電子書籍第37弾、『桃を煮るひと』&『ここだけのごあいさつ』をリリース!
2023.07.10更新
こんにちは。編集チームのスミです。
今月は、くどうれいんさんの新刊『桃を煮るひと』と、ミシマ社代表・三島邦弘の『ここだけのごあいさつ』の電子書籍をリリースします。
本日のミシマガでは、私スミがこの2冊の魅力をご紹介いたします!
【詳細はこちらから】
くどうれいん『桃を煮るひと』
三島邦弘『ここだけのごあいさつ』
桃を煮るひと
家事なんかしてる暇ないくらい忙しい自分と、いきいきと夕飯を作る自分をどうしても両方やりたい。
衝撃のデビュー作『わたしを空腹にしないほうがいい』から5年。
小説、エッセイ、絵本、児童書、歌集・・・多方面で活躍する気鋭の作家が、
満を持して、2作目の「食エッセイ集」を解禁。
日経新聞「プロムナード」(2022年7月〜12月)に掲載されたエッセイに、
書き下ろしをたっぷり加えた、珠玉の41編。
6月の新刊は、くどうれいんさんによる食エッセイ集です。
「カリカリ梅」「ひとりでご飯を食べられない」「瓶ウニ」「てのひらで切る」「あのファミチキ」「ぶどうあじあじ」・・・など、食にまつわる41編を収録。食材や料理、そして誰かとあいだで起こった食のエピソードについて、くどうさんの思い入れや「うっとり」が綴られています。味覚や食欲をとにかく刺激されるのですが、この本は「食べる」だけでなく、「生きる」そのものがぎっしり詰まった一冊です。
とくに私の心をわしづかみにしたのは、本書内で全力で食べつづけ生活しつづけているくどうさんが、つねに全力で働きつづけている人でもあるということです。
残業の日々で趣味に割く時間もとれないなか、慌ててコンビニで手に取るお菓子やホットスナック。自分へのご褒美として駅のお土産売り場で買った美しい和菓子。本当につらいことが起きたときに百貨店にこっそりに駆け込み飲んだフレッシュジュース。もうやだ! と仕事を切り上げて、夜に大根をまる一本調理すること。
「どんなかたちであれ、働くということは辛抱や苦悩の伴うことだなあ、と思う。夢のような職業に見えたとしても、その夢の下でちゃんとつらいという事実が、ちゃんと仕事してるぞ、という安心でもある。とはいえもうやだったらもうやだなので、きょうはもう、大根のことだけ考えようと思います。」(P100「大根の面取り」より)
つらくなったり疲れたりすることは、ちゃんと仕事しているという実感にもつながっている。そして、そんな自分を労いふんばらせるためにも「食」は存在してくれていて、台所に立つことや、どんな状況であれ食べ物を手にすることそのものが、自分で立ち上がって生きていくための支えになる。本書を読み終えると、おいしいものをお腹いっぱい食べたような感覚とともに、全身をつかって生きている、という充実感でじわりと体温が上がるはずです。
ここだけのごあいさつ
「ああ、これかも!」
ちいさな組織で「おもしろい」をつづけるために――
今、感じている「危機」をどうのり超えていけばよいのか?
ある出版社の代表がぼろぼろになりながら辿り着いた、「一般論」の向こう側。
5年にわたり書きつづけた自身のテキストを読み返し、
会社を運営する喜び、痛み、気づき、反省、実感・・・を赤裸々に綴る。
いまの時代を生きる、すべてのちいさな責任者へ。
「『おもしろい』をちいさな組織や会社でつづけるために、いま必要な変化とは?」
本書は、ミシマ社代表・三島がこの問いを抱えながら、2018年4月~2023年3月まで自身が毎月書きつづけてきたミシマ社サポーターさん宛の文章(会社の活動報告や、三島個人が当時考えていたことなど)を読みかえし、悩み、考えあぐね、その先で「ああ、これかも・・・!」という地点に辿りつくまでの道のりが綴られています。
会社を運営し、組織を維持しながらも、同時に、あるルールや規格におさまらない「おもしろい」に果敢に挑戦したい。そう切に願う責任者の、葛藤と気づきの記録です。三島が本書に込めた思いは、ぜひこちらからお読みください。
個人的、かつ、ミシマ社の中にいる者の感想で恐縮ですが、入社3年目の私は、本書に出てくる「自転車」というフレーズに出会い、働くということへの心構えが大きく変わりました。そうか、ミシマ社の会社員をしている私は、自分自身の身体で自転車を漕ぐ走者にならなければならないのか、と。
「自転車操業をしようとすれば、経営層も、現場も、皆が走者である」「自転車操業が基本であるちいさな会社では、メンバー全員がそれぞれ漕いで進んだ合計分だけが、会社の稼ぎとなる」「まずは自転車走者になる。そのための脚力、バランス感覚、体力、あらゆる点で、身体をつくらなければ始まらない」(P231~234より)
今の私は、何かを始めるまえに身体をつくっている段階だと思います。誰かに引っ張ってもらうのではなく、自分で自転車に乗り、まっすぐ漕げるようにならなければならない、と思うとプレッシャーも小さくありませんが、そのぶん、仕事の基本を身につけ、自力で働ける身体を持つチャンスが開かれているとも言えます。
ちいさな組織や会社でどう働く? ものづくり、出版、本はこれからどう変わる? そんな問いを抱えて日々頑張っているみなさま、そして、ミシマ社ってどんなことしているの? と興味を持ってくださっているみなさまにも、ぜひお手に取っていただけたらうれしいです。
本日は『桃を煮るひと』『ここだけのごあいさつ』をご紹介しました。
これからも、電子書籍、ライブ配信、アーカイブ動画、そしてもちろん紙の本。さまざまな形で「おもしろい!」をお届けしてまいります! 来月も、どうぞお楽しみに。