第16回
『ホホホ座の反省文』ついに完成しました。(2)
2019.06.16更新
ミシマ社より、6月の新刊は『ホホホ座の反省文』(山下賢二、松本伸哉 著)をお届けいたします。
そもそもどんな本なの? ということが気になる方、そして山下賢二さんからの発刊記念エッセイ「ダラダラやってよかったと思う」は、昨日の記事をご覧ください。今日のミシマガでは、この本の装丁を担当してくださった「ホホホ座金沢」の中林さん、安本さん、そしてホホホ座座員の一人、加地猛さんにご登場いただきます。まずは、このお二人です。
ホホホ座金沢の反省文
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『ホホホ座の反省文』のデザインをさせていただいたホホホ座金沢店を運営している株式会社トーンのデザイナー、中林と安本です。今回、どんなふうにこの本をデザインしていったかを少しだけ二人の対話でご紹介させていただきます。
中林:最初にホホホ座の本が出るかもって聞いたのは1年くらい前? やったかな。そのときはタイトルが「ホホホ座のやり口」だったから「やり口」だと思ってずっとデザイン考えてたね。
安本:そうそう。
中林:正式に本が出るって聞いた1月頃に僕から松本さんに「デザインしたい!」って連絡したらその後に山下さんから「デザインはどんな感じで考えているの?」って返事が来て、「今の所はどんな感じかはわからないけどお二人の意向をお聞きしながらデザインしていきたい」と伝えて一度京都まで行って直接お話したいと連絡したね。
安本:うん。
中林:そしたら山下さんから「わざわざ来なくても大丈夫ですよ」と返事が来ておおむねデザインをこちらに委ねてくれるという感じで進めることになって。
安本:一応、山下さんから「昭和テイストの書体は使いたいかな〜」っていうのはあったね。その参考の本は『前衛音楽入門』だった。
中林:書体は写植時代から馴染みのあるものを選んだけどレトロになりすぎないように気をつけてレイアウト考えたね。
安本:うん。それから打ち合わせで三島さんと初めてスカイプした時に本のタイトルが変わってて。。。4月ぐらいかな。
中林:いきなり変わってたからびっくりしたね。「反省文」に。デザイン全部やり直しやったね。(笑)
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安本:反省文って聞いてタイトル文字から反省させとく? みたいな感じで話してたよね。こんな風に。(上半身を曲げて頭を下げる。)
中林 そう、そんな感じで進めていったね。今回の装丁は、普段シンプルなデザインをしている僕らがやることで敢えて今までのホホホ座の癖を抜くと言うかこれまでと違うものにした方が幅が広がって面白いのかなと。新しい形をみせた方がホホホ座のつかみ所のない感じが出て良い意味の違和感にならないかなって思ってた。
安本 今までのホホホ座は手書きの良さをうまく使った表現が多めだけど、そう言う良さとは違う方向性もこれまでにない感じがプラスされて良いかなって私も思った。そうすることで、新しい層の人たちにもホホホ座を知ってもらえたらいいなぁ。
中林 でも、本のテーマから見ると今回のようなシンプルなデザインは山下さんたちが言う「単一化され選民的に差別化されていく見せ方や仕上げ方」で、著者のお二人は「そう言うのでいいのか?」と疑問を提示しているのに「清潔と特別」を兼ね備えたシンプルな方向性で進めて良いのかな? と少しモヤモヤした部分も正直あった。実際当初は帯のデザインとかもっとシンプルなレイアウトだったし。そう言う表現を著者のお二人は嫌っているんじゃないかと思っていたから途中でシンプルになり過ぎないほうが良いのかなとか考えたな。
安本 たしかに。。単にシンプルな感じだと流行を追っているだけと勘違いされて、この本でお二人にとって望んでいない方向性に見えてしまう危険があるから京都で言う「さむい」感じになるかもしれない。
