第191回
『RITA MAGAZINE2』本日発売です!
2025.03.13更新
こんにちは。ミシマガ編集部のスミです。
いよいよ本日、『RITA MAGAZINE2 死者とテクノロジー』(中島岳志・編)がリアル書店発売日を迎えました!
利他を考える雑誌「RITA MAGAZINE」=リタマガが創刊してから、約1年。
『RITA MAGAZINE テクノロジーに利他はあるのか?』(中島岳志・編)に続く第2弾が本誌です。
多彩な著者陣が集結!
ミシマ社はこれまでも『思いがけず利他』『料理と利他』『ぼけと利他』などを刊行してきましたが、そうした「利他本」たちのなかでも、本誌は単行本ではなく、雑誌として異彩を放っています。
たくさんの著者の言葉が結集し、多彩な論考や対談を通して、とにかく豊富な具体例とともに、利他の問題を探っていく一冊です。
たとえば、「弔いとテクノロジー」を研究テーマとする高木良子さんは、中国の新進の「AI故人」ビジネスの実態や、娘を失くした母親が、VR技術によって再現された娘と再会する過程に密着したドキュメンタリー番組など、貴重な実例を取材。
ドミニク・チェンさんは、情報技術を用いて死者と対話する「心臓祭器」や「Last Words / TypeTrace」のプロジェクトについて紹介されています。
また、小説家の平野啓一郎さんには、AI故人を題材にして大きな反響を呼んだ小説『本心』を出発点として、「『分人』概念からみた喪の作業とは」「AIが再現する死者は『他者性』を獲得しうるか?」といった問いをめぐってお話しいただきました。
最前線のテクノロジーが一気に身近に
そんな本誌の目次がこちら。「死者とテクノロジー」にまつわる研究、実践、事業に取り組んできた方々の寄稿が大充実です!
<『RITA MAGAZINE2 死者とテクノロジー』目次>
巻頭論考 利他的な死者 中島岳志
Chapter1 思いがけず死者
思いがけず死者 鼎談:ドミニク・チェン、中島岳志、高木良子
「死者が生きていく」ためのテクノロジーはいかにして可能か 論考:ドミニク・チェン
弔いの知覚論 論考:高橋康介
「御先祖」と共に作る~濱田庄司作品と死者の営みの引用 論考:佐々風太
Chapter2 テクノロジーで死者に「出会う」
AIが死者を再現するとき~小説『本心』をめぐって 鼎談:平野啓一郎、中島岳志、高木良子
亡き娘と再会する~韓国のVRヒューマンドキュメンタリー「あなたに出会った」を事例に 論考(インタビュー):高木良子
亡き妻の歌声から曲を紡ぐ 論考:松尾公也
デジタル故人が現代の追悼装置となるためには 論考:古田雄介
中国・AI故人ビジネスの今~超脳(Super Brain)・張澤偉代表に訊く 論考(インタビュー):高木良子
AI故人の倫理 論考:パトリック・ストークス
Chapter3 弔いの現在と未来
消えゆく「彼岸」~弔いの半世紀を振り返る 鼎談:西出勇志、中島岳志、高木良子
遺骨アクセサリー・堆肥葬・自然循環型葬~弔いの多様化とその裏にひそむもの 論考:高木良子
墓友・手元供養・土葬~日本の葬送のいまを支える人たち 論考:谷山昌子
ドローン仏に夢を乗せて 論考:池口龍法
されど仏壇~廃棄とデジタル化のリアル 論考(インタビュー):高木良子
AI故人や墓友(はかとも)といった言葉に馴染みがない、具体的なイメージが浮かばないという方も(まさに私がそうでした)、本誌をお読みいただくうちに、きっと最前線の弔いのテクノロジーがどんどん身近に感じられるのではないかと思います。私も「祖父母の家にある仏壇はこれからどうなるんだろう」「50年後に実家の墓地は残っているのだろうか...」と考えずにはいられませんでした。
松尾公也さん「亡き妻の歌声から曲を紡ぐ」より
高木良子さん「遺骨アクセサリー・堆肥葬・自然循環型葬」より
池口龍法さん「ドローン仏に夢を乗せて」より
「死者」を考えずして利他は語れず!
