第60回
『つくるをひらく』(光嶋裕介 著)を刊行しました!
2021.01.30更新
こんにちは、ミシマガ編集部です。
本日は、2021年1月の新刊『つくるをひらく』(光嶋裕介 著)の発売日です。
著者の光嶋さんは、建築家として設計に携わるかたわら、とても緻密なドローイング作品をいくつも発表してこられました。そして、2019年に銀座 蔦屋書店で開催された個展に合わせて、光嶋さんが5名の表現者とともに「つくること」をめぐる対談を行い、そのときに話された内容が本の柱となって構成されています。
対談相手として登場いただくのは、後藤正文さん(ミュージシャン)、内田樹さん(文筆家、武道家)、いとうせいこうさん(作家、クリエーター)、束芋さん(現代美術家)、鈴木理策さん(写真家)。名言続々、つくることに関わる人にとって必読の一冊です。
装丁は、鈴木千佳子さんが手がけてくださりました。
ゆったりとした判型で読みやすく、光嶋さんが対談前に必ず準備する「対話メモ」を、本のなかに再現したり・・・
ドローイング作品も、美しく収まっています。
ぜひお手にとって味わってみてください。
著者・光嶋裕介さん、そして友人でもある光嶋さんについて(三島邦弘)
年末年始のミシマ社編集部は、「光嶋裕介」一色だった。制作をいっしょに担当した野崎は、社内で僕の話をするとき、思わず「コウシマさんが・・」と言ってしまったらしい。それほどに、どっぷり「光嶋裕介」に浸からないことには、おそらく、かたちになっていなかっただろう。
と、書けば、多くの人が、光嶋さんって大変な著者なんですね、と思うかもしれない。
たしかに、その一面はあろう。たとえば、年末年始にどっぷり浸からなければいけなかった理由のひとつは、校了間際などお構いなしに、新しいドローイングがどしどし送られてきたからだ。「ドローイングを新たに描いたので、本文に掲載してください」。とてもさわやかな一文とともに、次から次へとアイデアが送られてくる。むろん、すべては「いい本」にするために、である。ただ、こうした点において、光嶋さんとの「ものづくり」を、「大変」と捉える人もいるかもしれない。
だが、ここで私が言いたいのは、ほんと大変! っていうことではない。むしろ、その逆。
どんなにタイトなスケジュールで無茶なオーダーがあったとしても、いやな感じがしない。先のばあいも、全アイデアを採用するのは無理だった。残念ながら、断ることになる。その過程で、ギスギスしたり、すれ違いがあったり、相互不信に陥ったり、といったことが起こらないとは言えない。ときに、ままあることであろう。とりわけ、スケジュールが厳しいときほど、双方、そういうふうになりがちだ。けれど、光嶋さんとの仕事において、そうしたネガティブな時間を経験したことがない。今回も、そうだった。ふしぎと負の感情がいっさい起きないのだ。
本書は、後藤正文、内田樹、いとうせいこう、束芋、鈴木理策・・・錚々たる方々との対談を収録している。その点で、こうした大物たちとの対談本と見なせなくもない。ただし、それだけに止まらないのが本書の豊かさと言えるだろう。5人の方々が、光嶋さんとの時間を喜び、本気で語っている。惜しみなく、自身の創作論を披露している。編集をしていて、そのことをひしひしと感じた。そして、きっと5人は、「光嶋さんが、建築という分野を超えて活躍していくのをほんとうに望んでいるのだろう」と感じずにはいられなかった。直接確かめたわけではないので、あくまで私の推論だが、光嶋さんのような人がものづくりの、社会の、メインストリームで活躍していってほしい、と五者五様で思っているような気がしてならない。
もちろん、5人の方々のお話は、抜群におもしろい! それだけでも読んでよかったと思ってもらえるはず。くわえて、この本からぜひ、光嶋さんという「人」を感じていただきたい。そうすることで、「つくる」は技術だけではないと思えてくるのではないだろうか。私たち編集メンバーがきびしいスケジュールであっても終始、楽しく本を「つくる」ことができたこと、そして一流の表現者たちが「つくる」ためのことばを「ひら」いてくださったこと、こうしたことの背景には、光嶋さんの「ひらく」何かがある。それは技術といったものより、言語化するのがむずかしい、ある種の感覚のようなものだろう。きっとそれこそが、これからの「つくる」に欠かせないものにちがいない。と編集者としての直感が告げる。
本書の行間から、こうしたことも感じとっていただければ嬉しいかぎりです。
またーー。光嶋さんと友人になって約10年。ほんとうに、楽しいことしかなかったなぁ、としみじみ思います。
友人としては、光嶋さんが生み出す唯一無二のゴギゲンを、本書からも味わっていただきたいです。
刊行記念イベントのお知らせ
書籍の刊行を記念して、オンラインでのトークイベントを開催します。
第1弾 光嶋裕介×藤原辰史 対談 「あいだ」のつくり方、ひらき方
●開催日時:2/12(金)19:00~20:30
●内容:『つくるをひらく』に収録された内田樹さんとの対談において、「つくる」をめぐる個と集団について言及してきた光嶋さん。『縁食論』(ミシマ社)のなかで、ひとりぼっちで食べる「孤食」でも、儀礼的な強いつながりのなかで食べる「共食」でもない新たな「縁食」という概念を提唱する、藤原さん。ともにこれからの時代をひらいていくヒントとして「あいだ」を掲げています。では、その「あいだ」とは何か、どう「つくる」「ひらく」をしていけばいいのか? ......学びの天才・光嶋さんが、いま最注目の研究者、藤原辰史さんの思考の根幹に迫ります!
第2弾 光嶋裕介×斎藤幸平 対談
●開催日時
2021年3月中の開催を予定しております。
詳細が決定次第、ミシマ社ウェブサイトやTwitterにてご案内いたします。