だけどこの本で敢えてやってみると言う...。お二人がやらないことでも他者が提案することで受け入れてくれる度量みたいな所は山下さんと松本さんのとても面白くて深い所だと思う。その辺の本心はどうなのか? は置いといて、今回の私たちの役目は「ちゃんと本をデザインする事」というシンプルな目的を自分たちなりにやらせていただいた感じかな。
中林 そうやね。本心はわからないにしても僕らがお二人と話をする時っていつもこの反省文に出てくる加地さんみたいに大抵のことは「ええやん」って言ってくださるよね。そう言う肯定の力ってものづくりにも重要やね。
安本 うん。お二人とも大抵のことは「いいんじゃない」と言ってくれるしやさしい。
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中林 装丁ではヴィジュアル面にあまり時間をかけなかったけど、本を読んでいる時に手の指が邪魔にならないようにとか文章の読みやすさとかレイアウトの機能的な部分はよく話し合ったよね。
安本 色々な本を参考にしていいなと思った所は素直に取り入れた。
中林 うん。参考にした本は、デザイン趣向が強くシンプルなものばかりだったけど基本ベースは山下さん著書の『ガケ書房の頃』から離れないようにいつも机の上に置いてあった。
安本 あと、反省文ってタイトルだから色々ごちゃついていると言い訳している感じがするからなるべく潔い表現がよいと思ってたかな。
中林 あと、作業に関しては、本づくりって僕らの日常やっているグラフィックやパッケージ、広告、web関係とかのクライアントや代理店とのやり取りとちょっと違ったね。エディトリアル関係の仕事もするけど一番違うのは編集者さんがいることかな。クライアントが著者? なのか編集者? 出版社? とにかくみんなで同時に仕上げていく感じ。
安本 チーム戦みたいやった。組版さんもいてとてもお世話になりました。
中林 ギリギリまで攻防戦は続いてたね。デザイン的な修正は方向性に関わるから簡単にはできないことがあるけど、修正にも作り込むために必要な場合があるから本の編集作業はさらに深く作り込むために必要な作業が最後まで続くんやね。
安本 あと、誤字脱字も要注意だからギリギリまで見ないと。。そう言えば色校で山下さんの名前の漢字違ってたね。(怖)
中林 あれは僕が山下さんの名前を小沢健二さんの「健二」にしてしまってた。。賢いの方やよね。見た時ゾッとしたわ。誤字脱字で言えば僕が迷惑かけたような気がするわ。。。こうしてデザインしている間にも著者のお二人は加筆したり編集者は追加と削除、校正を繰り返しながら何回も調整して本を作り上げて行っているんだなぁと今回とても勉強になった。
安本 うん。今回の本づくりは山下さん、松本さんのお二人だけではなく色々な方と一緒にできてとても面白かった。編集された三島さん、野崎さん、ミシマ社のみなさん、組版のみなさん、印刷所のみなさん、ホホホ座各店のみなさん、楽しい機会に参加できてよかったです。ありがとうございました。
中林 僕もとても勉強になりました。本当にありがとうございました。
(終)
ホホホ座金沢のお二人のお話しにつづきまして、ホホホ座結成のミーティングの際「その場にいたから」という理由で、ホホホ座の座員になった、京都のレコード屋100000tの店主・加地猛さんへインタビューをお届けします。
(聞き手・写真:田渕洋二郎)
6回、声に出して笑った
ーー 読んでみて、いかがでしたか?
加地 ほんまおもろかった。6回ハハハっ、て声に出してわろたわ。あと、葛藤がうざいくらいにすごい。これは、もう読みに値する葛藤やね。
ーーありがとうございます。加地さんのインタビューも収録されています。「店を耕す農夫」そして、「ファーマー」という表現が印象的でした。
加地 おう。でもいまは、ファーマーちゃうで。たぶんこれ2年くらい前のインタビューで、あの頃は、毎日忙しかって、ファーマーな気分やったんちゃうかな。とういか、それも農家の方に失礼な話やん。
ーー(笑)。加地さんは、ホホホ座の親戚の方々とは、関わりあるんですか?
