第151回
『みえないりゅう』刊行記念! ミロコマチコさんインタビュー「4年ぶりの新作には『初』がいっぱい」(後編)
2023.07.15更新
7月21日(金)、ミロコマチコさんの新作絵本『みえないりゅう』を発刊いたします!
本作は、ミロコさんの4年ぶりの作品。そして、奄美大島に拠点を移されてから初めての絵本となります。島での暮らしは作品づくりに大きな影響を与え、本作はまさに、ミロコさんの「新境地」といえる一冊となりました。
『みえないりゅう』刊行を記念して、ミロコさんにインタビューをさせていただきました!
昨日の前編に引き続き、本日は後編を公開いたします。
"五感"と"六感"を同時にゆさぶる生命の物語に込められた思いとは?
展示やサイン本の情報もございますので、どうぞお見逃しなく!
(聞き手・まとめ 三島邦弘)
りゅうがずっと「くっついてきた」
―― 今回、タイトルが「みえないりゅう」ということで、りゅうが全ページに出てくるわけですが、りゅうで絵本を描こうとなったのは、どういう経緯でしょう?
ミロコ 島の人たちの話を聞いて、りゅうの存在を私も意識するようになったんです。そうしたら、意識しなくてもずっとくっついてくるようになった。これは島だけのことかなと思ったら、真冬の北の方に旅をしたときもくっついてきた。新幹線の横をりゅうがビュ〜ッて飛んでるんですよ。
―― え〜〜。
ミロコ 青森から函館までフェリーで渡ったんですけど、そのときもずっと海の上を飛んだり、海のなかを潜ったり、かもめと会話したりしているような姿が見えたんです。そのとき、島特有のものではないと気づいた。世界は全部つながっていて、それがちゃんと巡っているからりゅうの存在があるのだと思った。
島に帰ってきてすぐに滝へ行ったら、滝の上の方からシュシュシュッとりゅうが降りてきた。一緒に帰ってきたような気がしたんですよね。「あぁよかった、また島にもりゅうがきた」と思えた。この巡りみたいなことを感じ取れることが、りゅうを見てることなのかな。
―― まさにミロコさんの実感なわけですね。
ミロコ そうですね。これまでの絵本も自分の体験が元にはなっていますけど、ずっとくっついてきていたのは初めて。それと、今回の絵本には希望もあるかな。これを感じ取っていてほしい、大事にしてほしい、という想いがあります。
ミロコマチコさん
―― ミロコさんの作品にはいつも生命力が発動していく強さが圧倒的にありますが、今回はそれに加えてとてもやさしい。温かくて、包本はミロコさんの新しい世界そのものだなぁと感じています。
ミロコ そうかもしれません。前は、人間から突き放せば突き放すほどかっこいい、そういう生き方をしたいという気持ちで動物を描いていました。こんなやわやわな皮膚じゃなくて、裸でも毛むくじゃらで自分で獲物を獲って生きている姿に憧れていた。前は見たこともないサバンナの動物みたいなのを描いていました。いまは実感としてそういう生活が、自分ひとりでなくて周りの人たちもいっぱいいたら、安心して生きていけると実感している。だから今は、生活のなかにいるいきもの、暮らしのなかにいるいきものを描いている。
―― ミロコさんにとって距離が変わったわけですね。
ミロコ そばにいるいきものたちはやさしいだけではなくて、怖いものもあるし、恐ろしいものもある。ただ、とても身近なものになった。実在しないのに身近というのがおもしろいですよね。
音は好きなように読んでほしい
―― その感覚が絵にバーっと出ているわけですけども、文章の方でも何か変化はありましたか?
ミロコ どうかなぁ。音の響きがもともと好きだから、いま自分では変化したかどうかはわからないし、意識してなかったですね。でも都会にいた頃より圧倒的に自然が奏でる音が増えましたね。波や風の音、鳥や虫の声。それが出てるかもしれない。
――「ざぁざば」といった音もミロコさん作品の力強さのひとつですよね。「ぴっつ ぴった ぴっと とん」とか、ミロコさんにはそう聞こえていらっしゃるわけですか?
