第181回
『わたしの農継ぎ』発刊!
2024.09.12更新
本日リアル書店にて、ミシマガジンの連載「高橋さん家の次女第2幕」を元にした書籍『わたしの農継ぎ』が先行発売となります!!
前著『その農地、私が買います』にて、地元愛媛の実家の畑が太陽光パネルにならぬよう奮闘してから3年。高橋さんは、愛媛と東京に1カ月交替で暮らす二拠点生活となり、愛媛では農業、東京では作家という日々を続けています。
体力的にも金銭的のも大変な中で、高橋さんがその道を選ぶ理由。
それは、ただ農業をやりたいというより、地元の畑がある景色を、祖父が植えた果樹を、美しい石垣を、在来種の種を、先人たちの農業の技と知恵を、「受け継ぎたい」からなのだということが、本書を読むと伝わってきます。
そんな高橋さんの想いを込めて「農継ぎ」という言葉が生まれました。
「まえがき」公開!
ここで、本書の「まえがき」を公開いたします。
『わたしの農継ぎ』
まえがき
ここ数年、愛媛の実家に帰省する度に、田園風景が静かに消えていた。
荒れ地になったり、太陽光パネルが立ち並んだりと、引き継がれなかった農地は町の景色を様変わりさせ、それと並行するように、人がいなくなった。逆に東京では、市民農園に応募し続けるも一度も当たらず、キャンセル待ち人数は増える一方。頻発する自然災害や戦争、ウイルス、重苦しい空気......みんな心を癒やすためにも、土を求めはじめているのだと思った。
私の実家は兼業農家で、米、野菜、みかんを作り、自給自足の生活をしてきた。
まだお手伝いともいえない幼少期から田畑は身近な場所で、私の真ん中を形成したふるさとでもあった。父母は今も農業を続けているけれど、高齢化で周囲の畑はどんどん手放された。そうか、この風景は近隣の人たちみんなで作ってきたものだったのだ。
往生際の悪い私は、東京に拠点は残しつつ、思い出の場所を守れないだろうかと考えるようになっていた。今すぐ東京を去るのは難しいけれど、二拠点生活ならできるかもしれない。全部は無理でも、実家周辺の農地なら維持できるかもしれない。一人では無理だけど、仲間に力を貸してもらえたら......。
こうして、二〇一九年の冬に近隣の遊休農地で仲間と農業を開始。現在も愛媛-東京間を一カ月交替で行き来しながら、作家と農家の二足の草鞋を履いている。仲間もそれぞれに仕事は持ちながら、自分が食べる分+αの農業だ。専業農家ではないが、家庭菜園というには広すぎる。日本の山間部の風景の多くは、こうした+αのがんばりによって作られていたんだなと、やってみて分かった。
近所には、母をはじめ、自給自足農業を実践している人たちが、まだかろうじているけれど、その知恵も継承されることなく、静かに消えようとしていた。今なら、ぎりぎり間に合う。ネットや本では学べない、この土地に根ざした活きた農業を、さまざまな分野の師匠たちに学ぶ日々だ。
タイトルの「農継ぎ」とは、農地を引き継ぐだけでなく、技術や生き方、暮らし方を継ぐという意思も込めた造語だ。まだまだ模索中だし、全ては無理だけど、私なりのやり方で、少しずつ引き継げている実感がある。
コロナ時代に突入したり、猿や猪に滅多打ちにされたり、本当にいろいろなことがあった。自然農は、はじめの五年が大変だと言うけれど、読み返してみると上手くいくことのほうが少ないくらい。それでも、仲間たちのお陰でここまで続けてくることができた。
この本は、コロナで帰省できなかった時期を経て、本格的に二拠点生活をはじめた、二〇二二年〜現在までの奮闘をまとめたものだ。農業に関わっている方や、これから畑をはじめてみたいと思っている方が、一歩を踏み出すきっかけになってくれると嬉しい。
わたしたちの◯継ぎ
高橋さんが「農継ぎ」をされているように、今のままでは消えていってしまう風景や技術や伝統を、今の時代に合う形にして、継いでいこうとしている人、継いでいきたいと思っている人は、様々な分野にいらっしゃるように思います。ミシマ社も、本がある風景を、次の世代に継ごうとしているのかもしれません。
本書の刊行を記念して、そんな「◯継ぎ」をしている方と高橋さんの対談イベントを2つ企画しました。何を守り、何を変え、どう受け継いでいくのか。今からお話が楽しみです。奮ってご参加ください。
●高橋久美子×有松遼一「わたしたちの 農継ぎ×能継ぎ ~同い年対談~」
日時:10/3(木)19:00~
会場:京都・恵文社一乗寺店+オンライン配信
●高橋久美子×白川密成「わたしたちの 農継ぎ×寺継ぎ ~愛媛対談~」
日時:10/14(月・祝)14:00~
会場:今治ホホホ座+オンライン配信
「農・土・菌と生きるフェア」全国で開催中!
