第8回
胎児はめちゃくちゃおもしろい! ~増﨑英明先生と最相葉月さん、発刊後初対談(2)
2019.03.12更新
発売から1カ月半ほど経った『胎児のはなし』、「本当におもしろかった! 知らなかったことがたくさん!」という読者のみなさまの声をたくさんいただいています。そして新聞などメディアでの紹介が続き、おかげさまで3刷大増刷中です!
3月2日、代官山 蔦屋書店にて、著者の増﨑英明先生と最相葉月さん、お二人揃ってのトークイベントが開催されました。胎児への愛が溢れて止まらない増﨑先生と、生命科学の取材に長く携わってこられた最相さんのお話に、会場のみなさんが、穏やかにそして真剣に耳を傾けていました。
その様子の一部を、2日間にわたりお届けします。
(構成:中谷利明、星野友里、写真:池畑索季)
■前編の記事はこちら
胎児はどんな夢を見る?
最相 こういうテーマなので、今日はぜひみなさんからの質問に答える時間をちゃんと取りたいなと思っております。何かご質問があればぜひどうぞ。
質問1 本の中で、「胎児が夢を見ているようだ」という話がありましたが、いったい、胎児はどのような夢を見ているのでしょうか? わからないとは思うのですが、どんな情報として夢を見ているんでしょうか?
増﨑 やっぱり母親の夢を見るんじゃないでしょうかねぇ。「母親ってどんな顔をしてるんだろう」とか。「生まれると見れるよね」みたいな。・・・すみません(笑)。
最相 レム睡眠とノンレム睡眠があるわけですから脳の中では何かが起こってるでしょうね。それが何なのかはわからないけれど・・・。
増﨑 ノンレム睡眠とレム睡眠って、みなさん眠ってるときに交代交代にそれをやってるんですね。それで胎児っていうのは、レム睡眠がすごく多いんですよ。ノンレム睡眠の部分は一生、胎児期から死ぬまで変わらないんだけど。レム睡眠ってずっと減っていくんですよ。それが覚醒に替わっていくんですね。
最相 浅い眠りですね。
増﨑 そこの時期ってね、みなさんも夢を見てる時期なんですよ。胎児はそれが非常に多いので、「いっぱい夢を見てるんじゃないか」ということですよね。
ホモ・サピエンスはひとつ
質問2 「ハーフはどこまで可能なのか」ということを聞きたいのですが。ホモ・サピエンスより前には猿と人が交配するということがあったでしょうし。可能かどうかというのも含めてお願いします。
増﨑 それはタブーです。まぁ、おそらくできないですね。染色体の数からして、人間は46本でお猿さんは48本なんですよ。元々は一緒だったはずですが、分かれてしまった以上は無理かなぁと思います。それに、そういうことはマッドサイエンティストみたいな人たちが昔にやったという話はありますよね。できたかどうかはわからないなぁ・・・。
動物ではいっぱいやられてますけどね。でも初代はできたとしても、そこから子どもはできないですよね。不稔(ふねん)という状態になってしまう。だから、まぁ、やらないほうがいいと思いますね。
質問2 人種は可能ですかね?
増﨑 人は、みな一緒です。それは安心してもらって大丈夫ですね。人はみんな一緒です。ホモ・サピエンスはひとつです。人類の平和です。
産み方のスタンダードは変わっていく
質問3 出産時のお母さんの姿勢が昔から疑問なんです。本の中でも、昔はしゃがんで産んでいたとあります。「そのほうがたぶん重力も使えるし楽なんじゃないかと思う」と。本の中には今もなお仰向けで産んでる理由として、「機器をいろいろつけないといけないから」ということが書いてあるんですけど、その機器の付け方こそいくらでも克服できそうな気がするのですがどうでしょうか?
増﨑 そうそう。その通りです。やっぱり上向いてお産するのはつらいんですよ。骨盤が一番開いて楽にお産できる姿勢ならどんなふうになってもいいんですよ。四つん這いになるというのもそうですね。犬猫とかは四つん這いでお産しますよね。
産まれるまでは自由に動き回れるほうがいいんですね。本にも書いてますが、そのためには要するに移動式のものをつければいいんです。電波流してね。まぁ、変わっていきますよ。それは。もうほぼ変わってきてます。
無痛分娩の場合
質問4 今、妊娠33周に入ったところなんですけれども。本の中でびっくりしたのが、意識をなくした妊婦さんがいきまなくても産んだというエピソードで・・・。私は無痛分娩を考えているんですが、先生にリスクとして言われているのが、「いきめないから吸引とか鉗子分娩になっちゃう」という話だったんです。なんか本当にいきみって必要なのかなという疑問を持ちまして。どうなんでしょうか?
