第52回
おなみだぽいぽい増刷します!!!
2020.08.20更新
3年前の夏、『おなみだぽいぽい』という絵本がミシマ社から発刊となりました。
書籍の装画などで活躍されてきた作者の後藤美月さんが、何年も温め、何度も何度も絵を描き重ねてこられた、絵本としては初めての作品でした。
絵本が出るときに、後藤さんとミシマ社のスタッフは、「いきなり爆発的に売れたりするのではなくて、じわじわと長―く大切に届き続ける絵本にしていきたいですね」という話をしました。
そして、今から振り返れば、本当にその通りになりました。
だから、発売から3年経ったこのタイミングでの増刷は、格別に嬉しいのです。
昨年末、初めてうかがった本屋さん(ミシマ社との取引はなかったお店)のいい場所に『おなみだぽいぽい』を置いてくださっていたので、思わず、「この絵本の担当編集の者です」と声をかけたところ、お店の方が「すごくいい絵本ですよね」と涙ぐまれて、私もつられて涙ぐむ、ということもありました。
雑誌などでの紹介や、原画展、読者はがきやSNS等でいただく感想は、普通、発刊して数カ月に集中することが多いのですが、『おなみだぽいぽい』の場合、3年のあいだ、マイペースに、途切れることなく、反応をいただき続けてきました。今日は増刷を記念して、その一部をご紹介したいと思います。
「わたし」だけの言葉
この絵本は、こんな言葉から始まります。
この「言葉」に注目してくださったのは、歌人の穂村弘さんでした。
(...)どんなに変でも、いや、変だからこそ、原文の片言めいた言葉の方が胸に迫ってくるのは何故だろう。たぶん「正しい言葉イコールみんなの言葉」だからじゃないか。それに対して、「奇妙な片言イコール『わたし』だけの言葉」なのだ。(...)最も個人的な「なみだ」や「すき」が、読み手の心を惹きつける。「わたし」の深いところに触れてくる作品だと思う。――週刊文春2017年7月20日号「私の読書日記」より
同じく冒頭の「言葉」について、100%ORANGEの及川賢治さんも書いてくださいました。
(...)ふと「銀河鉄道の夜」のジョバンニの、答えがわかってるのに悲しい思いをする場面を思い出してスッとお話に引き込まれました。(...)詩のような印象的な場面を続けることで成り立っている、正解を求めない意欲作だと思いました。――飛ぶ教室2018年WINTER号
「トリ」が密かに人気!
この絵本の主人公はねずみさんなのですが、途中に出てくる「トリ」さんが好きという読者はがきもチラホラ。
今までのいつもと違うこんな状況で
最後に、最近になって、書店員の方がSNSに書いてくださった言葉をご紹介します。
言葉に出来ない、いろんな気持ちを、涙と一緒にぽいぽいってしたら、今までのいつもと違うこんな状況で戸惑いや不安を抱えていたとしても、きっと前を向いて行けると思うんだよね。だからこんな時には『おなみだぽいぽい』(ミシマ社) https://t.co/97xGtJhVwL #絵本が君の背中を押す
-- yamabon (@yamabon1980) June 25, 2020
『おなみだぽいぽい』、お子さんも大人もみなさんに、ぜひ手に取っていただけたらと思います。