第7回
ゆめ
2018.10.03更新
タイムマシンがあったら、何に使いますか?
ヨーロッパ企画の『サマータイムマシン・ブルース』『サマータイムマシン・ワンスモア』に出演して、幾度かその問いをいただいた。使いたいこと・・・全然出てこなくて、出てこない自分がなんとおもしろみのないと思った。んー。気の利いたことが浮かばないとしても、ほんとに一つもないのかな? そんなことないだろうと、過去への足がかりを求めて記憶の箱をひっくり返して揺さぶった。
うわあ、妹のように思い接していた赤ちゃん大の人形の姿が頭に浮かんできた。ああ、ごめんね。思い出したくないけど、ある日手放しちゃったよね。
そしてころんと、出てきた。
「お母さんに会いたい」
内なる声に驚いた。これは叶えられるものではないから口にしてはいけないと、大人へと向かう時期にずっと抑えていた一言なのだろう。母はわたしが2歳の時、胃癌で亡くなった。2歳だから、覚えている(と思われる)声や顔かたちがない。一緒に過ごしていたはずの2年がわたしには無に等しい。
母に会ってみたい。母と話がしたい。文字に起こすだけで、ぐうぅと苦しさがからだに満ちはじめ、どれだけ年を経ても脈打つ生々しい気持ちなのだと思い知る。だが、こんな欲を見つけたからといってなんなんだよ、話した人を笑わせられるわけでもなしと、気持ちと訣別しようとする自分が出てきて感情は相克する。タイムマシンがあったら、あったら、はあ、いらないよ! 壊してしまいそうだ。
新美「そんななんなって」
照屋「楽しい乗り物じゃん」
新美と照屋が宥めにやってきた。
劇の中に生きてあそぶ日々を、もうしばらく続けている。