第14回
暖ドリ! 寒さを乗りきる 暖のとりかた (後編)
2020.01.13更新
こんにちは、ミシマガ編集部です!
寒い日が続いております。来月もきっと寒いです。このまま寒い日が続くだなんて、考えただけで気が遠くなります。
そんな寒い日々をどう乗り越えるか? そんな疑問に答える記事を、昨日に引き続き、「旧ミシマガジン」より復活いたします!
2013年の冬、『女たちが、なにか、おかしい おせっかい宣言』の著者で現在もミシマガ上で『おせっかい宣言』を連載中の三砂ちづる先生に、寒い冬を乗り切る方法を伺いました!
暖ドリ! 寒さを乗りきる 暖のとりかた
※本記事は、「旧みんなのミシマガジン」にて、2013年12月16日〜12月17日に掲載されたものです。
「なんか、寒い・・・」
「外はポカポカ暖かいのに・・・」
「絶対このオフィスの中、外より寒いよね・・・」
ミシマ社自由が丘オフィスで毎年恒例で繰り返されるこの会話。
その寒さは真冬になると社内でダウンコートを着用するメンバーまで出現するほどです。
そんな、すきま風吹きすさぶ自由が丘オフィスのメンバーと、寒風吹きすさぶ京都で越冬をしなければならない京都オフィスメンバーの切実な要望から、「暖ドリ」上段者の方々に、身体を温めるあの手この手を教わり、ミシマガ読者の方々にもお伝えしてみんなで冬を乗りきろう、企画が立ち上がったのでした。
お話をうかがったのは、三砂ちづる先生(津田塾大学教授)。普段から着物を身につけられて、いろいろとラディカルな実践を積み重ねて日常生活を送られている、実践の達人です。
どんな「暖ドリ」話が飛び出すのか・・・。
髪の毛は2週間に1回しか洗わない
三砂 お風呂の話をもう少し続けますと、私、身体も石鹸をつけて洗うのやめたし、髪の毛もほんとに洗わないんです。2週間に1回くらいしか洗わなくなっちゃって。
―― エッ、2週間に1回ですか?
三砂 シャンプーも使わないんです。シャンプーを使わなくなると、髪が健康になるんですよ。これ、別に私が始めたことじゃなくて「シャンプーレス洗髪」っていって、ハリウッドの女優さんなんかもやっているみたいなんですけど。
―― そうなんですか。
三砂 髪の毛がベタっとしゃちゃうのは、シャンプーの使い過ぎなんです。だから本当はお湯だけでいい。1カ月に1回美容院にいくので、その時はシャンプーしてもらいますけど、それくらいですね。あとは「冷水摩擦」として手ぬぐいを固く絞って、髪の地肌をきれいにふく方法も高岡英夫先生におそわりました。
―― そんなに少なくて大丈夫なんですね。
三砂 で、髪を洗わないっていうのは、身体を冷やさないっていうことなんですよ。お風呂に入っても、一生懸命身体を洗って、一生懸命頭を洗ったら、その間に冷えますもん。私、今お風呂にいってやることといったら、温冷交互浴くらいです(笑)。
―― たしかに、疲れていて、お風呂上がりに髪の毛が濡れたまま寝ちゃったりすると、そこから完全に冷えちゃいますね・・・。
三砂 髪薄くなりますよ、そういうことしてると(笑)。今の70代の人ってけっこう髪が薄いんですね。その世代の女性って日本で初めて毎日洗髪するようになった時代の人なんです。昔の女性はまず石鹸で髪を洗うなんてことはしなかった。髪が傷みますからね。でも、それを企業さんたちが頑張って、石鹸を使わせるようにして。今の人は「朝シャン」もしてくれるから、シャンプー会社は、ご利益のためによろしゅうございますけど(笑)。
―― フフフ(笑)。
三砂 私、今23歳の息子がいるんですけど、けっこうおしゃれな子で、髪の毛もワックスとかいろいろつけてたんです。でも彼もシャンプーをやめたら、髪にコシがでてきて、ワックスもいらなくなったって。
―― へぇー!
「変わっている」と言われたって全然平気だ!
三砂 だから温冷交互浴がいいっていうのは、そんなに一生懸命に髪や身体を洗って身体を冷やさないっていうのがセットですね。
―― なるほどなるほど。
三砂 顔も、一回オイルクレンジングして、そのあとは水ですすぐだけっていうのを推奨してるお医者さんもいらっしゃいますよね。私も顔は朝晩、水でしか洗いません。身体も全然こすらない。お湯で汚れは落ちます!
