明日の一冊

2020年11月

うたうおばけ書肆侃侃房

うたうおばけ

くどうれいん

れいんさんの周りにはいろんな「ともだち」がいる。タイ料理を一緒に食べるともだち、失恋したともだち、失恋に付き合ってくれるともだち、歌人のともだち。そして、れいんさん自身がエッセイの中で、役割が変わる。女子高生のれいんさんが電車に乗っていたと思ったら、会社員のれいんさんが内線を取っている。どの世界も、れいんさんの視点で見ると、なんてことのない世界も輝いて見える。通り過ぎてしまいそうな日常の風景を鮮やかに切り取るエッセイ。

ミシマ社 岡田千聖

2020.11.20

独立記念日PHP文庫

独立記念日

原田マハ

「今日が私の、独立記念日。」産休中、ふらっと立ち寄った本屋で立ち読みし、この一文に胸をつかまれた。様々な立場や年代の女性たちが、ままならない現状に思い悩みつつ、今いる場所から「独立」をする連作短編集。登場人物たちは、何気ない日常を過ごす中で、ちょっとした「独立」のきっかけを掴んで前を向いていく。読み終えた後にはじめに紹介した一文を読むと、読む前とはまた違った爽やかな気持ちになれる。

ミシマ社 岡田千聖

2020.11.18

家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった小学館

家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった

岸田奈美

タイトルを見た時、衝撃が走った。家族ってなんだろう、とぼんやり考えて胸やけがしていた時、このタイトルを見て、自分の中の凝り固まった「家族」の概念が覆された気がした。知的障がいのある弟さんとのエピソードに始まり、お母さんが車いすユーザーになった時のこと、中学の時に亡くなられたお父さんからもらった言葉など、ユーモアあふれる家族のやり取りに、思わずくすりとさせられた。家族って、どこか重たい存在だと思っていた。でもこの本を読んでいると、その重みがどこかに行ってしまうような軽やかさがある。家族の話だけでなく、岸田さんがブラジャーを買いに行った話、甲子園球場の売り子のバイトしていた話など、笑いが盛りだくさんで、明るい気持ちになれる一冊。

ミシマ社 岡田千聖

2020.11.16

もの食う人びと角川文庫

もの食う人びと

辺見庸

飽食の日本を飛び出して、世界の国々で残飯やジュゴンに食らいつき、なにをどんなふうに食べるかでその人を知っていく。食で人と交わった記録。ほんとうにある未知の世界を、辺見さんの視点で疑似体験できます。本に込められている思想の半分も理解しきれてないんだろうなぁと思いますが、そんな私にもスルスル入ってきて、五感にピリピリ伝わってくるような文章です。読むたび染み込んでくるものが変わるので、何度も読むのもおすすめです。

『ちゃぶ台6』デザイン補助 松本千紘

2020.11.13

どこにでもあるどこかになる前に。〜富山見聞逡巡記〜里山社

どこにでもあるどこかになる前に。〜富山見聞逡巡記〜

藤井聡子

書名に惹かれて手に取ったこの本は、上京していた著者が30歳目前に故郷へ戻るが、そこはいまだ古い慣習に縛られていて再開発によって「どこにでもある」町になろうとしていた。「何者にもなれなかった」と富山で奮闘する姿は、一旗揚げて何者かになることを目指すのが当然だという価値観をいつの間にか植え付けられていた同時代の背景にも考えを巡らせることができました。まわりの人たちとの関わりの中で、ほかの誰でもない自らの人生を切り開いていく姿に勇気付けられます。

『ちゃぶ台6』デザイナー 漆原悠一

2020.11.11

おやときどきこどもナナロク社

おやときどきこども

鳥羽和久

子どもたちを均一的な価値観に押し込めるのではなく、たくさんの凹凸を持った一人ひとりの個性的な人間たちなのだと誠実に対峙する姿にハッとさせられました。思春期の複雑な感情をうまく表現できない子どもたちに対して、著者は決してはぐらかしたりせずに正面から真摯に向き合って一緒に悩みながら考えている。子どもがまわりの友だちと「違う」ということを否定的に捉えずにむしろその違いを大切に育んであげたいと思える一冊。

『ちゃぶ台6』デザイナー 漆原悠一

2020.11.09

裏を見て「おいしい」を買う習慣主婦の友社

裏を見て「おいしい」を買う習慣

岩城紀子

添加物の多い食品はなるべく避けたい・・・。でも高くても本当においしいものは買ってしまう。著者は私たちが「おいしい」と思うものを買い続けることで、それを作るメーカーも残っていくといいます。少しずつでもやっていきたいことに気付かせてくれる本です。

(ミシマ社サポーター 深澤香里さん)

2020.11.04

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