第182回
ジェノサイド開始から1年――『中学生から知りたいパレスチナのこと』イベントのお知らせ
2024.09.25更新
7月26日に発刊した『中学生から知りたいパレスチナのこと』、引き続きたくさんの方にお手に取っていただいています。
本書は、ガザのジェノサイドを前に、三人の人文学者が、「歴史」の学び方・捉え方への痛烈な危機感を抱いて執筆した、新しい世界史=「生きるための世界史」の書です。
アラブ文学者の岡真理さん、ポーランド史を専門とする小山哲さん、ドイツ史や食と農の歴史を専門とする藤原辰史さんの対話から、パレスチナ――ヨーロッパ――日本をつなげる、これまで見過ごされてきた歴史観が立ち上がっていきます。
イスラエルによるガザのジェノサイド開始からまもなく1年が経ちますが、先のまったく見えない状況がつづいています。
今こそ「私たちの問題としてのパレスチナ問題」を考える本として、ひとりでも多くの方に本書を読んでいただけたらと願っています。
読者の声、続々
発刊直後から、たくさんの読者の方々から感想のお便りをいただいています。
その一部をご紹介します。
お三方がご自身の学問を通して、真摯にパレスチナの問題を考えているその姿勢に感銘を受けました。また、パレスチナについて無知だった自分や、今まで勉強してきた世界史、日本史がつながり、刺激を受けました。
イスラエル・パレスチナのことは知っているような気でいましたが、この本を読んで、思っていた以上にたくさんの問題があることに気づかされました。(...)歴史は都合よく進みたい方向に合ったものが選ばれ、使われるものなのだなあと思っていたところです。とにかく「本当??」と考えてみることが大切かと思いました。
「はじめに」で岡先生が書かれた、「私たちが今、必要としているのは、(...)近代500年の歴史を通してグローバルに形成された『歴史の地脈』によって、私たちが生きるこの現代世界を理解するための『グローバル・ヒストリー』である(...)本書はそのためのささやかな第一歩です。」という言葉、恥ずかしながら、まさに自分にとってのような一冊でした。
ドイツの記憶、日本のこれまでの歴史、ポーランドのことがつながって、パレスチナのことがすっと入ってきました。
私の子どもはまだ世界史は学んでいませんが、「グローバルヒストリー」の視点は伝えていきたいし、一緒に「食」の問題(藤原辰史さんが論じた、食を通じた暴力の問題)を改めて考えたいと思いました。
内容はもちろんですが、装丁にとても心惹かれました。紙の書籍ならではのハッとする色合いの表紙で、手元に置きながら何度でも読み直したい一冊です。
寄藤文平さんと垣内晴さんに手掛けていただいた装丁が、大きな反響をいただいています。本書を読みながら、装画(表紙の絵)もじっくりご覧いただけたら嬉しいです。
10/6(日)イベントを開催します
大阪の隆祥館書店にて、『中学生から知りたいパレスチナのこと』刊行記念イベントを開催します。
テーマ「あらゆる人が、戦争と自分を結びつけ、歴史に出会い直すために」
ゲスト:岡真理さん・小山哲さん
日時 :2024年10月6日(日)15:00~17:00
場所:隆祥館書店多目的ホ-ル
(大阪市中央区安堂寺町1-3-4 谷町6丁目⑦番出口向かい)
★オンライン配信あり。
お申込み・問合せ:隆祥館書店 TEL:06-6768-1023
「ガザで起こっている不条理な殺戮をやめさせるためにも、あらゆる人が戦争と自分を結びつけ、歴史に出会い直すことが大切なことだと思っています。毎日、何の罪もない子どもたちが殺されていくことを、見て見ぬふりができません。」(隆祥館書店さんの言葉)
今、私たちはなにを知るべきで、どのような行動をとることができるか。みなさまと一緒に考えられたらと思っています。
イベントによせて、岡真理さん、小山哲さんからメッセージをいただきました。
<岡真理さんより>
新しい世界史とは、この地上に生きるすべての者たちにとって、生きるに値する世界を創る、そのためのパースペクティヴを育むためのものだ。それはたとえば、「もしこの戦争が2200万人の同胞に自由と平等をもたらすと思うなら、俺は明日にでも入隊するだろう」、「俺たちの真の敵はここにいる。自分たちの正義、自由、平等のために戦っている人たちを奴隷にする道具になって闘うことで、自分の宗教、同胞、そして自分自身を貶めたくはない」、「なぜ黒人がアメリカから1万6000キロも離れた貧しい国で、一度も俺たちを困らせたことのない黄色い人たちを空爆しなければならないのか?」、「自分の信念のために立ち上がることで、失うものは何もない。だから刑務所に入る? それが何だ! 俺たちは400年も牢屋にいたんだ」と言って獄に繋がれることを選んだ者(歴史は彼を真の王者と呼ぶだろう)が当然のこととして抱いていたパースペクティヴだ。
<小山哲さんより>
爆撃や飢餓のために毎日子どもが傷つき、死んでゆくのは容認できない、ということが、ひとりの市民としての私の、戦争をめぐる議論の出発点です。
歴史学者の仕事は、戦争が起こる背景や文脈を深く広く掘り下げていくので、結果的に説明にいろいろな留保がついて、複雑なものになりがちです。
しかし、ガザで起こっている不条理な殺戮に私が反対する理由は、複雑なものではありません。汝、殺すなかれ。戦争をやめよ。
ご参加を心よりお待ちしております。