月刊ちゃぶ台

第29回

雑誌『ちゃぶ台』って、どんなことを「特集」してきたの?(前編)

2022.09.07更新

 みなさんこんにちは。ミシマガ編集部です。
 ミシマ社が2015年に創刊した雑誌『ちゃぶ台』。現在は「生活者のための総合雑誌」を謳い、半年に一度刊行しています。
 今年12月刊行予定の『ちゃぶ台10』では、特集に「母語ボゴボゴ、土っ!」を掲げることになりました。
 私たちの生活を支える「母語」についてじっくり考えるため、明日は「ちゃぶ台編集室」と題して、こんな公開インタビューも行われます!

【9/8(木)19:00~開催】
「編集長が訊く! サコ先生、『母語』ってなんですか?」

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<出演>ウスビ・サコ(聞き手:『ちゃぶ台』編集長 三島邦弘)

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 創刊以来走り続けてきた『ちゃぶ台』も、いよいよ節目の10号。
 ・・・といっても、そもそもこれはどんな雑誌? と思われている方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
 編集部の予感をもとに、そのときどきで最も気になるテーマを「特集」に掲げる。そして、その道の最先端を行く方々に対談いただいたり、新しいことが試みられている現場へと取材に赴いたりする。すると、少しずつ、一冊の雑誌が生き物のように生成していく。それが『ちゃぶ台』のつくられ方です。
『ちゃぶ台』がこれまで大切にしてきた視点や、雑誌としての立場が端的に表れるのは、各号の特集といえるかもしれません。
 そこで本日のミシマガでは、『ちゃぶ台』創刊時からこれまでの特集をふりかえります!

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その1 「移住×仕事」号

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『ちゃぶ台』創刊号の特集は、「移住×仕事」。
「移住」と「仕事」の組み合わせは、ちゃぶ台の原点と言えそうです。
 今では定番となっている周防大島レポートは、この号の「島のむらマルシェ」レポートからスタートしています。
 命、そして土に触れ合う暮らしを行う人の声を聞いて、都市集中の社会や当たり前のシューカツから視点をずらそうと試みる、そんなちゃぶ台の文化は創刊号からスタートしています。

土本来の力で育てるという農業をしたいんです。いったんこうした畝ができれば、あとは、何を植えても勝手に育っていくんです

―― 「周防大島の二日間〈2日目〉」より、宮田正樹さんの言葉

【こんな記事が読めます】
内澤旬子 移住してわかったこと
中村明珍・内田健太郎 移住してみて
バッキー井上 就活生に告ぐ! 君はバッキー井上を知っているか
井川直子×福本伸也 シェフに「なる」そして「つづける」
甲野善紀 今までにない就活をする

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その2 革命前々夜号

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 第2号のテーマは「革命前々夜」。革命前夜の、そのまた前夜? な、な、なにが始まるんだ? というゾクゾク感。
 当初の企画では「食×会社」号となる予定だったのですが、取材をしていくうちに、さまざまな方から「革命」という共通のキーワードが浮上! そこでこの特集タイトルになりました。
 本号に掲載されている藤原辰史さんの「縁食論」をもとに『縁食論』という本ができ、平川克美さんがインタビューでお話されていたことから、時を経て『共有地をつくる』が誕生しました。「縁食」も「共有地」も、いまでは多くの実践者から熱い支持を得ている言葉。前々夜の動きは確実に実を結びだしているのかもしれません。

もともとの言葉の意味に帰るような小さな動きが(中略)静かな革命として各地で起こっているような気がしています

――「集団として生き延びていくために」より、鷲田清一さんの言葉

【こんな記事が読めます】
平川克美 株式会社の終焉
藤原辰史 縁食論――孤食と共食のあいだ
宮田正樹 命をつなぐ仕事を
小野邦彦 ブレのある野菜を流通・販売する
鷲田清一 集団として生き延びていくために

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その3 「教育×地元」号

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 なんとか走り出し、奇跡の(?)2号目も発刊できた雑誌『ちゃぶ台』。
 今後もこのプロジェクトは持続しうるのか? 命運を分ける第3号のテーマは、「教育」と「地元」でした。
 学校教育、このままでいい? 新しい学校をつくろう! この号は、そんな熱を原動力に編まれました。
「教育」と「地元」について考えることは、「自分たちが生き生きとできる場をつくること」につながる気がします。教室の机に張り付いて学ばなくてもいい、同級生と同じように言葉や身体を使おうとしなくたっていい。これからの時代を生きる力は、外に飛び出し、自分の居場所に出会うことからはじまります。

educationはeduceという言葉からきていて、能力を外に(e-)導く(duce)という意味がある。だから、個人が天から授かった資質を「発育」するというのが本意なんだけど、日本ではこれが「教育」と訳され「教師が学生を教え育む」という言葉になってしまった。だから、まず教育のとらえ方をeducationに引き寄せなければいけない

――「『先生・生徒』の枠組みがなくなる 対談・瀬戸昌宣×森田真生」より、
瀬戸昌宣さんの言葉

【こんな記事が読めます】
周防大島サマースクール・レポート
小田嶋隆 幼稚園中退の真相ーー私が「ふつうの子」に変わるまで
瀬戸昌宣×森田真生 「先生・生徒」の枠組みがなくなる
堀部篤史  聞き書き・木村俊介 地元的なるもの
千松信也の野生生活 実践編
山極壽一 森林動物として不確かなことを不確かなままに

