明日の一冊

2020年1月

河童のスケッチブック文春文庫

河童のスケッチブック

妹尾河童

河童さんのコレクションと好奇心を覗くことができます。どこから読んでもためになります。絵も文字もすべて手描きな「ヨーロッパ」「インド」「日本」もおすすめです。特にインド、知らないことばかりでした。

(ミシマ社サポーター 伊良部恵美子さん)

2020.01.17

一色一生講談社文芸文庫

一色一生

志村ふくみ

この道しかないと自分が思い定めた道を真摯に歩いた人が書いたこの本に、深い敬意を感じます。物を作る者としてのとしての奮闘と覚悟が胸に迫ってきます。本当にかっこいい!

(ミシマ社サポーター 初田和美さん)

2020.01.13

つらいと言えない人がマインドフルネスとスキーマ療法をやってみた。医学書院

つらいと言えない人がマインドフルネスとスキーマ療法をやってみた。

伊藤絵美

生きづらさに絡みつかれている方に贈りたい心理療法の読み物です。プライドが高すぎる俺様系医師と、「いい人」でつい自分を助けるのが後回しになりがちな臨床心理士が、マインドフルネスのトレーニングとスキーマ療法のカウンセリングを受けながら、つらさに向き合ったり、感情を素直に出せるようになっていく姿が描かれています。 とくに、「スキーマ」と「自動思考」という概念は、生きづらさを抱えている人に知っていだきたいです。「生きづらさ」をいったん自分から切り離して、客観的に捉えることに役立つはずです。興味のある方はぜひ!

ミシマ社 須賀紘也

2020.01.11

仕事は楽しいかね?きこ書房

仕事は楽しいかね?

デイル・ドーテン(著) 野津智子(訳)

表紙の絵がとてもかわいくてたまらない。
大雪で閉鎖になった空港で、偶然出会った老人が仕事に悩む主人公の相談に乗ってくれるというお話。
印象的だったのは、その老人が仕事の話をしている途中で、見ず知らずの子どもたちの遊び相手をしているシーン。
彼の頭の中では「子どもたちと遊ぶこと」と「仕事について考えること」がどこかでゆるやかにつながっているように見えて、とてもしなやかな姿勢だなと感じました。
そして「自分が苦手なことやストレスを感じることの中にこそ新しい発想のヒントが隠れているよ」と優しく語る老人。
ああそうだなぁ。うん。前を向こう。昨日より1mmでも変化していれば大したもんだよ。
読み終わって表紙の老人の絵を見ながら、じんわりと氷が溶けていくような感覚を覚えました。

ミシマ社 舘雄佑

2020.01.10

声の力岩波書店

声の力

河合隼雄、阪田寛夫、谷川俊太郎、池田直樹

詩人・臨床心理学者・童謡作家・声楽家の4人よる講演録がもとになったできた本で、普段は無意識に使っている「声」の面白さをそれぞれの立場から語り合います。谷川さんや河合さんの幼少時代の思い出であったり、「読み聞かせ」よりも、からだを通した「語り聞かせ」のほうがいいという話だったり、声というのは、聴覚以前に触覚的なものという話だったり。目から鱗のエピソードがありすぎて、たくさん線を引きました。声について語った本から、本当に4人の声が聞こえてくるように感じるのも不思議です。

ミシマ社 田渕洋二郎

2020.01.09

現地嫌いなフィールド学者、かく語りき。創元社

現地嫌いなフィールド学者、かく語りき。

吉岡乾

いたって真顔(のような文体)で、さも普通のことを言っているような落ち着きで、笑っちゃうようなことを淡々と言ってくる人(の本)が好きだ。私が単に笑い上戸で、実際本人は笑わせようなんて微塵も思っていないことに私が笑いくらいついているだけだとしたらそれまでだけど、そういう人はたいてい、めちゃくちゃ笑わせにかかってきているが故に冷静に語りかけてくる。この本を読んで、吉岡乾さんも絶対そうだと根拠なく確信し、一冊かけて存分に笑った。『なくなりそうな世界のことば』著者による、豊かなフィールドノート。マメイケダさんの挿画も絶品です。

ミシマ社 編集チーム 野崎敬乃

2020.01.08

おいしいものには理由があるKADOKAWA

おいしいものには理由がある

樋口 直哉

「おいしいもの」がなぜおいしいのか。その背景を、調理や素材の話を超えて、文化や産業、歴史、自然環境まで深く掘り下げた本。作家であり料理人である著者の緻密な取材から、食と人間の営みの強い結びつきが浮かび上がる。

