第6回
みず
2018.09.04更新
4月22日下北沢で晩夏の京都にいた。
4月というのに29度まで上がるこの日、
ライブハウスの中は熱帯夜のような高湿度。
乾いたギターの音とねばり気のある声が混じったサウンドに
夜の河原へ連れられた。
北から南へぬける風が柳を揺らす。
川はとうとう流れていくのに私はどこにも行けない。
肌を這う湿気をぬぐうことはできない。
流れの傍を遡るように走る。
源にはたどり着けず止まる。
海の代わりにプールがあった。
泳いで、泳いで、涙を散らした。
どうしてあんなに哀しかったんだろう。
あの私はどこにも行けないと思っていたのに
その閉塞感をどこかで伏せた。
だからいま東京の下北沢で息ができているのだ。
だがここで、京都にいる。これはいったい。
昔に戻りたいわけでも浸りたいわけでもないのに
台風クラブの「処暑」という曲が私の胸を痛くさせ
ふたたび涙を放すことになろうとは。