第1回
名久井直子さんインタビュー 「この本、味出てなんぼです」(2)
2018.05.22更新
本日2018年5月22日に発売となった「手売りブックス」。表紙の鮮やかな色や質感、一つ一つ手作業で貼られたシール・・・これまで見たことのない距離感(手売り感)で読者の皆さんのもとへ届くはずです!
このむずかしい難題に応えてくださったのが、デザイナーの名久井直子さんです。昨日の記事では、「書店ごとにどんどん地元感を出していってください」「自前のシールを貼ったりして楽しんでください」と名久井さんからの心強いお言葉をいただきました。後半の今日は、書店員さんにおすすめコメントを書いていただく予定の「手売りシール」を名久井さんと本シリーズ考案者である三島が作ってみた様子をお伝えします。
(聞き手:三島邦弘、構成・写真:野崎敬乃)
書くのも貼るのも楽しい「手売りシール」
―― ぜひ名久井さんも「手売りシール」書いてみてください!
(手売りシール)
名久井 でーきたっ! これ楽しいですね〜。
―― いや〜おもしろいなあ。貼っていくのも楽しいですよね。こんなシリーズというか、こんな本自体が初めてです。
名久井 人の書いたものを読むのも楽しいですね。
(左:名久井さん作成 右:三島作成)
―― あ、ちょっと貼り換えてみようかな。このシール、はがせるのがいいですよね。よ〜し、こんな感じでどうでしょう。
名久井 いい! 全然ちがう。本がいきいきしてきましたね。
―― 貼り方ひとつでこんなにデザインが変わるんですね。デザインに参加できるなんて、楽しい!
(貼り換え 前)
(貼り換え 後)
折れも汚れも味わって
―― 名久井さんから読者の方々へのメッセージがあればお願いします!
名久井 見てわかるように、守られてないむき出しの本なので、角が丸くなってきたりとか、表紙が折れてきたりとか、それを気にせず、読めればいいぐらいの感じで楽しんでほしいです。なんなら感想を裏に書いておいてくれてもいいです。
―― 大胆に貼ってくれていいですよね
名久井 全ては味です。前向きに捉えてください。
―― 本当にそうですよね、今は商品という軸しかないので、その人とその本だけの関係みたいなものがもっといろいろあってもいいなと思っています。
名久井 なんかちょっと不思議で、本当はこの簡素で中身だけ売る感じというのは電子書籍に近い感じがするんですけども、外側は真逆で、もう紙の単行本みたいなものを追い越して物質になってしまっている感じで不思議ですよね。
―― いや〜ほんとそうですね。
名久井 このシリーズは続くんですよね?
―― 続きます。基本年に1回、今回は5冊しましたけれども、3冊から5冊を毎年同時刊行というかたちで考えています。
名久井 いいですね、農作物みたいで。
―― そろそろ実りの時期かな、みたいな。
農作物で思い出しましたが、この表紙自体、書籍用の紙じゃないですしね。反り返りやすいのも、農作物がどんどん変化するイメージでとらえてもらえると嬉しいです。そういうところも楽しんでいただけたら、と。
名久井 味がでるのを恐れずに。なんならお風呂で読んでぼよぼよになってくれてもいいです。
―― 手垢が似合う本たちです。
名久井直子さんから書店員さんへご提案2
1.ちゅうちょなく、カスタマイズしてください
2.たとえば、オリジナルカバーをつけて売るのもOK
3.自前のシールも貼ってください。どんどん地元感を!
4.手売りシールは大胆に貼りましょう。はみ出しOK!
5.手売りシールは、はがして貼り直しできますよ!
(終)
プロフィール
名久井直子(なくい・なおこ)
ブックデザイナー。1976年岩手県生まれ。武蔵野美術大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2005年独立。ブックデザインを中心に紙まわりの仕事を手がける。第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。最近の仕事に、『ウィステリアと三人の女たち』(川上未映子著)、『水中翼船炎上中』(穂村弘著)、『口笛の上手な白雪姫』(小川洋子著)など。著書に『紙ものづくりの現場から』(グラフィック社編集部)など。