ミシマ社 岡田森

2020.01.07

敗者の生命史38億年PHP研究所

敗者の生命史38億年

稲垣栄洋

「弱肉強食」とはよく言うけれど、生命のなが~い歴史をたどれば、実はむしろ敗者が生き残り、命のバトンリレーに成功していた......って、え? マジデスカ...? あまりにダイナミックな生物進化のお話に衝撃を受けつつも、だんだんなんだか元気が湧いてくる一冊。敗者の末裔として、ヒトはどれだけ敗者であり続けられるのか、問われている気がしました。勝とうとするから滅びるんだ。

ミシマ社 営業チーム 池畑索季

2020.01.06

おしゃべりなたまごやき福音館書店

おしゃべりなたまごやき

寺村輝夫(作)、 長 新太(画)

ある朝「やらかし」てしまった王さま。まさか犯人が主人だと思っていない家来たちは、てんやわんや。自分の失敗を隠すために、ウソをついたり、ズルをしたり、はたまた冷や汗をかいたり。ギャグ漫画のような展開と、人間味あふれる王さまの姿がおもしろく、ひとりで読んでいても、どこかから「くすくす」と子どもの笑い声が聞こえてくるような、そんな楽しい絵本です。すごく個人的な話ですが、どうしてこの本が去年のベストだったかというと(今週はみんなそのテーマで選書してます)、作者の寺村輝夫さんが、小学生のとき大好きだった本も書いていたということに、今回はじめて気づいて、自分が好きなものってずっと変わらないんだなぁ、となんだかうれしくなったからでした。

ミシマ社 仕掛け屋チーム 長谷川実央

2020.01.05

夏物語文藝春秋

夏物語

川上未映子

とにかく傑作だった。関西弁、いや、川上未映子弁が素晴らしい。これはなんやの、ほんまにすごい本。

いろんなところに書評や川上未映子さんのインタビューが出ているので、あらすじが気になる人はとりあえずググってください。以下は読んだ私のうずまく思いです。

「授かる」ものだった子どもが、生殖医療の発達により「つくる」ものになった。そこには人間(というか女性)の意志が介在して、産む/産まない を選ぶものだと、現代の私たちはそう思っている。
これだけ出生率が低下していても、産まない女性への「なんで産まないの?」という圧は大きい。「なんで産んだの」とは言われないのに、産まないとその理由を問われるのはなぜ? 産むことが圧倒的善とされるのはなぜ? そして産んだら産んだで、「自分で決めて産んだんだから」とか言われるのはなんでやねん。そういうことを、川上未映子は全部ぜんぶ書いている。
子を産むことの取り返しのつかなさ、そこに孕む暴力性をつきつけられる。
そして私は漠然と思ったのだった。妊娠出産はどこまでも女のはなしなんだなと。自分が感じた、果てしのない孤独が腑に落ちた。そしてそれを、川上未映子は知っている、ということに、私はとてもホッとしたのだった。

ミシマ社 新居未希

2020.01.04

わたしを支えるもの すーちゃんの人生幻冬舎

わたしを支えるもの すーちゃんの人生

益田ミリ

書かれていることを自分に染み込ませたくて、息を潜めるようにゆっくりページをめくった一冊です。40歳になったすーちゃんの日常には、大事件が起こるわけではないのですが、自分の心が感じる小さな違和感を流さずにひとつひとつ向き合い、わたしを支えるもの、そしてわたしが支えるものを見出していくその過程には、ある種の荘厳さすら感じました。

ミシマ社 編集チーム 星野友里

2020.01.03

熱源文藝春秋

熱源

川越宗一

明治から第二次大戦が終わるまでの時代、主に樺太(サハリン)を舞台に物語は描かれる。その時代に翻弄されながらも懸命に生きる登場人物たち。そのほとんどは実在した人たちだという。そこからこのようなスケールの物語(フィクション)が編まれたことに感動した。著者が描く人物たちの交わす会話、描写がとても生き生きとしていて、一気に読んだ。この壮大な群像劇から浮かび上がってくるのは、近代という時代の理不尽さ。それが、登場人物たちの熱とともに、現代を生きる私の胸にまで迫ってきた。オススメの一冊です。

ミシマ社 営業チーム 渡辺佑一

2020.01.02

マリアさまリトルモア

マリアさま

いしいしんじ

いしいさんの小説を読むと、現実と異界の境界線が薄れてきます。その意味で、昨年、眠る前に一編ずつ読む時間は、こりかたまった現実への執着をほどく、これ以上ないしあわせなひとときでした。それにしても、途中、いしいしんじ、山極、朝吹真理子、など実在の人物名が出てきて、、あれ、これってエッセイ? 小説? と思った瞬間、そうして「分ける」こと自体、意味ないでしょ。と小説が語りかけてきたのでした。

ミシマ社 三島邦弘

2020.01.01

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