第14回
大阪の初田さん
2022.08.09更新
2020年の秋、子どもの本専門店「メリーゴーランドKYOTO」のギャラリースペースをお借りして、「ミシマ社のヒミツ展」というちいさな展示をしました。今月ご登場いただくサポーターさんも展示を見に来てくださったのですが、その時に何気なくおっしゃった一言が、ずっと心に残っています。「今日は家族が子どもを見てくれているので、久しぶりに時間ができたんです。今しかない!と思って。」
ミシマ社にも、同じ年ごろの小さなお子さんがいるメンバーたちがいます。仕事に、子育てに、自分自身のことに、試行錯誤の日々を過ごしている様子をそばで見たり聞いたりしていたので、「ああ、そういうなかで、大切な時間にミシマ社の展示を楽しみに見に来てくださったんだ」と感激しました。みなさまきっと、日々いろいろある中で、私たちの活動を応援してくださっているんだろうと思うと、サポーターさんには感謝の気持ちでいっぱいです。今月は、そんなサポーターさんの「日々いろいろ」の大切なお話です。
サポーターNo.696 初田和美さん(大阪府)
こんにちは。サポーターの初田和美です。大阪府茨木市に住み、自転車で行ける距離に「太陽の塔」が建つ万博記念公園があります。府立の支援学校に勤めていますが、約3年前に長男を、今年5月に長女を出産して、現在は育児休業中です。
ミシマ社のサポーターになったのは長男が生まれる年のことでした。それまでも寺子屋ミシマ社や、森田真生さんの数学ブックトークなど、時々イベントに足を運んでいたのですが、産後はそれも難しくなるかも・・・という思いと、誰かを応援することが、自分自身を励ますことにもなるという予感がしたからでした。それはその通りで、毎月届くミシマ社からの贈り物は、育児に奔走する日々で、束の間、母ではない自分になることができる貴重な時間になっています。
サポーターの毎月のお便りは、大事にファイリングしています。
もともと書くことが好きで、子どもの月齢ごとに印象的だった言葉や出来事を書き留めています。その記録の旗印として掲げているのが、友人に教えてもらった俵万智さんの短歌です。
「最後とは知らぬ最後が過ぎてゆくその連続と思う子育て」
子育ては切れ目のない連続した時間だけど、いまこの瞬間はこれで最後かもしれない。子どもの成長をうれしく思うのと同時に、失われていく時間があることを知りました。
子育て記録の見返しに書いた短歌
森田真生さんの『数学の贈り物』にある言葉は、慣れない新生児の世話に翻弄され、寝不足でいろんな感情がない混ぜになって、意味もわからず泣けてくるような日常で、何度励まされたかわかりません。
「この『いまのいま』にある、絶対のめでたさをこそ喜べ。」「遠く、難しい場所にだけ価値があるのではない。すべての人が、いまいる場所で、大切なものをすでに与えられている。」
ややもすると子どもとの世界に籠りがちになる日常に、風を吹き込んでくれたのは、本にある言葉でした。言葉をまだ持たない彼は、これからどんな風に言葉を獲得していくんだろう・・・それが私の目下の関心事になりました。
息子が生まれて3か月になる頃、こちらが話しかけると、彼もそれに応えるように「むにゃむにゃあんぐー」と喃語で返すようになってきました。それが一人前に会話しているような、すごくいい顔なのです。そうか、言語を話さないということが、言葉を持たないということではないんだなと感じた出来事でした。
1歳半を過ぎると、言葉がどんどん増えていきました。ある日の夕食、鶏肉のホイル焼きを「今日はとりさん」と出すと、息子が「ちゅんちゅん」と言っていて、なんだかおもしろいような、切ないような。2歳になると、二語文が話せるようになり、覚えた言葉を追いきれなくなってきました。実家の親が家に遊びに来た時に、息子が「ママ ドアこわした」「おじさんなおした」「きれいなった」と言うので、「えーなになに?」となって、私が風呂のドアを壊したことがバレるという珍事がありました(珪藻土マットを移動させた時に手が滑って、ドアの面材を割ってしまいました)。
もうすぐ3歳になる現在は、目に映るもの、耳に聞くものを、拙いながらも片っ端から言葉にしています。「○○ってどんなこと?」と尋ねることも増えてきました。先日は自分の足を見ながら「足が裸んぼ」と言うので、「『はだし』って言うんだよ」と教えると、目をキラキラさせて「ママもはだし?」と繰り返していました。
長女が生まれ、夫婦にとっても、息子にとっても、新しいフェーズに移ったように感じます。家族四人での生活はまだ始まったばかりですが、これからも腹を抱えて笑い合える瞬間がたくさんあるといいなと願っています。
『数学の贈り物』以外にも『胎児のはなし』『46歳で父になった社会学者』など、ミシマ社には子育てに触れるいい本がたくさんあります。本の感想や、自分の子育てのこと、自分と親とのことなど、いつかサポーターのみなさんのお話も聞いてみたいです。
編集部からのお知らせ
2022年度のサポーターのご案内
ミシマ社では、私たちの出版活動を応援してくださる「ミシマ社サポーター」を募集しています(詳細はこちら)。サポート期間中はミシマ社から毎月、ささやかな特典をお届けいたします(中身は月によって変わります)。
【サポーター期間:2022年4月1日~2023年3月31日】
*募集期間以降も受け付けておりますが、次年度の更新時期はみなさま2022年の4月となります。途中入会のサポーターさまには、その年の特典をさかのぼって、すべてお贈りいたします。
サポーターの種類
下記の三種類からお選びください。サポーター特典は、毎月、1年間お届けいたします(中身は月によって変わります)。
※特典の内容は変更になる場合もございます。ご了承くださいませ(写真は前年度のものです)。
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