同い年で、大学時代の同級生。「30年前って何してたっけ?・・・おれたち浪人生や!」という、まさに時の流れを体感するやりとりからインタビューがはじまったのは、ここだけの話です。
「三十年後」を考える方法論が、人類学という学問のなかにはあるんじゃないか? そんな思いで企画したインタビューが、今号の大きな柱になりました。遠くの土地から考えてみる、数十年前の過去に立ち返ることで今がはじめて見えてくる、といった松村さんのお話を聞くことで、本誌の向かう方向も自然と見えてきたように思います。
[新しいこと2]時間をゆるめて、生きのびる
「三十年後」を特集に掲げた直後、本誌の刊行ペースを、これまでの半年に1度から、1年に1度に変更することを決めました。
特集に込めた「時間の幅を広くとる」「時間の速度をゆっくりに」という思いを、実際の雑誌づくりで実践するためです。
その結果、制作期間がこれまでより半年ほど長くなり、オンラインの予定だった取材を現地で行ったり、装丁の方向性についてデザイナーの漆原悠一さん(tento)と話し合いを重ねたりと、丁寧に一誌を編みました。できあがった雑誌をしっかりと届けるべく、本屋さんへの営業にも時間をかけました。
雑誌冬の時代ともいわれる今、時の流れをゆるめるという、これからの時代に欠かせない行動基準を実践して生き残ることをめざす、渾身の挑戦でもあります。
[新しいこと3]30年後のデザイン
そうして生まれた装丁にも、新しさがいっぱいです!
装画は、ミロコマチコさんに描き下ろしていただきました。
絵本『みえないりゅう』のように、大地や生命など、長い長い時間をかけて受け継がれていくものの力をずっと表現してこられたミロコさん。「三十年後」というテーマをお伝えして、こちらの装画をいただいたとき、編集部は感激に包まれました。
また、雑誌全体のデザインも、今回はすこし違った印象になっていると思います。
これまでは7~8種類の本文用紙を使うこともありましたが、今回はぐっと減らして4種類に。白・銀・グレーが基調のすっきりとした色合いです。
紙だけではなく、インクの色や目次、扉絵なども、漆原さんにひとつひとつデザインいただき、静かな温かさのある、ゆったりとテキストや作品を味わえる誌面になっています。
「30年後のデザインをお願いします!」という突然のお願いを受けとめ、実現いただいた今回の装丁。実際にみて味わっていただけたらうれしいです。
[新しいこと4]今更ながらの気づき
誌面の構成も、すっきりとした形に。
これまでの本誌は、いろいろな読み物が縦横無尽に(?)並ぶかたちでしたが、「も、もうすこしわかりやすくしてもいいのでは・・・?」という編集部の今更ながらの気づきから、今回は「特集」「ちゃぶ台の中の周防大島」「連載」というカテゴリー枠をつくり、枠ごとに読み物を並べて掲載しています。
「特集」には、書き下ろしエッセイを6本つづけて掲載。
万城目学さん、土井善晴さん、佐藤ゆき乃さん、上田誠さん、白川密成さん、猪瀬浩平さん(掲載順)という錚々たる著者の方々に、「特集は『三十年後』です」とだけお伝えして、執筆いただきました。
地球のこと、宗教のこと、年齢のこと、仕事や組織をつづけるということ・・・読み物ごとにまったく別の「三十年後」があり、多様な扉がどんどん開いていく楽しさがたまりません! つづけて読むことで、おもしろさがさらに広がること、まちがいありません。
また、「ちゃぶ台の中の周防大島」という枠も出現! カテゴリ名が、島の名前です。
ちゃぶ台は、2015年にミシマがはじめて周防大島を訪れて衝撃を受け、「ここで起きていることをいち早く伝えたい」という熱とともに創刊しました。以来、中村明珍さん、内田健太郎さん、宮田正樹さんなど、島で暮らす方々には毎号登場いただいています。
生命力あふれる周防大島からの言葉を、ぜひ巻頭の松村さんインタビュー「日本の最先端は周防大島にあり」とあわせて味わってください。「最先端」の島の風を体感いただけるはずです。
[新しいこと5]もう・・・最高!な方々が初登場
最後は、ちゃぶ台初登場の著者をご紹介します。
●万城目学さん「来たるべき時代」
「特集」コーナーは、大人気作家の万城目さんのエッセイから!!
時間がびゅんっ!と飛ぶような、壮大なタイムトリップを味わってください。
私はこのエッセイを読んだだけで、自分のなかの時間軸がぐらんぐらんと揺さぶられ、押し広げられ、「今」をちょっぴり愉快に眺める余裕ができました。
●佐藤ゆき乃さん「永眠のためのアイスクリーム」
25歳の佐藤ゆき乃さんが、「未来」に抱く気持ちを等身大で綴ったエッセイです。
佐藤さんと年齢の近い私は、「永眠のためのアイスクリーム」という言葉に込められた人生への期待や不安がひりひりと身に迫り、今の自分の大切な気持ちを言葉にしてもらったと感じました。明日のことすらよく見えない人生を、小さく前に進んで行くための支えになっています。
●三浦豊さん×宮田正樹さん「森と土を愛してやまない二人が語る『三十年後』」
もう・・・最高の、地球の宝物のような対談です。
森の案内人として全国の3000の森を歩いてきた三浦さんと、周防大島で自然農を営む宮田さんの言葉を読むと、大きな大きなものに包まれます。お二人の森や土との接し方は、私の想像をはるかに超えていて、心身がほぐれ、自我が小さくなって、頭と心が適切なサイズに戻るような感覚になりました。
30年後には地球環境がさらに壊れているかもしれず、明るい気持ちにはなかなかなれませんが、まずはお二人の言葉にじっくり触れていただけたと、心から願っています。
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『ちゃぶ台13 特集:三十年後』は、いよいよ明日発刊です! 新しいことづくめの新生ちゃぶ台を、お楽しみいただけたら嬉しいです。