第190回
想像以上に口笛の世界は広い!『口笛のはなし』発売のお知らせ
2025.02.20更新
こんにちは、京都オフィスのノザキです。
本日2025年2月20日(木)より、ノンフィクションライターの最相葉月さんと、口笛奏者の武田裕煕さんによる対談本『口笛のはなし』が、全国の書店で発売になりました。本書は、口笛世界チャンピオンの武田さんに、吹けないサイショーさんが徹底的に訊く、対談ノンフィクション作品です。
本ができるたびに、すごい、ほんとうにすごい、すごい本ができてしまった、あああっと、大騒ぎしている自分ですが、またしても、いやぁほんとうになんという本が生まれたんだ、と感動しています。
でも、おそらくこれを読んでくださっている方の中には、「口笛のはなし」と聞いても、あんまりピンとこない方が、けっこうおられるのではないかなあとも思います。それもそのはず、私にもその段階はあったのですーー。
何人かが集まったときに、「口笛吹ける?」という話になったとします。とくに練習したわけでもないのに、まあフツーに吹ける、という人。まったくダメ、どうやっても吹けない、という人。うわすごい!うまい!とか、へえ、この人吹けないんだ、意外。とか、いっときその場が盛り上がることはあっても、「吹けない」側の自分はとくに、その後練習に励むわけでもなく、今後も吹けないものなんだと思ってきました。ピンとこないというよりは、できない(=縁遠い)もの、だと思っていたのです。
その私が、この本をつくりながらどうなったかというと、こうなりました。(仕掛け屋・ハセガワ作)
ということで、本書の魅力の一部を、3連発「すごい」でお届けします。
その1 とにかく切り口がすごい!
数々のノンフィクション作品を書き残してきた最相さんが、武田さんに最初に投げかけた問いは、こちらでした。
「とても初歩的な質問から始めたいのですが、口笛を吹くのは人間だけでしょうか?」
(なんと・・・!)
取材に同席していた私は、思いがけない角度からのはじまりに、びっくりしてしまいました。「口笛のはなし」がこれからどう展開していくのか、当初抱いていた「口笛」へのイメージが、ものすごく揺さぶられます。こりゃ〜とんでもない大航海がはじまったぞ、という感覚。
あるいは武田さんから最相さんへは、
「サイショーさん、口笛の仕組みってどうなっていると思いますか?」
(え〜〜〜、口の中がどうなってるかなんて・・・考えたこともなかったし、そもそも見えないし!)
こんな調子で、文化、歴史、科学、音楽、テクニック...口笛の奥深い魅力がどんどん引き出されていくのです。ある一つのテーマ(ここでは「口笛」)に対して、素朴な疑問から最新の研究まで、こんなふうに興味関心を広げて、調べて、展開していくのか・・・。本を読む楽しみ、知識を得ていくことのおもしろさが体感できる。
目次は以下のとおりです。
はじめに 最相葉月
第一章 人はなぜ口笛を吹くのか
口笛の始まり/音楽としての口笛/コミュニケーションの手段として/暗号としての口笛/口から出ていればみんなwhistling/口笛と言い伝え 日本編/口笛と言い伝え 海外編
間奏①ひゅるるるる~ 怖~い口笛怪談「エル・シルボン」
第二章 ぼくが口笛奏者になるまで
初めて口笛を吹いた日/メキシコで知った人前で演奏する楽しさ/ニコニコ動画から世界大会へ/アメリカとアフリカでの音楽体験/世界大会で一位になるということ
間奏② 「上を向いて歩こう」の時代
第三章 口笛音楽の近現代史
宮廷からサーカスまで/アイルランドの口笛文化とジャガイモ飢饉/録音技術とスター誕生/エンターテインメント・ショービジネスとして/女性の社会進出と口笛/エンタメからアーティストの時代へ/映画と口笛音楽/日本の口笛奏者/口笛の背景化/ボサノヴァの口笛/口笛が感情を呼び起こすのか/身体表現としての口笛
間奏③ 口笛を吹く日本の作曲家たち
第四章 楽器としての口笛
口笛のしくみを科学的に説明する/管楽器経験者は口笛が上手い/口笛の音は電子音に似ている/口笛に男女の違いはない/音程を作る/音域はピッコロ/音量は低音になるほど小さい/音色を変える方法あれこれ/基本の奏法――タンギング、ビブラート/口笛ならではの奏法――インワード/インアウト、ポルタメント/グリッサンド、ウォーブリング/特殊奏法――グロウル、フラッター、タッピング、重音/口笛が楽器になるとき
間奏④ 口笛の腕試し曲「チャルダッシュ」
第五章 口笛奏者の世界
日本は口笛大国/のどじまんから始まった大会/オンラインネットワークが支えたコミュニティー/コロナ下で開催されたオンライン世界大会/現代の口笛奏者はどんな仕事をしているのか/チャンピオンがたくさんいる/口笛大国を牽引する口笛教室
間奏⑤ 口笛以外のウィスリング――指笛、舌笛、手笛、歯笛、パラタル、喉笛
第六章 さあ、口笛を吹いてみよう――実践編
音を出してみよう/音程を変えよう/音を区切ってみよう、伸ばしてみよう/息継ぎの問題/マイクの持ち方/ビブラートをかけてみよう/楽しく吹くために大事な体のこと/リズムに乗ろう/曲を選んでみよう/楽器はできたほうがいいか/どこで吹くのか/大会やコンサートに参加してみよう/緊張をどう和らげるか/これから口笛を吹くみなさんへ/
おわりに 武田裕煕
その2 読みながら聴けるのがすごい!!
