2019年12月
ちくまプリマー新書
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『はじめての三国志 ─時代の変革者・曹操から読みとく 』
『三国志演義』以来、吉川英治に至るまで、蜀の劉備、諸葛孔明を主人公に描かれてきた「三国志」。が、サブタイトルの通り、「時代の変革者・曹操から読みとく」と、まったくちがう「史実」が浮かび上がります。たとえば、曹操が陏唐律令制度の起源となる税制改革をおこなった、その革新性があまりに早すぎたため「姦雄」と描かれがちだった。日本は随唐から律令制を学んだわけで、もとをたどれば曹操に行き着くわけですね。ところで、かの有名な「天下三分の計」の考案者は、諸葛孔明ではなく、呉の魯粛だったとは!
2019.12.02
2018年12月
文春文庫
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『コンビニ人間 』
自分の生き方や働き方は誰かに教えてもらうものではない。なぜなら自分が一番よく知っているから。答えを探すよりも、衝動的になれるものをやったらいい。みんなどこか変わっているし、合わせなくていいんじゃないか。惚れ惚れするほど面白いストーリーの中に、そんなメッセージも込められているように感じました。まず読んでほしい。話はそれからだ。芥川賞!
2018.12.28
筑摩書房
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『自分の仕事をつくる 』
『就職しないで生きるには』が古典だとすれば、これは自分たちの世代がもっとも影響を受けた本です。出版して15年。なんと6万部!きっとずっと売れ続けている本なんだと思います。ぼくの『生きるように働く』にも登場しますし、この本がなければ日本仕事百貨もpopcornもしごとバーも生まれてなかったでしょう。歴史的1冊!
2018.12.26
晶文社
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『就職しないで生きるには 』
生き方や働き方を考える本は数多くある。多くは「人生には3つの法則があり、これを守ればうまくいきますよ」とか「人生うまくいっているんだけど、その理由知りたい?半生を書きましたよ」とか「新しい働き方、見つけた!」とか、答えありきの本が多い。でもこの本に答えが用意されているわけではなく、就職しないで生きている人たちをただ紹介しています。きっと登場人物の誰かに感情移入できるはず。超古典!
2018.12.24
WAVE出版
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『みんな 』
会社のデスク横に置いているこの一冊。一日中パソコンに向かって仕事をして、体が凝り固まってしまったとき、この本を眺めています。編集は野分編集室の筒井大介さん、装丁は大島依提亜さん。きくちちきさんの色の使い方、吸い込まれるような色の重なり方、激しくて繊細な手の痕跡、それが素晴らしくて読むことに没頭できる絵本です。
(ミシマ社 野崎敬乃)
2018.12.19
青幻舎
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『フィリップ・ワイズベッカーの郷土玩具十二支めぐり 』
来年の干支を意識する季節に、愛嬌あるデッザンに目が止まった。フランス人アーティストが日本全国の十二支にまつわる郷土玩具の作り手を訪ねた探訪記。子から亥まで、十二支の順番で並ぶ本の中で来年の「亥」は大トリをつとめていた。最近は、夜寝る前のほんの少しの時間にもっぱらこれを読んでいる。
(ミシマ社 野崎敬乃)
2018.12.17
現代企画室
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『大いなる歌 』
チリの国民的詩人パブロ・ネルーダが約13年かけて執筆し、1950年に刊行された大作『大いなる歌』。自らのルーツを見つめ直し、アメリカ大陸全土の歴史的な宿命を問うている。裁判所から1948年に逮捕令が出て、警察の手を逃れ潜伏する期間に、詩の大半が書かれた。「万物の歌」とも訳せる題が示す通り、この一冊があらゆることをやり尽くしたような、壮大なる射程の広さを備えている。茫然とするほど、素晴らしい。2018.12.07
書肆山田
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『カヴァフィス全詩 』
註釈で池澤夏樹が「覇気の片鱗もなく疲れきった魂」と書いている。もしかしたら、カヴァフィスのすべての出発点はそこにあるのではないか。窓を探しても、見つからない。単調な日の後に、また単調な日がくる。気付かないうちに壁が築かれ、外の世界と隔絶されてしまう。真実というのは、そうしたことの中からしか生まれ得ないのかもしれない。
2018.12.05
月曜社
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『詩集 』
マラルメが亡くなった翌年刊行された『詩集』の全訳に作家自身の解題が付してある。小野寺健介による装幀が美しい。マラルメの詩は鳥と風から成っている、と言ってもいい。ただそれらは、幻のようでもあり、かりそめでしかない。詩「小曲」の一節「その鳥を聴くことは生きているうちに二度とない」。一度きりの事態に、身を任せていたい。
2018.12.03