第8回
教えてナカムラさん! 採用のこと、仕事のこと(1)
2018.12.23更新
『生きるように働く』ナカムラケンタ(ミシマ社)
『生きるように働く』の著者であるナカムラケンタさんは、求人サイト「日本仕事百貨」を運営されています。そして、この度その日本仕事百貨で新しいスタッフを募集することにしたミシマ社。12月5日のお昼にその求人ページのための取材で、ミシマ社メンバーが、ナカムラさんからインタビューを受けたのでした。その夜には今度はミシマ社メンバーがナカムラさんへ逆インタビューする「教えてナカムラさん! 採用のこと、仕事のこと」というイベントをご近所のかもがわカフェさんで開催。今回のミシマガでは、そのイベントの様子をお届けします。「これからの働き方・生き方」を前向きに考えていきたい方々へ。1日目は、ミシマ社と採用の話、2日目はお客さんも交えてのトークをどうぞ!
なぜ、日本仕事百貨で採用を?
三島 9月にミシマ社から発刊した『生きるように働く』の著者、ナカムラケンタさんです。よろしくお願いします!
ナカムラ こんばんは。「日本仕事百貨」という求人サイトや、「popcorn」という誰でも映画館が作れるサービスをやっているナカムラケンタです。よろしくお願いします。三島さんと初めて会ったのは10年くらい前で、何かのご縁で求人をさせていただいたんですよね。
三島 そうです。日本仕事百貨さんで「営業事務アルバイト」を募集したんです。それをみて入ってきたのが、自由が丘で今編集をやっている星野で。この『生きるように働く』も星野が編集しました。
ナカムラ そうでしたね。証券会社を辞めて、ミシマ社に入るという。そして今回も募集されるということで。
三島 そうなんです。先日自転車で鴨川を走っていたとき、突然「営業事務・経理のスペシャリストが要る!」って思ったんです。
ナカムラ 突然ですね(笑)。
三島 はい(笑)。それで営業チームリーダーの渡辺と相談したら、「今回はきっと、仕事百貨さんに頼むのがいいと思うんです」と。ミシマ社のスタッフ募集って、基本的には自分たちのホームページにあげるだけだったんですけど、今回はすごく大きな勝負な気がしています。というのもこの10月から13期目に入ってるんですね。
ナカムラ ちょうどひとまわりしたわけですね。
三島 そうです。これまでは、とにかく「おもしろいことやる」に徹してきました。土台づくりより、突っ走ることを優先にしてきた、というか。けど、これからの12年を考えたときに、もう1回、直取引という、僕たちの出版を支えている土台をシステム面から構築していく段階に来ていると感じてまして。
ナカムラ なるほど。それで「営業事務」を。
三島 まず前提の話をすると、ミシマ社は、「直取引」といって、本の卸業である「取次」を通さずに、書店さんと直接やりとりしているんです。多くの出版社は、取次にだけ請求すればいいですし、本屋さんも取次とやりとりすればいい。ですが、僕らは日本全国1000店舗くらいの書店さんに、本や伝票であったり、請求書であったりを毎月お送りしているわけです。
ナカムラ 大変ですね。
三島 そうなんです。うちだけなく、書店さんにも負担がかかっている。でもなぜこんなことをしているのかというと、例えば取次を通すと、本屋さんが注文をしていなくても「配本」といって、本が送られてくることがあったり、逆に希望数の本が届かなかったりもある。つまり、書店に置かれている本は、必ずしも店員さんの「意思」でない可能性もあります。結果、すごい数の本が返品されている。うちの場合は、少なくとも本屋さんの「意思」なく本が置かれることはありません。直接、「熱」を伝えられる「直取引」をするほうが、手間はかかるけれど、読者により届きやすいだろうと考えているんです。
ナカムラ なるほど。
渡辺 実は、私は前職がその取次でして。もちろん取次にもいいところはたくさんあって、出版社と本屋さんのやりとりを楽にしたり、また、発売日に日本全国、どこの書店でも同じ雑誌が買えたりとか、そういうことは取次がないと成り立たなかったんです。でも、戦後の経済が成長しているときはそれでよかったんですけど、そのやり方ではいま完全に行き詰まってしまっている。
三島 そうなんですよ。本の流通も新しい形を考えるタイミングだと思っていて。小さな出版社もいろいろ生まれているのですが、いつもネックになるのがこの流通の部分なんです。本は作れても、届けるときに、実はそこが重要になってくる。
ナカムラ そうなんですね。
三島 ミシマ社も12年経って、これまでのやり方だけでなく、新しい形を考えたい。たとえば通信技術ひとつ取っても、12年前と今では全然違うわけですよ。これから人工知能とか人工生命とか出てくるなかで、そうした科学技術のいいところを取り入れて、直取引の流れをもっとスムーズにしたいです。かつ、それによってより本作り、本を届けることにエネルギーと時間を割けるようにしていきたいなという思いがあります。
ナカムラ なるほど。たしかに今は、いろんなクラウドサービスとか出ているし、もっというと、システムインテグレーターの人とかも、昔よりは少ないコストでやってくれるかもしれないですしね。それにしても、今までそういった営業事務の仕事を、ExcelやAccessを駆使して、人力でやっていたというのがすごいですよ。
三島 僕はExcelも使えないから(笑)。みんなのおかげなんですよ。
渡辺 そう。直取引の職人のような感じで、ミシマ社のなかでガラパゴス的にやってまいりました・・・。
ナカムラ スタッフを募集する必要性がひしひしと伝わってきました。年明けに、「日本仕事百貨」で掲載させていただきますので、もう少々お待ちください!