さまざまなテーマが展開されるにとどまらず、本書のすごさはここにも!
口笛音楽や口笛奏者の紹介とともに、その音源にQRコードからアクセスできるようになっています。読むだけでなく、聴きながら、知られざる口笛の世界に触れることができます。
とくに第三章の「口笛音楽の近現代史」では、あの名曲にも、あの映画にも、あのシーンにも。世の中は、こんなにも口笛であふれているのかと驚き、奏者によってさまざまな音色に圧倒され、もしかして練習すれば自分もできるかも・・・?と、突如やる気が湧いたりもしてくるから不思議です。
その3 読み終わったら音が出た、すごい!!!
そして最後の「すごい」とはーー
この私、先述のとおり、これまでは口笛が吹けなかったはずなのに、今ではきれいな音がでるようになりました。必死に特訓をしたわけではないにもかかわらず、です。
今回、本の中には、吹けない人が吹けるように、吹ける人はもっと吹けるようになるための「特典動画」をつけました。口笛奏者の武田さん自らが動画でとてもわかりやすく解説してくださっています。
第四章「楽器としての口笛」では、さまざまな技巧の紹介を、そして第六章「さあ、口笛を吹いてみよう――実践編」では、基本的なことからステージに立つための準備まで、実践的な内容を盛り込んでいます。
*
・・・と、盛りだくさんな一冊となりました。
今日から、どこでも、身ひとつで。口笛の奥深さをぜひ、読んで吹いて味わってみてください。
刊行記念トーク&ミニライブ開催!
本書の刊行を記念して、トーク&ミニライブを開催いたします。当日は、武田さんによる生演奏も。ぜひご参加ください。
武田裕煕×最相葉月 トーク&ミニライブ
「実は知らない、口笛のはなし」
『口笛のはなし』(ミシマ社)刊行記念
日程:2025年3月14日(金)
時間:19:30~21:00 (19:00オンライン開場)
場所:本屋B&B(世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK 2F)
(右)武田裕煕(たけだ・ゆうき)
口笛奏者・ウィスリング研究家 1992年、東京生まれ。東京大学入学後に渡米、ミドルベリー大学を卒業。2010年国際口笛大会ティーンの部優勝を皮切りに、2019年口笛音楽マスターズ総合男性1位、2024年口笛世界大会弾き吹き部門優勝など、数々の国際大会で受賞。コロナ下にはオンラインの口笛世界大会GWCを創始し、主催。4大陸7か国に住み、20歳までに5言語を習得。世界中のウィスラーとコネクションを作りウィスリングを研究、TEDxでは口笛をテーマに登壇しスタンディングオベーションを得る。ジャズ、クラシック、ラテン、即興音楽など多ジャンルで演奏活動を展開し、オーストラリアのTVCM起用、ベネズエラでのツアーなど、国際的に活躍中。
(左)最相葉月(さいしょう・はづき)
1963年、東京生まれの神戸育ち。関西学院大学法学部卒業。科学技術と人間の関係性、スポーツ、精神医療、信仰などをテーマに執筆活動を展開。著書に『絶対音感』(小学館ノンフィクション大賞)、『星新一 一〇〇一話をつくった人』(大佛次郎賞、講談社ノンフィクション賞ほか)、『青いバラ』『セラピスト』『れるられる』『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』『証し 日本のキリスト者』(キリスト教書店大賞)、『中井久夫 人と仕事』など多数。ミシマ社では『母の最終講義』『なんといふ空』『辛口サイショーの人生案内』『辛口サイショーの人生案内DX』『未来への周遊券』(瀬名秀明との共著)、『胎児のはなし』(増﨑英明との共著)を刊行。