
2025年3月
ハヤカワepi文庫
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アンソニー・ドーア(著)藤井光(訳)
場所は第二次世界大戦、戦時下のフランス、サン・マロ。目の不自由な少女とドイツの少年、そして青い宝石「炎の海」。ピュリツァー賞受賞の名作です。最初から最後まで、じっくりと深い感動と共によみました。
(ミシマ社サポーター いくちゃんさん)
2025.03.24
東宣出版
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ジョルジュ・シムノン
海外文学に疎い私は、ベルギーの作家ジョルジュ・シムノンの名を知らなかった。
本書『月射病』読了後、巻末の瀬名秀明さん「解説」を読んで、初めてパトリス・ルコント監督が映画化した『仕立て屋の恋』などの原作者であることを知る。そもそも<メグレ警視>シリーズすら認識していなかった。
読書中、何度も思った。
なんだ、この面白さ。
まるでドストエフスキー『カラーマーゾフの兄弟』とカフカの長編を読んだ時のような、そして少しだけカミュ『異邦人』が加味された感じ。なんて月並みな形容ばかりが並んでしまう。ああ、やだ、と自分でも思うが、そうせざるを得ないほど表現が追いつかない。あまりに多くの感情が揺さぶられるスケールと展開、人間模様。
1933年作の本作の原題は、``le coup de lune``で「月の一撃」と訳すらしい(本書「解説」より)。
冒頭、『異邦人』を彷彿させると書いたが、カミュのこの作品は1942年である。カミュは、アラビア人にピストルを向けた理由に、「太陽」を挙げた。その10年ほど前に、植民地文学の先例があり、そこで青年が正気でいられなくなる理由に、「月の一撃」を見ていたとは!
(ミシマ社 三島邦弘)
2025.03.05