最後に、「そもそもなぜ、利他の雑誌のテーマが、死者?」と気になってくださった方へ、編者の中島岳志さんによる巻頭論考「利他的な死者」の一部をご紹介したいと思います。
中島岳志さんの著書『思いがけず利他』(2021年10月刊)
中島さんはこう書きます。
利他にとって重要なのは、受け手である。
(『RITA MAGAZINE2』10頁)
ある行為が利他になるのは、与え手が「○○してあげよう」と意図したときではなく、その行為が誰かに「受け取られたとき」。
だからこそ、私たちが「死者」との関係について考えることが、利他を語るうえで重要だといいます。
重要なのは、私たちがすでに受け取っているということに気づくことである。例えば、私たちの生活は、太陽からの贈与なしには成り立たない。私たちは、太陽に対して返礼ができないほどの一方的な贈与を受け取っている。しかし、それを「太陽からの利他」として受け取っていない。当たり前のこととして、特段の感謝の対象としていない。
同じことは、死者たちとの関係においても言える。死者たちの様々な営為がなければ、私たちの今日の生活は成り立たない。しかし、太陽と同様、日々の生活の中で「死者からの利他」を意識することは、なかなかない。私たちはすでに多くのものを受け取っていながら、そのことに気づいていないのだ。
利他的な循環を生み出すためには、私たちは様々なものをすでに受け取っていることに意識的になる必要がある。
(...)
だとすれば、「弔い」は重要な利他行為である。死者たちの営為を意識的に受け取り、その存在を想起する。時に、死者からのまなざしを突きつけられ、自らの行為を見つめ直して、よく生きようとする。この死者との関係性を再構築することこそ、利他を生み出す起点になるのではないか。(『RITA MAGAZINE2』10頁)
しかし今、家族構造の変化などにより、従来のお墓や葬儀を維持することが難しくなっています。
死者との関係性が失われると、利他の連鎖が失われる。死者とのつながりを担保していた伝統システムが崩壊する中、私たちはどのように死者との出会い直しの機会を持つことができるのだろうか。
(『RITA MAGAZINE2』12頁)
本誌はこの問いをひとつの出発点にして、弔い、そして現代の「利他」をめぐる問題と、これからの可能性を探っていきます。
つづきはぜひ『RITA MAGAZINE2 死者とテクノロジー』をご覧ください。
発刊記念フェアを開催します
こんにちは。ここからは営業チームのスガが、フェアのご案内をいたします。
昨年2月に創刊した「リタマガ」。創刊号『RITA MAGAZINE テクノロジーに利他はあるのか?』が、先日増刷が決定するなど、反響をいただきました。
創刊前のおととしの冬、次の春に発売の「リタマガジン」という不思議なタイトルの本の注文書を手に、書店員さんたちに案内しに行ったときのこと。「これ雑誌なの?」「ということは2巻もでるの?」と聞かれては、「たぶん2巻目も出ると思うのですが・・・」と、創刊に向けて編集作業に追われるホシノを横目に答えていたのが懐かしいです。
その2巻目がいよいよ本日発売! 創刊号を多くの方に手に取っていただいたおかげで、書店員さんからの注目度もアップしているのを感じます。そして、全国の書店で発刊記念フェアの開催が決定しています!
フェアのテーマは「AI時代の利他を考える」。
並ぶ本は「リタマガジン」や、平野啓一郎さんの小説、そして中島岳志さんによる、「利他論」の決定版。
AIやテクノロジーが進化して、「死者を再現する」サービスまで始まっている現代。ビジネスや政治などのシステムから、その根本であるコミュニケーションや人の死生観まで、大きな岐路に立っています。生産性や合理性ばかりにとらわれない視点を持つために、おすすめしたい本たちです。ぜひ書店店頭でご覧ください。
フェア「AI時代の利他を考える」
〈テーマ〉
AI時代の利他を考える 便利で効率がよくて精度が高いことは、本当に私たちを幸せにするのか ?
日本でも昨年末に初めて、死者を生成 AI で再現するサービスが リリースされました。
テクノロジーが劇的に進化する中で、今考えておきたい、 「生きるとは」「死ぬとは」「意志とは」「めざしたい社会とは」・・・。
そんな思考のヒントになる本たちを並べました。
〈展開書籍〉
・『RITA MAGAZINE2 死者とテクノロジー』
・『RITA MAGAZINE テクノロジーに利他はあるのか?』
・『思いがけず利他』(著 中島岳志)
・『本心』(著 平野啓一郎/文春文庫)
〈開催店〉
【北海道】
紀伊國屋書店 札幌本店
【東北】
〈秋田県〉
ひらのや書店
あゆみBOOKS 仙台一番町店(3/22以降の開催予定です)
【関東】
〈東京都〉
増田書店
八重洲ブックセンター 阿佐ヶ谷店
芳林堂書店 高田馬場店
【中部】
〈愛知県〉
ジュンク堂書店 名古屋栄店
【関西】
〈京都府〉
丸善 京都本店
大垣書店 京都本店
本と野菜 OyOy
〈大阪府〉
MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店
〈兵庫県〉
ジュンク堂書店 明石店
【九州】
〈福岡県〉
紀伊國屋書店 福岡本店
〈沖縄県〉
ジュンク堂書店 那覇店