仕事の壁のくぐり抜け方

第1回

36年の会社員経験から、今、思うこと

2024.11.04更新

 皆さまこんにちは。ライターの川島蓉子と申します。1961年生まれの62歳。小さい頃から服が大好きで、日々、カラフルな服(ちょっとチンドン屋さんのようかも)を自己流でコーディネートするのを楽しんできました。
 フリーライターとして、物書きを生業としながら、企業とブランドにまつわるプロジェクトを手がけています。
 
 最初からフリーだったわけではありません。4年前までは、大きな会社で"会社員"をやっていました。大学を卒業して就職した会社に居つき、一度も転職することなく、36年も働いてきたのです。
 
「ファッションが好き、ファッションにまつわる仕事をしたい」という一心から入社した会社でした。世に名前が通っているファッションの会社で働ける――入社前は「どんなキャリアが築けるだろう」とワクワクしたのを覚えています。
 ところが入社し、自分の甘さを思い知ることになりました。当時は男性と女性の区別がはっきりとあった時代。男性社員と女性社員の待遇格差にはじまり、上司や同僚との人間関係、やりたいことと利益のバランスなど、仕事にまつわる何やかやは、まさに悩みだらけ・・・。「女性だけ制服を着なくてはならないのはなぜ?」「子どもを産んで仕事を続けるのはよくないこと?」「仕事は辛そうにやらなければならない。おもしろがってはいけないの?」「新しいことをやるのは、会社に迷惑をかけることなの?」。さまざまな壁に突き当たりました。

 一方で私の年代は、会社と女性の関係が変わっていく先頭に位置しています。1985年に男女雇用機会均等法が、1991年に育児休業法が施行されたのと、私の結婚・出産の時期は、ほぼ重なっていたのです。その波にのった私は、結婚して仕事を続けた第一号、子どもを産んだ第一号、年子で産んだ第一号、管理職から役員になった第一号など、良くも悪くも一番手を担ってきました。最初だから、会社もどうしていいかわからない。私もどこまで主張していいかわからない。わからない同士が何とか折り合いをつけ、やってきたのです。

 しかも私は、小さい頃から規則に縛られるのが嫌いで、新しいことやおもしろいことをやるのが大好き――障害があっても、その向こうにある景色を見てみたい、怖さより好奇心が勝ってしまうタイプです。小学生の頃、有刺鉄線が張ってある空き地に何があるか知りたくなり、無理やりくぐり抜けたら、鉄線に引っかかって傷だらけになって母に叱られたなんてこともありました。
 だから、会社でも新しいことをやってみたいと提案しては撃沈続き。「何だかハズレものかも」「会社員の常識がないのかも」と不安を感じたことは数知れず――ただ会社は、そんな私を時に受け入れ、新しいことやおもしろいことをやらせてくれました。
 そして60歳を前に「会社でやれることはやった」と心の区切りがついたので、会社を辞めることにしたのです。いざフリーになってみると、何もかも自由だから、嬉しいこと、楽しいことがある一方、悩みがなくなったかというとそうでもありませんでした。

 そんな私が、今まで歩いてきた、そしてこれから歩いていこうとする道について書いてみました。会社で何かの「壁」に囲まれ、困ったり悩んだりしている方々に向け、ちょっとしたヒントや助けになってくれたら幸いです。どうぞよろしくお願いします。

川島 蓉子

川島 蓉子
(かわしま・ようこ)

ジャーナリスト。1961年、新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科終了。伊藤忠ファッションシステム株式会社にて、さまざまな分野の商品開発・ブランド開発に携わり、2021年退社。フリーランスとして、伊藤忠商事をはじめ、企業のブランドを強くするプロジェクトにかかわる。一方、ジャーナリストとして、連載原稿や書籍を手がけており、著書に『ビームス戦略』『伊勢丹な人々』『すいません、ほぼ日の経営』などがある。

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