第87回
『その農地、私が買います』、多彩な反響が続々!!
2021.11.18更新
発売から約1カ月、高橋久美子著『その農地、私が買います 高橋さん家の次女の乱』は、感想をくださる方々の老若男女の幅や、どの角度から興味を持ち心を動かしてくださったかという切り口の多彩さが、際立っているように感じます。
先週末には13日(土)には毎日新聞、14日(日)には読売新聞に著者インタビューを掲載いただいたのをはじめ、たくさんの媒体の方に取材いただきました。今日は、高橋さんがそれに答え、それを横で聴いているなかで、あらためて見えてきたこと、そして本書の魅力を、編集ホシノからお伝えできたらと思います。
その1 農地・土地問題を抱えている人が、想像以上に多い
これまであまりなかったことなのですが、本書が発売になる前のまだ中身を読めない状況、ミシマ社からメディアへのご案内も始める前のタイミングで、いくつもの取材申し込みがありました。なぜ取材をしようと思ってくださったのかを尋ねるとみなさん、「タイトルを見て」と仰います。
それぞれの媒体の読者はそれぞれ、30~50代であれば親の農地や土地の相続について悩んでいる方が多く、60代以降では自分自身が持っている土地の行方について、不安に思っている方が多いそうです。
たしかに、財産でもあり、場合によっては負の遺産ともなりうる「土地」の話は、気軽に友人に相談できるようなものでもなく、みなさん悩みを抱え込まれがちなのかもしれません。農地買い取りをめぐる高橋さんの苦闘の数々には、そんな悩みへのヒントが、詰まっています。
その2 太陽光パネル問題、いたるところで
高橋さんが農地を買うきっかけとなった太陽光パネル業者による土地の買い取り。これに関しては取材を受けるなかで、「私の地元の景色もどんどん黒くなっていく」「好きだった景色がパネルになってしまって悲しい」「メガソーラー計画への反対運動が各地で起こっている」といった話を何回訊いたかわかりません。
本書冒頭で、高橋さんとお父さんが激烈な口論を繰り広げているとおり、環境問題が深刻な今、再生可能エネルギーへのシフトが重要な課題であることは確かです。とはいえ、「将来、パネルが大量のゴミになるのでは?」「土砂崩れなどの安全性は?」「太陽光パネルが設置された土地が受けるダメージは?」といった、多くの人が潜在的に気づいている問題点もやはり、無視できません。本書がそういう議論が始まる小さなきっかけの一つに、なったらいいなと思います。
その3 高橋さんの行動力に、触発される人が多し
とくに若いインタビュアーの方からは、高橋さんが勇気を出して自分が考えていることを人に伝えて話し合ったり、実際に北海道の狩猟の現場に赴いてお肉を食べることについて考えたりしていることに、刺激を受けた、という声もありました。
本当はやってみたいことがあっても、失敗がこわいし、なかなか自分の思いをまわりに伝えたり、挑戦したりすることが難しいと感じる気持ちは、私にも思い当たるところがあります。
本書を読むと、「お麩でできた橋でも渡る」高橋さんが、痛い目に遭う場面も多々ありますが、一方で、「話してみたら、意外にも同じ思いを持っていた」「恐そうだった人が、いろいろと親切に教えてくれた」というエピソードもたくさんあって、まずは話すことから、という高橋さんのメッセージが、背中を押してくれます。
その4 都会に住みながらも土に触りたいと思っている人も多し
インタビューで、もっとも盛り上がることが多かったのがこの話題でした。「スーパーでいくらでも買えることを考えると、自分で野菜をつくるのはコスパが悪い」「とにかく虫がこわくて触るのが無理」という方たちでも、心のどこかで、何かを育ててみたいとか、土に触れてみたいという思いがあるようで、高橋さんがご自宅で実践されている家庭菜園やコンポストの話になると、みなさん目をキラキラさせていたのが印象的でした。
本書には収録し切れなかった、高橋さんの都内自宅での自給自足の試みの数々は、ミシマ社ツイッターに「#次女の知恵袋」としてたくさんアップしておりますので、ぜひご覧ください!
高橋さん家のベランダのぶどう
その5 女性が田舎で暮らす大変さに「わかりすぎる」の声
本書には、男性の意見が優先されがちだったり、まわりの人との足並み揃えることを重視する空気感だったり、女性であることや田舎で暮らすことによる特有の大変さが、率直に綴られています。
この部分に関しては、とくに地方出身の女性の人たちから「その感じがわかりすぎて、読んでいて胸がぎゅっとなりました」といった感想をたくさんいただきます。一気に状況を変えることは難しくても「まずは池に小さな小石を一つ投げられたかな」(高橋さん談)というこの部分、人知れず悩んでいる方がいたら、ぜひ読んでいただきたいなと思います。
その6 本の、その後が気になります
予想外の結末を迎えた本書の「その後」についても、みなさんから「その後が気になります」「ぜひ続編を」という声をたくさんいただいています。高橋さんはその後も、いろいろと行動を起こされているので、また遠くないいつかに、「高橋さん家の次女」の続きを、お届けできたらなと思っています。
***
最後に、高橋さんからも読者のみなさまに向けてメッセージをいただきました!
本を出すまで、どう受け取られるのだろうかとドキドキしていましたが、「うちも同じ状況です」という方が全国に大勢いたことに驚き、逆に勇気づけられたりもしています。
本出して良かったです。
私もまだ何が正解なのか考えている最中だし、答えは今すぐは見つからないんだろうな。
そうそう、黒糖のチームのお手伝いにときどき行ってますよ。
なんと新しい若者の黒糖BOYSも増えていて、よりパワフルになっていました。
さらに一緒に黒糖作ってみたいという方が近く(東予近辺)にいたらウェルカムだとOさんたちが言っていました。気になる方は是非問い合わせてみてね。
私はみかんの収穫と黒糖作りの手伝いとで毎日半目です。原稿を書く余力もなくバタンキューです。
ひとまず、今自分にできることは体を動かしながら考えることだなあ。
――高橋久美子
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ともにミュージシャンとしての活躍を経て、東京と地方の両方での生活を経験し、現在は農に取り組むお二人による、実感ふり積もるオープントーク。 地方の内と外、両方の視点を持つおふたりに、生活のリアル、地元・移住先へとどう飛び込んだか、農業をどうやって始めたのか、その奮闘の日々を語り合っていただきました!
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