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その4 「発酵×経済」号

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 平川克美さんが『21世紀の楕円幻想論』で問いかけたのは、「めざすべきは、正円じゃなく、楕円。もうひとつの焦点をいかにしてつくるか?」。
 田舎と都会、資本主義と贈与経済、敬虔と猥雑、身体性とデジタル性・・・。「AかBか」という二者択一的ではなく「AもBも」。ひとつの答えにすがりつかず、「もうひとつの焦点」を探り続けることで、社会をしなやかに生きるヒントと出会えるのではないか。
『ちゃぶ台』第4号では、そのひとつの答えとして「発酵」と「経済」を見出し、探っていきます。
 効率優先のサイクルに呑みこまれるのではなく、見えていなかったものに目を向けることで新たな調和が生まれる。それはたとえば「菌」のように、作り出すのではなく「すぐそばにあるもの」でした。再起の可能性を模索する一冊です。

プロダクトは単なる消費物ではなく、その土地とそこに住む人の魅力を伝える物語であり、自分の知らない世界の解像度を上げてくれる学びの体験であり、そのプロダクトを介して外の世界とつながる出会いの装置にもなる

――「秋田で起きている『生命の復活』」より、小倉ヒラクさんの言葉

【こんな記事が読めます】
小倉ヒラク 秋田で起きている「生命の復活」
タルマーリー 渡邉格・麻里子 天然菌が世の中の常識を変える!
近藤淳也 賃貸物件に無垢材を使う
町田康×江弘毅 対談「大阪弁で書く」とはどういうことか

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その5 「宗教×政治」号

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「宗教」と「政治」。いま聞いたら、思わずピリッとしてしまうこのテーマについて、私たちは第5号で特集していました。
 そもそも「政教分離」と言うし、両者はまったく別のものじゃないの? それとも・・・
 2018年、周防大島で断水が起きました。その断水は約40日間も続きました。
 にもかかわらず、国は一切動かない。それはまさに無政府状態に近いと言えるのではないでしょうか。
 そんな時代に、宗教にはいかなる役割があるのか? 自分たちの時代の政治はどうなるのか。これからの日本を考えたいと思っておられるすべての方におすすめです。

 誰もがどこかの国に生まれる。最初から国家はそこにある。国や政府は、ずっと昔からあって、空気のように自然な存在に感じられる。でも人類の長い歴史からみれば、いまのような国が誕生したのは最近のことにすぎない。いつの間に、こんなに自然であたりまえのものになったのか? はじめてのアナキズムは、そんな問いからはじまる。

――「はじめてのアナキズム」松村圭一郎さんの言葉

【こんな記事が読めます】
内田樹 街場の宗教論(序) 150年の怨讐の彼方から蘇る『動く宗教性』
松村圭一郎 はじめてのアナキズム
最相葉月×三田一郎 対談 物理学者は"神"を見る
釈徹宗 「無宗教です」が通じない時代
森田真生 聴し合う神々

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次回は、第6号~9号についてお届けします!

(つづく)

ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

編集部からのお知らせ

【9/10(土)】平川克美×平松佑介×加藤優一「銭湯の編集術 番外編 銭湯のあるくらし~共有地としての銭湯の現在~」@SPBS TOYOSU&オンライン配信

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<開催概要>9月10日(土)14:00~15:30

<出演>
平川克美
平松佑介(小杉湯三代目)
加藤優一(銭湯ぐらし代表)

<会場>
【オフライン】SPBS TOYOSU(東京都江東区豊洲2-2-1 アーバンドックららぽーと豊洲3 4F
【オンライン】Zoom ウェビナーを使用します。

<定員>会場視聴 30名 / オンライン 上限なし

<参加費>
【会場視聴】
・会場視聴チケット:2,200円(税込)
・『共有地をつくる』書籍+会場視聴チケット:4,360円(税込・送料込)

【オンライン】
・オンライン視聴チケット:1,650円(税込)
・『共有地をつくる』書籍+オンライン視聴チケット:3,810円(税込・送料込)

■ 主催・企画:SPBS THE SCHOOL
■ 協力:ミシマ社

<内容>

生活スタイルが多様化したことにより、他者とのつながりが希薄になりつつある現代社会において、
街の中で人と人が顔を合わせる交流の場=「共有地」の役割が改めて考え直されています。
SPBSで今年5月~7月に開催した連続講座「銭湯の編集術」の題材となった「銭湯」もその一つです。

今回は「銭湯の編集術」のスピンオフ企画として、
「共有地としての銭湯の現在」を考えるスペシャルトークイベントを開催します。
ゲストには今年『共有地をつくる わたしの「実践私有批判」』を上梓した
文筆家・平川克美さん、高円寺の老舗銭湯「小杉湯」三代目番頭・平松佑介さん、
〈銭湯ぐらし〉代表・加藤優一さんをお招きします。

「誰のものでもないが、誰もが立ち入り耕すことのできる共有地があると、
わたしたちの生活はずいぶん風通しの良いものになるのではないか」と著書で語る平川克美さん。
共有地として発展し続けている高円寺の老舗銭湯「小杉湯」を営む平松佑介さんと、
エリアリノベーションの観点から銭湯を軸として街の地域資源を生かし、人を巻き込んでいる加藤優一さん。
3人が考える共有地としての銭湯のあるくらしとは。

銭湯、食堂、喫茶店、縁側……
誰のものでもあり、誰のものでもない場所、「共有地」について一緒に考えてみませんか?

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