ミロコ 言葉にするとひとつの音に限られてしまうから、それを探しているという感じはしますね。あのつららから水が垂れる音をなんて表現したらぴったりくるかな、とか。けど、読み方としてはみんな好きなように読んでほしい。「ぴっつ ぴっつ」とか付け足してもいいし、「ぴっつーーーー」とかあってもいいし。ぜんぜん好きなように読んでほしいです。
音楽家の二人と旅した音楽とともに
ミロコ 北の旅は、音楽家の2人と行ったんです。最終日にピアノのある公民館の部屋を借りて、私は絵を描き、音楽家の2人は音を奏でた。その曲を聞いた印象もすごくあります。静かに始まった音楽が、何かの合図でブワッと盛り上がった。「ざぁざば」とか、「そろそろ なみを おこさなくちゃ」の後に「ぐわーん ぐわーん およぐ」「びゅういー びゅういー とぶ」などの音が出てきたのは、いつもその音楽が私のなかで流れていたから。その点は今回ちょっと特殊な絵本の作り方だったと思います。
―― 体感として残った音楽とともにつくったわけですね。
ミロコ そうですね。それがかたわらにあって、それとともに自分のなかで作ったというのは初めてですね。
―― 奄美大島のパワーだけではないわけですね。
ミロコ そうですね。音楽の力と、北へ移動したこと、そして一緒に旅をしたのが音楽家だけじゃなくて、りゅうもだった。そうしたいろんなことが合わさってできた一冊です。
(おわり)
展示、イベント、サイン本のお知らせ
本書刊行を記念して、展示、イベントを各地で開催いたします。
【1】原画展 @東京・URESICA
全国各所にて原画展を開催します。息をのむほどの躍動感と生命力溢れる作品をじっくりお楽しみください。
初回の開場は、東京・西荻窪のURESICA(ウレシカ)さん。
今後も全国を巡回予定です。決まり次第こちらにてお知らせします!
<会期>
前期:2023年7月27日(木)~2023年7月31日(月)
後期:2023年8月10日(木)~2023年8月20日(日)
営業時間:12:00~19:00
定休日:火・水、8/1〜9 夏季休業
<会場>
URESICA ウレシカ
〒167-0042
東京都杉並区西荻北2丁目27−9
(最寄り駅:JR西荻窪駅)
【2】特別展示 @東京/福岡・パタゴニア
パタゴニアサーフ東京ストア、パタゴニア福岡ストアにて、「ミロコマチコ特別展示『海とわたしたち』ーみえないものの気配を感じ取るー」を開催いたします。
地球の巡りや自然の営みが健やかな状態であるからこそ大切にできる感覚、"みえないりゅう"。その気配を感じ取るように制作した本作の一部と、パタゴニア製品のグラフィックとなったミロコさんのアートを展示中です。
@パタゴニアサーフ東京ストア
会期:7月13日(木)~8月30日(水)
住所:東京都渋谷区神宮前3-18-24 ジムアベニュー1階
営業時間:11:00~19:00
定休日:毎月第3水曜日
@パタゴニア福岡ストア
会期:7月13日(木)~8月9日(水)
住所:福岡市中央区天神1-10-20 天神ビジネスセンター 1F
営業時間:11:00~19:00
定休日:毎月第3水曜日
店頭での『みえないりゅう』販売期間:7月13日(木)〜7月31日(月)
【3】パネル展 @全国
全国の書店にて、「五感と六感を揺さぶる ミロコマチコ『みえないりゅう』パネル展」を開催します!
【関東】
<東京都>
ブックファースト 新宿店
文禄堂AYUMIBOOKS 高円寺店
紀伊國屋書店 新宿本店
未来屋書店 碑文谷店
往来堂書店 千駄木店
本屋B&B
マルジナリア書店
【中部】
<愛知県>
名古屋みなと蔦屋書店
【関西】
<奈良県>
奈良 蔦屋書店
<京都府>
丸善 京都本店
<大阪府>
MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店
<兵庫県>
ジュンク堂書店 三宮店
【中国】
<広島県>
ウィー東城店
大垣書店 ジ アウトレット広島店
<岡山県>
スロウな本屋
【九州】
<福岡県>
九大伊都 蔦屋書店__13088
taramu books & cafe
文喫 福岡天神
<鹿児島県>
丸善 天文館店
ブックスミスミ オプシア
<宮崎県>
未来屋書店 宮崎店
<沖縄県>
ジュンク堂書店 那覇店
【4】サイン本の販売
7/21(金)より、サイン本を、下記のお店にて冊数限定で販売いたします。
【関東】
<群馬県>
フリッツ・アートセンター
<東京都>
ウレシカ
マルジナリア書店
未来屋書店 碑文谷店
SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS
ジュンク堂書店 池袋本店
くまざわ書店 武蔵小金井北口店
【中部】
<石川県>
金沢ビーンズ明文堂書店
【関西】
<京都府>
丸善 京都本店
<大阪府>
梅田 蔦屋書店
MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店
【中国】
<広島県>
ウィー東城店
大垣書店 ジ アウトレット広島店
【九州】
<福岡県>
九大伊都 蔦屋書店__13088
taramu books & cafe
文喫 福岡天神
六本松 蔦屋書店
<鹿児島県>
丸善 天文館店
ブックスミスミ オプシア
<沖縄県>
ジュンク堂書店 那覇店
※代引き発送、取り置き(予約注文)は受けておりませんので、店頭に足をお運びいただきお買い求めください。
※ご購入はおひとり様1冊まででお願いいたします。
※サイン本は数に限りがございます。各店舗ともなくなり次第、販売は終了となりますのでご了承ください。
※7月21日発売に合わせて入荷予定ですが、店着が多少前後する場合がございます。