電子書籍第36弾、5月新刊『ピッツァ職人』&勢古浩爾さんの書籍をリリース!
2023.06.12更新
こんにちは。編集チームのスミです。
今月は、井川直子さんの新刊『ピッツァ職人』と、勢古浩爾さんの『ウソつきの国』『アマチュア論。』の電子書籍をリリースします。
本日のミシマガでは、私スミがこの3冊の魅力をご紹介いたします!
ピッツァ職人
「ピザ」しかなかった国で、「ピッツァ」を焼く――
本場ナポリの薫陶。庶民のソウルフードを焼く誇り。生地と窯に没頭する境地。
職人たちの生き様に、12年越しで迫った、圧巻のノンフィクション。何がやりたいのかわからない、と生きてきた私は、そっち側の人たちはきっと特別なのだと思っていた。だけど中村は、「やりたいこと」を一度失った人でもある。真っ暗な場所で、彼はただ、微かに振れた自分の心に従った。(略)さらには取材を重ねるうち、本書に登場する職人のほとんどが、そうした心の振れを見過ごさなかった人たちだと知った。出合いとは、はじめから運命的な顔をしているわけじゃない。逆に言えば、人は誰でも特別になれる、ということだ。(「あとがき」より)
5月の新刊は、井川直子さんによるノンフィクションです。
これまでミシマ社から『シェフを「つづける」ということ』『昭和の店に惹かれる理由』を上梓され、丁寧な取材をもとに、料理人たちの仕事と生き様を描いてこられた井川さん。
今回のテーマは、日本のナポリピッツァの職人たちです。
主人公の中村拓巳さんは世界最高峰のピッツァ職人。16歳の時に食べたナポリピッツァに魅せられ、18歳で単身、本場ナポリに飛び込んで修行しました。
本書の最大の魅力のひとつは、登場する職人たちの生き様と、そのドラマを活写する井川さんの文体です。次から次へと、エネルギーと人間味にあふれた職人たちが登場し、私はわくわくしながらページをめくってしまいました。ピッツァの焼ける匂い、窯の熱、職人たちの汗が、文字のあいだから伝わってきます。
「ピッツァしかない」というほど夢中になれるものに出会った職人たちは、しかし私(たち)とはまったく別の、特別な存在なのではなく、もがきつづけるなかで「これかもしれない」と感じたものを見逃さなかった人たちです。歩む道を自ら摑みとり、まっすぐに向き合う彼らの姿から、自分の心次第で世界は大きく開けていくのだ、と勇気をもらいました。
そしてもうひとつ。本書のおもな舞台が、日本と、イタリアのナポリであることも大きな魅力です。
ナポリの文化、気候、人びとの言葉や身ぶりについて読むと、まさに異郷の地の風が自分の中に吹き込んでくるよう。ふだんとはちがう感覚が活性化し、紀行文のように、遠くまで読書の旅を楽しむことができます。
勢古浩爾さんの書籍を2冊同時リリース
またこのたび、ミシマ社から刊行されている勢古浩爾さんの『ウソつきの国』『アマチュア論。』を、2冊同時に電子書籍化しました。
ウソつきの国
首相も大統領も、IT、ケータイ会社も・・・ウソばっかり!
「言葉を舐めてませんか?」この時代の「まっとうさ」を愚直に問い直す。
上場ITメディア企業、通販会社、浮気男、新聞、週刊誌、テレビ、世界中の政治家たち・・・
ウソつきの国、ウソつき会社、ウソつきたちが急増中!?
地に足のついた思考を求めて、著者の声に耳を傾けよう!
アマチュア論。
自称「オレってプロ」にロクな奴はいない!
現代の日本人に必要なのは、「武士道」でもない、「プロ意識」でもない、「アマチュア精神」ではないのか。企業の倫理も個人の良心ももはや壊滅的に思えてしまう昨今、こんな時代だからこそ、あえて訴えたい。「まともに生きよ」と。
「ふつうの人」の生き方を問い続けてきた著者が、全身全霊を傾けて書き下ろした一冊。
勢古さんのこの二冊の本に通底しているのは、「ふつうにまっとうに生きよう」という呼びかけです。
私は、「なぜウソをつくと、自分の中にいやな感じが生まれるんだろうか」「プロ、という言葉を、私はアタマだけで考えすぎていたな・・・」と、わが身をふり返りながら読書しました。
特に私にとってこの二冊は、どのように仕事し、生活するか、ということを考えるうえで、ああ、二十代の今読めてよかった! と思うような言葉の宝庫。
ひとつの価値や考えに寄りかかりすぎたり、熱狂したりするのではなく、複雑な現実のなかでできるだけ自分の頭で考え、言葉を選ぶこと、そして、誠実に人と接し、仕事をすることの大切さが、表現を変えながら一貫して伝わってきます。
『アマチュア論。』には、「格言」というかたちで、「アマチュア」として生きていくための26のフレーズも登場します。
ふつうにまっとうに生きることは楽ではなく、責任や覚悟が伴い、実はとても難しい(と私は思います)。けれど同時に、人間的な規範をないがしろにせず、成長していくための基本的な心構えに触れることは、とても気持ちがいいことでもあります。
大変でキツイことだらけの社会のなかでなんとか立っていられるだけの足腰をもつ道を、勢古さんの本はピリッと辛く、抜群におもしろく、そしてまっすぐに教えてくれます。
本日は『ピッツァ職人』『ウソつきの国』『アマチュア論。』をご紹介しました。
これからも、電子書籍、ライブ配信、アーカイブ動画、そしてもちろん紙の本。さまざまな形で「おもしろい!」をお届けしてまいります! 来月も、どうぞお楽しみに。