トーキョーでキョートみつけたトーキョーでキョートみつけた

第2回

さば

2018.05.06更新

バラエティ番組で、大の魚好きという宮沢りえさんが

「一種類だけこの世に残す魚を選ぶとしたらなに?」

という質問を出演者にしていた。

わたしも胸に浮かべてみた。揚げても、干物でも、お造りでも美味しい魚・・・鯵かな。鯖も好きだけど鯖の揚げものはどうだろう。鯖フライ。鯖サンドって揚げているものを挟んでいるんだっけ? でもフライなら鯵のほうがいいな〜なんて思っていたら、チュートリアルの徳井義実さんが「鯖です」と答えていた。他に挙がったのは「鮪」。鮪か。これを選ぶのが王道というものか? しかしわたしは中トロや大トロにたやすくテンションが上がらない。宮沢りえさんは「鯛」・・・納得。お殿様が召し上がる魚。なんといっても明石の鯛だそう。注目すべきなのは徳井さんが「鯖」を選択していたこと。徳井さんは京都出身である。京都のひとは鯖に馴染みがあるのだと思う。わたしなど居酒屋のメニューに〆さばがあると自ずと注文してしまう。

「〆さばつい頼んじゃうんだよね〜」

というわたしの温度は、関東の友人たちとは随分差があることを、こちらでの食の経験が積み重なるにつれ知っていった。

「あれ? みんな〆さばってそんなですか?」

最近好きな食べものを聞かれた際は、意識的に「〆さば」と答えるようになった。

あと、お刺身をお造りというのも東京では聞いたことがない。通じにくそうなので、お刺身のことを話すときはお刺身と口にするが、わたしの頭の中では"おつくり"という音が鳴っている。

京都ならではの〆さばの食べかたがある。千鳥酢と薄口醤油とおろし生姜を合わせたもので食べるのだ。この食べかたを供す店は東京にはない。京都の居酒屋だと【赤垣屋】。京都にきて京都らしいものが食べたいひとは赤垣屋に行ってみるといい。御品書きに値が書かれていないので、すんごい高かったらどうしよう、みたいなドキドキもおまけでついてくる。・・・京都の店紹介になってしまった。ふう、東京で京都見つからないよ菊さん。

0506-1.png

そんなことだから銀座の路地裏にあるラーメン店【銀座 風見】で千鳥酢に鉢合わせたとき、わたしは思わず写真を撮った。名物の酒粕濃厚そばを半分くらい食べると、千鳥酢をとぱとぱかけた。・・・そこまで、要らなかった。トッピングに置かれていたおろし生姜をどばどばいれるのは、スープの味と調和してよかったけれど。あの千鳥酢特有の甘さと鼻へ抜ける香り、堪能するにはどうぞ〆さばで。

早織

早織
(さおり)

俳優。1988年5月29日生まれ。京都市左京区育ち。
15歳から俳優をはじめ幾星霜。立命館大学産業社会学部卒業。
大学時代、内田樹先生の著作を読み耽りミシマ社に辿りつく。
《近ごろの出演作》映画『リバー、流れないでよ』(山口淳太監督)、『遠いところ』(工藤将亮監督)、『NEU MIRRORS』(Keishi Kondo監督)、ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(大九明子監督)

早織 公式X

編集部からのお知らせ

ヨーロッパ企画20周年ツアー
第37回公演「サマータイムマシン・ブルース」
第38回公演「サマータイムマシン・ワンスモア」
早織さんが出演決定です! ツアーは7月よりはじまります。ぜひ劇場で!

詳しくはこちら

おすすめの記事

編集部が厳選した、今オススメの記事をご紹介!!

  • 生まれたて! 新生の「ちゃぶ台」をご紹介します

    生まれたて! 新生の「ちゃぶ台」をご紹介します

    ミシマガ編集部

    10月24日発売の『ちゃぶ台13』の実物ができあがり、手に取った瞬間、雑誌の内側から真新しい光のようなものがじんわり漏れ出てくるのを感じたのでした。それもそのはず。今回のちゃぶ台では、いろいろと新しいことが起こっているのです!

  • 『tupera tuperaのアイデアポケット』発刊のお知らせ

    『tupera tuperaのアイデアポケット』発刊のお知らせ

    ミシマガ編集部

    10月の新刊2冊が全国の本屋さんで発売となりました。1冊は『ちゃぶ台13』。そしてもう1冊が本日ご紹介する、『tupera tuperaのアイデアポケット』です。これまでに50冊近くの絵本を発表してきたtupera tuperaによる、初の読みもの。ぜひ手にとっていただきたいです。

  • 「地獄の木」とメガネの妖怪爺

    「地獄の木」とメガネの妖怪爺

    後藤正文

    本日から、後藤正文さんの「凍った脳みそ リターンズ」がスタートします!「コールド・ブレイン・スタジオ」という自身の音楽スタジオづくりを描いたエッセイ『凍った脳みそ』から、6年。後藤さんは今、「共有地」としての新しいスタジオづくりに取り組みはじめました。その模様を、ゴッチのあの文体で綴る、新作連載がここにはじまります。

  • 職場体験の生徒たちがミシマ社の本をおすすめしてくれました!

    職場体験の生徒たちがミシマ社の本をおすすめしてくれました!

    ミシマガ編集部

    こんにちは! ミシマ社自由が丘オフィスのスガです。すっかり寒くなってきましたね。自由が丘オフィスは、庭の柿の実を狙うネズミたちがドタバタ暗躍しています・・・。そんな自由が丘オフィスに先日、近所の中学生が職場体験に来てくれました!

この記事のバックナンバー

08月22日
第37回 かの 早織
04月09日
第36回 たび 早織
12月07日
第35回 よろこび 早織
05月12日
第34回 かみ 早織
02月18日
第33回 むし 早織
12月07日
第32回 はつ 早織
08月18日
第31回 そら 早織
06月04日
第30回 ふく 早織
04月09日
第29回 りく 早織
01月03日
第28回 くずれ 早織
11月08日
第27回 はんぷく 早織
09月08日
第26回 しん 早織
07月08日
第25回 せい 早織
05月09日
第24回 ひび 早織
03月10日
第23回 どう 早織
02月06日
第22回 やく 早織
01月02日
第21回 ほし 早織
11月20日
第20回 ほころび 早織
10月24日
第19回 むこう 早織
09月21日
第18回 ちてん 早織
08月13日
第17回 てんぷ 早織
07月06日
第16回 はらえ 早織
06月11日
第15回 さきわい 早織
05月14日
第14回 いちよう 早織
04月14日
第13回 たましい 早織
03月04日
第12回 つゆ 早織
02月04日
第11回 よ 早織
01月08日
第10回 たまご 早織
12月04日
第9回 しょうよう 早織
11月02日
第8回 いちじく 早織
10月03日
第7回 ゆめ 早織
09月04日
第6回 みず 早織
08月03日
第5回 ニッキ 早織
07月03日
第4回 たまねぎ 早織
06月04日
第3回 さんしょ 早織
05月06日
第2回 さば 早織
04月03日
第1回 ゆりかもめ 早織
ページトップへ