ナカムラさんからみたミシマ社
ナカムラ 「日本仕事百貨」の取材はだいたい2時間、文字起こしをすると数万文字になったものから、その求人をしている会社のひとつの「根っこ」を探していくんですよ。実は先ほどもミシマ社のスタッフの方に、この求人にあたっての取材をさせていただいたんですけれども、ミシマ社というのは、自分たちが熱をもって「やりたい!」と思ったものをそのまま形にして、そのままの熱で届けるという会社なんだなと感じました。
三島 おお!
ナカムラ 自分たちがやりたいということに貪欲というか、素直というか。そんな感じでやってる会社だなぁと思っていて。だから、年1刊行の雑誌『ちゃぶ台』もやってるし、出版社なのに本屋も始めてみちゃったりだとか。
三島 はい。
ナカムラ この根っこさえ届いていれば、どんなに社長が変なことを言いだしても、「あぁ〜、まぁまぁこうなるよね」みたいな感じで他のメンバーも受け入れられるんですよね。今回の取材だと、ここに熱があるなというのが発見しやすかったので、次は記事にするにあたって、その根っこの解像度を上げていく感じです。
三島 いやぁ、本当におもしろかったです。ミシマ社では、「商品」を作るというよりは、ひとつの生きたものを生み出そうと思っていて。ありとあらゆる活動をそうやってやりたいなと思っています。
ナカムラ 『ちゃぶ台vol.4「発酵×経済」号』ができるまでの話も面白かったです。
三島 そうでしたか(笑)。まあいつもだいたいそうなんですが、今回は僕が突然「菌!」とか言い出すわけです。でも、みんなぽかーん、としている。本当は「菌!」、「OK!」みたいなコミュニケーションが成立したらベストと思ってるんだけど(笑)。
ナカムラ いやいや(笑)。
三島 まあでもなかなかそうはやっぱりいかなくて。それで「菌は飛ぶよね」みたいに、ちょっとずつ具体的に説明していく。
ナカムラ まだわからないです(笑)。
三島 まあそんな感じなんですけれども、「たとえば」っていうのをどんどん繰り返していくわけです。今回の取材でも、求人を見た人が、入社後にすることをイメージできるように、ナカムラさんが上手に持っていっていましたよね。仕掛け屋・長谷川への質問も見事だな、と思いました。
ナカムラ ありがとうございます。ミシマ社には、編集チームと営業チームのほかに、仕掛け屋チームがあるんですよね。仕掛け屋チームというのは、書店に並んでいるPOPやパネルを作るチームだそうで。
三島 そうです。他にも本に挟み込んでいる「ミシマ社通信」を書いたりだとか、とにかくなんでも仕掛けるぜっという感じです。長谷川の仕事は本当にすごくて、出版社という枠を越えて動いているんです。この前も、銭湯の方から「一緒にフェアをやりましょう」って、声がかかってきたり。
ナカムラ 普通の出版社だったらありえないですよね。本がふやけちゃいそうです。
三島 そうですね(笑)。でも本もよく売れたんです。
ナカムラ すごい。
三島 それで、先ほどのインタビューで、ナカムラさんが、「ミシマ社に入る前と入った後で印象はどう変わったか」って長谷川に聞いていましたよね。
ナカムラ そうですね。
三島 それで、長谷川が「けっこう楽しくワイワイやってると思われがちなんですけど、ちゃんとやるとこはやるんだなぁ」みたいな感じで答えていて。その次のナカムラさんの質問で「ハッ」と思ったんです。
ナカムラ そうですか。
三島 「具体的に初めてそれを感じたのは?」って聞いたときに、なるほど! って思って。長谷川は「あるタイトル会議のときに」とそこから具体的な話になったんですけれども、ナカムラさんのパスというか、話の持っていき方がすごいよかったです。
ナカムラ ありがとうございます。