加地 ぽんぽんぽんへはイベントで、身元を明かさずに行って、そこで宮沢りえのタオル買うたわ。水で戻すタイプのカッチカチのタオル。乾燥わかめみたいに、水につけたら宮沢りえが出てくるねん。それが1000円だったから、これ安いんちゃうんって。
ーー おお、戻してみてどうでしたか?
加地 まだ、カッチカチのままとってある。
ーー え?
加地 完成図は写真でついてあるから。それで見れるし。それに水つけたら、普通のタオルになるやん。やからカッチカチのまま。
ヤマケンとマツシン
ーー 本のなかで、山下さん、松本さんと3〜4カ月に一度しか会ってないのが意外でした。
加地 ああ、そうなん? 松本さんとかは、もう1年近くおうてへんのちゃうかな。ヤマケンは季節の変わり目に一回って感じ。
ーー 松本さんは、お店に伺ったとき2時間くらいお話ししてくださって。
加地 2時間話すときは、よっぽどひとりの時間が長かったんちゃうかな。たぶん、ひとりでいるときに次知り合いがきたときに話すこといろいろ考えてるんちゃう。
ーー なるほど。
加地 それにしても、松本さんの作文の気合の入りようすごいで。これまで書いてた「ぼんくら日記」とも全然違う。
ーー おお!
加地 マツシンの誕生やなって気がした。これまでの松本さんじゃなくて、マツシン。これでヤマケンとマツシンや。
ーー 山下さんのところでもめちゃ笑ってましたよね。
加地 そうそう。ヤマケンは、身を削っておもしろ文章を書いてくれてて、リスペクトしてる。笑かそうとしている態度って、すごい倫理的だと思う。
ーー 倫理的、というのは?
加地 人が目の前に人が倒れてるって状況のときに、人類愛にあふれていて深い思索をもっている人よりも、笑かしたい人のほうが動きがはやかったりするんじゃないかって思ってんねん。
ーー なるほど。
加地 あと、滅多に笑わないし、言うことも聞かないちょっと手のつけられないやつがいたとして、そいつの前にめちゃおもろいやつが現れたとする。おもろいやつがそいつを笑かした瞬間に、その世界の秩序が変わる瞬間ってあるやん。説得じゃなくて、影響されるというか。そういうやつを動かす、ってなったときにおもろいやつが最強、みたいな。そんな感じ。
意外といい服着てんねん
ーー 実はこのホホホ座の反省文に挟まっている「ミシマ社通信」のミシマンガコーナーに、加地さんのことが書いてあるんですよ。
加地 ほんまや。このころ、スーツ持ってなかってん。なんか最近立て続けに2着もらったんやけど。
ーー 今日来ているTシャツもいい感じですね。
加地 せやろ。好きなバンドで、4人組の「チャイ」っていう女子4人のバンドがあんねんけど、そのこらがコラボしてる人がつくってるやつ。たしか。
ーー へえ。普段はどういうときに買われるんですか。
加地 うーん、普段は買わへん。年末年始だけ休むねんけど、そのときに元旦の日にイオンモールに行って買うかな。ちなみに「プレイボーイ」のセーターもこのときに「これ、ええやん」ってなってん。
ーー おお。
加地 あとは、D_MLL っていう、店からすぐのとこ。年に2回くらいバーゲンがあって、店の前に山積みしてるから、そこで買う。
ーー いい服着てるんですね。
加地 せやろ。もともと10000円くらいする服きてんねん。買ったのは4000円くらいやけど。
いかがでしたでしょうか。本書には、20ページにわたる加地さんへのロングインタビューが掲載されていますので、もっと深く、詳しく知りたい方はぜひお手にとってください!