増﨑 陣痛って自動的にくるんです。基本的には陣痛で生まれます。いきまなくても。でも無痛分娩にすると本来の陣痛が弱まるんです。だから、補助が必要になるんですね。だけど無痛分娩は楽ですよ。絶対楽。がんばってください。あっ・・・、がんばらないでください(笑)。
胎児はどれくらい外の刺激を感じている?
質問5 私の妹が生まれる1カ月前くらいに母が風邪にかかって、すごい咳をずっとしていたんです。そうしたら、妹の眉間に1本太いシワが入って生まれたんです・・・。今はないんですけど(笑)。1カ月くらい治らなくて。赤ちゃんってどのくらい外の刺激を受けてるのかなぁと思ったのですが、どうなんでしょう?
増﨑 あのね、たしかに眉間にシワ寄せる胎児がいたんですよ。やっぱりその子はね、唇のあたりに臍帯がきてて、それをすごく嫌がってるんですね。それで眉間にシワ寄せるんですね。それが痕として残ったかどうかはわからないけれど。まぁチャームポイントですよね(笑)。お腹の中でもしてたんですよ、きっとね。
妊娠すると嗜好が変わる?
質問6 私はまだ妊娠の経験がないのですが、私には弟がいまして。私たちの母は、私がお腹の中にいるときはイワシを異常に食べ、弟がお腹にいるときはステーキを異常に食べたらしいんです(笑)。それで、イワシも肉も、もともとは母のそれほどの好物でなかったということなんです。遺伝子の関係で好みとか性格というか・・・、それは変わるのかなぁと。それがすごく興味があるんです。
増﨑 おもしろい話ですねぇ〜。それが遺伝子のせいかどうかは別にして、妊娠すると嗜好が変わるというのはよく言われてることなんですよ。この本でも書いてますけど、壁の土を食べるって話は昔からあるんですね。どうしても食べたくなって本当に食べるんですね。みんなの見てないときに。だから、イワシを好きだったのが、ステーキが好きになるくらいだったら、全然おかしくないんですよ。全然答えになってませんね(笑)。
最相 先生がこの本の中で何度もおっしゃってることなんですが、「この世界はおまじないだから」という言葉がありますよね。妊娠出産の世界にはおまじないが本当に多い。科学的根拠というのは「あるようでない」みたいな話がたくさんあります。
増﨑 まぁ、ほとんどないですよ。たとえば腹巻きしてるじゃないですか。腹帯。あんなの世界で日本だけなんですね。それで、今はお腹にぐるぐる巻いてるけど、江戸時代の当時の絵をみると上から下に押さえつけるように腹巻きをしてるんです。あれは、「赤ちゃん大きくなるな」というおまじないだったんですね。今では神主さんに「寿」とか書いてもらって、ベッと貼ってるだけですが。ほとんど意味はないんです。そういうのがけっこういろいろあるんですね。
最相 今はいろいろな情報が氾濫していて、特にインターネットを調べていると、有ること無いことたくさん書かれていますよね。実際にそれに直面して困ってらっしゃる方がたくさんいるということなんですが・・・。
増﨑 そうですよね。たとえばおっぱい出ないときに、お姑さんが、「私たちのころは何もしなくても出たけどねぇ」みたいなことを言います。でもそれは自分の話であってね。その時代もやっぱり出ない人は出なかったわけなんですよ。そういう、経験談とかがインターネットを見ると山のように載ってるんですよ。でも大概うまくいった人はインターネットには書き込まないんですね。うまくいってないことばっかり書いてあるんです。もう悲しくなりますよ。だから私は見ないほうがいいって言ってます。
最相 この本には、科学的な新しい発見の話がたくさん書かれていて、それと同時に、「自分自身にも胎児の時期があったんだ」ということにも想いを馳せていただけるような本になっておりますので、もしよろしければご一読ください。
(終)
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