第25回
「筋トレ」全盛の時代に、「脱・筋トレ思考」のススメ
2019.09.04更新
こんにちは。ミシマガ編集部です。
突然ですが、今や「筋トレ」全盛の時代です。
「加齢のせいか、運動機能が低下してきた気がする」
「少し体型が気になるから、ダイエットしないと...」
「毎日デスクワークばかりで運動不足が続いているから何か対策をしたい」
そういう思いから、まずは今晩筋トレでもやってみよう、そう思った方。
あるいは、自分はそもそも筋トレに興味はないけれど、学校や職場で周りがこぞって「筋トレ」に励んでいる。テレビのコマーシャルやポスティングされたジムのチラシ、書店の目立つところに並ぶタイトルに目を向ければ「筋トレ」だらけ。「どうしてみんな、筋トレにハマるのだろう?」そんなことを思った方。
先月末に発刊したミシマ社の最新刊『脱・筋トレ思考』は、あらためて筋トレの功罪を問う一冊です。これまで多くの人が筋トレによって身につけてきた「見た目の強さ」や「目に見える達成感」によってではなく、コツやカンをつかみ、からだの「しなやかさ」によってハイパフォーマンスを生む、そういう一歩を踏み出すためのヒントが詰まっています。
ここで平尾さんによる「まえがき」を引用します。
現代スポーツには勝利至上主義や商業主義、過度な競争主義がはびこっている。勝利、カネ、ランキング上位といった、目に見えてわかりやすい目的を掲げ、それに向けてシンプルな方法で解決を図る考え方を、本書では「筋トレ主義」と呼ぶ。
(略)本書は、スポーツ界のみならずいつしか社会全体にまで広がり、知らず識らずのうちに内面化しつつある、この「筋トレ主義」を乗り越えるための思索である。複雑に絡み合った現象を、その複雑さを損なわないように根気強く紐解いてゆく思考を「脱・筋トレ思考」と名付け、その道筋を描いてみた。ーー『脱・筋トレ思考』まえがきより
スポーツの場面に限らず、いまの社会を見渡してみれば、教育や仕事、日常生活においても知らずしらずのうちに蔓延する「筋トレ主義」があるように思います。
そういう時代において、スポーツに取り組んでいる人、スポーツの現場に限らず、あらゆる状況で「教える」ことに従事する指導者や教育関係者、数字や勝ち負けだけで結果を判断されることに疲れてしまった人、何かで思うようにコツやカンをつかめずに試行錯誤している人...幅広い読者の方々にこの本をぜひ読んでいただきたいです。
本書の「まえがき」は以前のミシマガ記事にて全文公開しておりますので、ぜひこちらをご覧ください。
ミシマ社メンバー、ラグビー部潜入レポート
さて、『脱・筋トレ思考』の編集作業が大詰めを迎えていた8月上旬、実際に平尾さんがラグビーの指導をする様子を見てみたい! ラグビーボール、ちょっと触ってみたい...! 本のなかで解説されている「スクリューパス」を教えてもらいたい! ということで、平尾さんが教鞭をとる、神戸の大学まで行ってきました。平尾さんはラグビー部で学生ラグビーの指導をおこなっています。向かったのはワタナベ、アライ、タブチ、ノザキの4名。
午前中にもかかわらず、じっとしているだけでもジリジリと暑さが体力を奪う炎天下のなか、高台にある大学にたどり着いた頃にはもう全員汗だく。グラウンドの隅から練習を見学させてもらうことになっていました。
ところが、です。グラウンドに着くやいなや、するする〜っと、なめらかにグラウンド中心へと颯爽と向かう一人の男子を目撃しました。
タブチです。
ミシマ社営業チームのタブチ、特技は「急に歌う」「急に走る」。しかも急に歌う唄は、オペラの一節であったり、急に走る速度は尋常じゃない速さであったり、という京都メンバーの1人です。
「コンチワ」とでも言っているのでしょうか、ペコペコとおじぎをしながら、学生さんたちの輪に入り、気づけばダッシュの列に並んで、自分の番を見据えています。
そのあまりのナチュラルさに驚いたのもつかの間。
タブチは本気でした。
パスを受け取り、
そして走り出す
平尾さんにも立ち向かう(写真右側、ボールをもつのが平尾さん)
平尾さんは、やはり強かった
練習メニューに全力で立ち向かい、パスを取り損ねると悔しそうに声をあげ、平尾さんにも果敢に向かうタブチ。しかしさすがは元ラグビー日本代表、するするっと走り抜いてしまうのでした。
そして何より印象的だったのは、学生さんたちが、もうそれはそれは笑顔で、楽しそうに練習をしていたことです。楽しく、全力で取り組む。田渕は一緒に練習に参加させてもらい、見学している他ミシマ社メンバーもその姿を間近で見て、スポーツってこんなに楽しいんだ、そんなことを肌で感じて自然と笑顔になりました。
*
平尾さんの教え子の学生さんたちに交じって練習に参加させてもらいました。試合形式の練習中に思ったのですが、ラグビーでは、野球のように仲間がいるところへボールを投げるのではなく、仲間の走るスピードを瞬時に判断し、仲間がそこまで走ってくると信じて空にボールを投げるスポーツだということに改めて気付き感動しました。また、平尾さんのステップも生で体感でき感激です。(田渕洋二郎)
カメラで平尾さんや生徒さんを追いましたが、ひとりひとり考えながら動くだけでなく、連携をとるために声を掛け合う姿が印象的でした。合間合間での活気、笑顔の絶えない練習風景に驚きました。(渡辺佑一)
自分自身、小中高とずっとスポーツをしてきたのですが、ばりばりの熱血・気合い・根性指導に辟易して心が疲れ、大学ではスポーツから離れました。平尾さんの文章を読んでいると、そうだよな、スポーツって楽しいんだよなって思えて、身体を動かすよろこびを感じます。で、そんな平尾さんが学生さんたちに指導をされている姿をみて、的確に言葉を伝えながらも、「怖くない(恐怖で指導しない)」指導者というものの大切さを深く思いました。無意識で身に染み付いてしまっているであろう、自分のなかの「筋トレ思考」、そろそろ脱したいなぁ。(新居未希)
本書の内容が気になった方、ぜひ、お近くの本屋さんでお手にとってみてください。ミシマ社のオンラインショップ「ミシマ社の本屋さんショップ」でもお買い求めいただけます。