明日の一冊

2021年4月

荒野の古本屋小学館

荒野の古本屋

森岡督行

好きを極めたノンフィクションが確かな温度をともなって胸に響きました。建物や写真集の見え方が変わりそうです。解説の酒井順子さんの言葉にある「抜き差しならない関係」をまさに求めつくろうとしている私にとって、インスピレーションを与えてくれる本です。

(ミシマ社サポーター ちゃぶダイニング)

2021.04.12

背中の記憶講談社

背中の記憶

長島有里枝

今回選んだ3冊はいずれも写真・写真家をめぐる本になりました。プロとして活躍する日本人写真家はなぜか言葉が饒舌で文章の上手い人が多い。なかでも昨年写真関係者に話題を振り撒いたジェンダー写真論『「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ』を上梓した長島さんの小説デビュー作である本書は圧巻。
小説なのに写真以上に写真を思わせる描写は読者の誰もが自分の幼少期の体験とも重なるような箇所があり、頁を開くたび「カタカタ」と記憶のスライド上映がはじまります。

「本」のお店スタントン 田中利裕さん

2021.04.09

出来事と写真赤々舎

出来事と写真

畠山直哉・大竹昭子

東日本大震災から10年が経ち、あらためて読みたい一冊。コロナ禍になり数冊刊行された「カタリココ文庫」での対談シリーズもそうですが、大竹さんの質問→回答への咀嚼→次の質問への展開が見事。震災で母親と同時に故郷を失くしたことで、作風が以前よりも「個人的」になった写真家・畠山氏の言葉を引き出しながらも、自らを引き出される様子が即興演奏のようにスリリングで読み応えのある写真論。

「本」のお店スタントン 田中利裕さん

2021.04.07

まほちゃん河出書房新社

まほちゃん

島尾伸三

先日発売されたばかりのしまおまほさん著『家族って』(河出書房新社)を受けてやはり紐解きたくなったのが本書。作家・島尾敏雄の長男で写真家・島尾伸三氏による愛娘「まほちゃん」の成長の記録写真。島尾家の家族構成、家の間取り、落書きや読書風景などからおおらかな子育ての手本を見るようであり、その姿は現在未婚の母として奮闘するまほさんへと確実に受け継がれているようです。

「本」のお店スタントン 田中利裕さん

2021.04.05

戯れの魔王文藝春秋

戯れの魔王

篠原勝之

KUMAさんによる、中編小説集。一作一作が、彫刻刀で削りだされたような骨太なインパクトのある作品で、つい編集者目線になって、「こんな重量感がある作品を先に出してしまって、全体のバランスは大丈夫なのだろうか」と思ってしまうのですが、最後の一作にいたるまで、全編に生命が感じられて圧巻でした。孤独を生きることに希望を感じるような、そんな一冊です。

ミシマ社 編集チーム 星野友里

2021.04.02

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