正式な発売日は来週6月21日(金)ですが、6月15日より下記「ホホホ座」の各店舗では先行発売を開始しました。
ホホホ座浄土寺店
(http://hohohoza.com)
(本)ぽんぽんぽん ホホホ座交野店
(https://www.facebook.com/ponponponbooks/)
ホホホ座三条大橋店
(https://www.hohohoza-sanjo.com)
今治ホホホ座
(https://www.facebook.com/imabarihohoho/)
ホホホ座西田辺
(https://www.hohohoza-nishitanabe.com)
ホホホ座金沢
(https://hohohoza-kanazawa.com)
ホホホ座珈琲大野
(https://coffee-oono.com)
10000t アローントコ
(http://100000t.com)
また、「ミシマ社の本屋さんショップ」(←リニューアルしました!)では予約注文を受け付けております。
編集部からのお知らせ
6月、7月と京都で東京で、ホホホ座イベントが目白押しです。ぜひ足をおはこびください。
【6/16〜30 フェア】ハンズとホホホ
東急ハンズ京都店5周年記念!
フロア1階にて、ホホホ座浄土寺店によるPOP UP SHOPが開催されます。ホホホ座セレクトの本、雑貨などの販売ほか、ホホホ座と東急ハンズ京都店による出版レーベル、ホンズより『京都の音楽家案内+1』山下賢二、『京都が心配』松本伸哉の2冊がハンズ内にて発売。製本ワークショップ(『話したい話』)や浄土寺店・三条大橋店・100000tアローントコ3店によるスタンプラリーも開催。『ホホホ座の反省文』もお買い求めいただけます。
◾️日程:6月16日(日)~6月30日(日)
◾️会場:東急ハンズ京都店
【6/29 イベント】自分を棚に上げずに書くこと 武田砂鉄×山下賢二トークイベント
気配を言語化するライター、武田砂鉄さんと文章を発表するときの覚悟、心構え、責任、自問自答などについて、自分を棚に上げずに書くことに挑戦した本『ホホホ座の反省文』(ミシマ社)の著者、山下さんが色々お話しします。
◾️日時:6月29日(土)開場19:30 開演20:00
◾️場所:ホホホ座浄土寺店1階
◾️出演:武田砂鉄、山下賢二(ホホホ座)
◾️料金:1500円(ホホホ座1階割引券付き)
◾️予約:件名を「棚上げ」とし、お名前・電話番号・人数をご明記の上、1kai@hohohoza.com まで送信下さい。予約電話は、075-741-6501 まで。ホホホ座浄土寺店1階店頭でもご予約可能です。
【7/14 イベント】「ホホホ座だらけマルシェ」&「ホホホ座談会」
ホホホ座が京都に大集合します!
◾️日時:7月14日(日)大安
11時~17時 ホホホ座浄土寺店前ガレージにて
全国のホホホ座が集合した出店市
19時~21時 ホホホ座1階店内奥ギャラリーにて
ホホホ座ほぼ全店主による座談会(入場無料)
◾️場所:ホホホ座浄土寺店
【7/18 イベント】ホホホ座とミシマ社の反省会 山下賢二×三島邦弘トークイベント
6月21日刊行の新刊『ホホホ座の反省文』と、7月20日創刊の新レーベル「ちいさいミシマ社」のW刊行記念トークイベント。個人店主、フリーランスの方、小さな会社で働く方々はもちろん、すべての働き「続ける」人、必見のイベントです!
同じ京都で小商いを営むふたりによる公開「反省会」。仕事を、商売を続けていくということについて、いま感じていること、考えていることはもちろんのこと、不安なこと、ここだけの悩み、あんなことこんなこと、まで赤裸々に語りあいます!
◾️日時:7月18日(木)開演19:00
◾️場所:代官山 蔦屋書店
◾️出演:山下賢二(ホホホ座)、三島邦弘(ミシマ社)
お申し込み方法等の詳細が決まりしだい、こちらのページ、ミシマ社ニュース、代官山蔦屋書店イベントページにてお知らせします。