第23回
どう
2020.03.10更新
歩きながらかんがえる。夜、ひとりごつ。
こちらへ向かってくる車の光、光、光。光の動くさまが
「ミラーボールみたい」
頭の中の暗闇で声も動く。明滅する。
「おまえはもっと自信もちな。胸をはって堂々とせい。芝居なんてヘタでええから、いつも堂々としてろ」
10年以上前に共演した俳優の先輩と、久しぶりに映画の現場でご一緒した。
撮影が無事にすべて終わったあと、別れ際にそう言われた。
普段は関西弁の先輩のことばが、なぜか懐かしく感じられた。心そのものの、あたたかい音だった。声が背筋の上から下へ通り、猫背のからだがしゃっきりした。嬉しかったのだが、しっかりとは、わからなかった。自信をもつ、ということがどういうことか。
きっと胸が下に落ちているのではなく開いていて、声が前に出ている状態なんだろうな。カメラの前や舞台の上に立っているときはできていることが、それ以外の場では、たとえば人の大勢いるところで、できないことがある。先輩はわたしの不得手を見抜いているようだった。自信をもつとはどういうことなのか、今一度わかりたい、体得したい。
ぐるぐるかんがえていたら、おなかも肩のまわりもかたくなり、からだ全体が縮こまっていることに気がついて、んんんと伸びをする。大袈裟にそりかえってみると、視界のへりが動いた。
どんなときも胸をはってか。
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