―― そうなんですね。
三砂 だからそういうのをいろいろ組み合わせての、温冷交互浴なんです。なんだか、お風呂がだんだん簡単になっていくね(笑)。石鹸とかシャンプーとか、そういうものも、私にとっては「お薬」みたいな感じです。時々必要だと思ったら使うかもしれないけど、ルーチンで使うものじゃなくなりましたね。そっちのほうが楽だし(笑)、肌の調子もよくなりました。
―― いろいろと目からウロコです。
三砂 なんというか、着物を着てると、自分が変わってる、変人である、ということを自覚しますから、おかしいって言われるのが平気になります(笑)。風呂で水をかぶろうが、シャンプー使わなかろうが、ぜんぜん平気だ!みたいな。そういう意味で、生き方へのラディカルさがいろいろなことを試すときのハードルをさげますね(笑)。
―― たしかにラディカルですね(笑)。暖房とかストーブでの「暖ドリ」ではなくて、身体を使った「暖ドリ」ですよね。
もっと安くて、みんながあったかくなる方法、あるのに!
三砂 私、でもね、基本的にはこの貧乏くささみたいなのが嫌いなんです。
―― 貧乏くささ?
三砂 ヨーロッパとかアメリカとかで暮らしたことがある方はおわかりになるかと思いますけど、欧米の暖房って基本的にセントラルヒーティングなんですよ。
―― セントラルヒーティング・・・?
三砂 たとえばイギリスの家には、ギザっていう大きい温水タンクがあるんです。で、そこから家中に配管が回ってて、ラジエーターみたいなのが家中あって、そのプラグを開けておくんです。家全体を温水であっためているから、廊下まであたたかくしていても電気代は変わらないわけですよ。
―― なるほど。
三砂 西欧では、外がいくら寒くても、家の中はどこでもあったかいから、中にいるときは半袖で暮らせるんです。で、日本は基本的に、建物全体をあっためるっていう発想がなくて、パーシャルヒーティングなんです。火鉢にこたつ、みたいな。今はそれがストーブやエアコンになったにすぎませんから。
―― たしかに・・・言われてみるとそうですね~!
三砂 だから夜は寒いんですよ。戸を開けたら寒いし、トイレに行ったら寒いし。北海道以外は、どんなに雪が降る地域でもパーシャルヒーティングなので。とにかく家の中が寒いんです。
私たちの国は豊かになったって言われてるけど、ほんとに豊かな国がどのように生活してるかを、日本人は知らないように思います。もうこれから景気もどんどん悪くなっていくなかで、あ~、とうとう暖かい家の一つも手に入れられないまま日本は没落していくんだな~、大変悲しいものだな~と思ってます。
―― そういうふうに考えてみたことがなかったです。
三砂 家全体があったかければ、身体はあたたまるので、外に出ても全然寒くない。そういう意味では、質素がいいとか、昔がいいとか、そういう美徳の次元の話ではないんです。日本は一時期経済的に豊かになったと言われるけれど、それはほんとうの意味での国民の生活の向上には役立たなかったんだ、と私は思います。
三砂 なんでそんな我慢大会みたいなことしなきゃいけないんだ! もっと安くて、みんながあったかくなる方法、あるのに! と思うんです。ほんとの豊かさを考えたときに、「ものがたくさんあるんじゃなくて、心の豊かさが大事だ!」とか、そんな精神論ではなく、「冬はあったかいのがいい!」と、そういう話です(笑)。
***
お会いしてその笑顔をに出会うたび、ほっとした気持ちになって元気をいただく三砂先生。つねに身体を使って実践して、その体験をシェアしてくださいます。先生体験実証ずみの「暖ドリ」術、みなさまどうぞお試しください!
1958年、山口県生まれ。兵庫県西宮市で育つ。1981年、京都薬科大学卒業。1999年、ロンドン大学PhD(疫学)。津田塾大学国際関係科教授。著書に『オニババ化する女たち』『月の小屋』『不機嫌な夫婦』『女を生きる覚悟』など多数。本連載の第1回~第29回に書き下ろしを加えた『女たちが、なにか、おかしい おせっかい宣言』(ミシマ社)は2016年11月に発売になっている。