「その人の人生の一部に土があるということ。それは農業うんぬんの前に、生きることや生命のルーツを知ることにもなると思う。」(『わたしの農継ぎ』より)
ミシマ社からは、各地で農・土・菌とともにある生活に奮闘する方たちの本が、たくさん刊行されています。そんな本たちを集めた「農・土・菌と生きるフェア」を、全国で開催中。ぜひお立ち寄りくださいませ!
「農・土・菌と生きるフェア」開催店
【北海道】函館 蔦屋書店
【神奈川県】ジュンク堂書店 藤沢店
【静岡県】谷島屋 浜松本店
【京都府】
本と野菜 OyOy
丸善 京都本店
【大阪府】
紀伊國屋書店 グランフロント大阪店
ジュンク堂書店 天満橋店
【広島県】MARUZEN 広島店
【山口県】くまざわ書店 下関店
【福岡県】くまざわ書店 小倉店
サイン本を置いていただいているお店
こちらのお店では、高橋久美子さんの直筆サイン本も展開いただいています!
売り切れの場合もございますので、ご了承くださいませ。
【北海道】
紀伊國屋書店 札幌本店
【東北】
〈岩手県〉MORIOKA TSUTAYA
〈福島県〉くまざわ書店 会津若松店
【関東】
〈群馬県〉未来屋書店 高崎店
〈栃木県〉あさぎ書房
〈東京都〉
くまざわ書店 武蔵小金井北口店
ジュンク堂書店 吉祥寺店
今野書店
銀座 蔦屋書店
三省堂書店神保町本店小川町仮店舗
BOOKS ルーエ
ブックファースト 新宿店
〈神奈川県〉
ブックファースト 青葉台店
ジュンク堂書店 藤沢店
【中部】
〈静岡県〉フェイヴァリットブックスL
〈新潟県〉SANJO PUBLISHING
〈福井県〉わおん書房
〈愛知県〉
名古屋みなと蔦屋書店
ジュンク堂書店 名古屋栄店
TOUTEN BOOKSTORE
【関西】
〈奈良県〉奈良 蔦屋書店
〈京都府〉
誠光社
京都 蔦屋書店
丸善 京都本店
大垣書店 イオンモール京都桂川店
本と野菜 OyOy
〈大阪府〉
「本」のお店 スタントン
MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店
清風堂書店
ジュンク堂書店 大阪本店
ジュンク堂書店 天満橋店
隆祥館書店
ブックファースト 梅田2階店
紀伊國屋書店 グランフロント大阪店
〈兵庫県〉
喜久屋書店 北神戸店
ジュンク堂書店 三宮駅前店
【中国】
〈岡山県〉
喜久屋書店 倉敷店
丸善 岡山シンフォニービル店
〈鳥取県〉一月と六月
【四国】
〈徳島県〉
紀伊國屋書店 ゆめタウン徳島店
紀伊國屋書店 徳島店
〈愛媛県〉
紀伊國屋書店 いよてつ高島屋店
明屋書店 今治本店
明屋書店 川之江店
〈香川県〉TSUTAYA 西宝店
【九州】
〈福岡県〉
ジュンク堂書店 福岡店
六本松 蔦屋書店
丸善 博多店
刊行によせて
最後に、著者の高橋久美子さんより、刊行によせていただいたコメントを公開いたします!