2020年7月
ポプラ社
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『歩く 』
すでに鮮明に思い出すことは難しいのですが、今年の4月のこと。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻になっていく状況において、「酸素がたりていない」「日光がたりていない」「風にあたりたい」そんな肌感覚と息苦しさ、体からの声のようなものが自分の中にたしかにあったと記憶しています。そんなときに本棚にささっていたこの本を読みました。『森の生活』で知られるヘンリー・ソローによる、エッセイ集。歩くことは、移動の手段だけではなくて、それ自体が考えたり、ものを見たりするための目的なのだと、しみじみ教えてくれる一冊です。
2020.07.31
みすず書房
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『誰も気づかなかった 』
前に、前に進もうと思うと疲れることがある。今日はこれとこれとこれとこれとこれとこれをやったら帰ると思って会社にきたけれど、「こ」ぐらいしか終わらずに帰る日もある。今この瞬間をいつかのための今として、差し出してしまうことがある。そういう忙しない日に、この本はただの今を大事にするための、文鎮みたいな詩集でした。文鎮みたいなってたとえが変ですが。著者が晩年に見ていた風景を一緒に見ているような本で、会社のデスクでこっそり読んで、泣くまいと目元にぎゅっと力を入れていたら、妙に鼻水と唾液が多くなってきて、ますます目つきが悪くなってしまいました。いい本でした。
2020.07.27
新潮文庫
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『ボタニカル・ライフ―植物生活― 』
先週発売となった『ど忘れ書道』のルーツは、本書にあると思います。誰に頼まれたわけでもなく、いとうさんが筆のおもむくまま、自分にツッコミながら疾走する文体。ガーデナーならぬベランダ―を名乗るいとうさん、ときに自身の部屋の領域までをも植物たちに占領されて途方にくれたり、ヒヤシンスが開花するのを少年にように目を丸くして見つめたり。この本を開くと、自宅の植物が増殖しがちなので危険ですが、都会のど真ん中でも、ボタニカルの世界は豊穣だということを、知ることができます。
2020.07.24
リトルモア
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『ラブという薬 』
いとうさんと、その主治医でありバンドメンバーでもある星野概念さんとの対談本。精神科のことから、私たちがわずらいがちな心の問題や、コミュニケーションの問題まで。「つらくて何も受け付けない」ようなときでもスッと入ってくるような、フラットで、やさしい語り口に心が落ち着きます。2020.07.22
河出書房新社
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『想像ラジオ 』
毎日のように、悲惨な死を遂げた方のニュースを目にする。
自然災害も、毎年のように起こり、多くの方が亡くなっている。亡くなった方や、遺族の方の気持ちなど、ニュースを見ただけの自分には到底理解できるものではないし、むしろ、簡単に分かった気になってはいけないとも思う。
しかし、想像することをやめてはいけない。その方たちの声を聞こうとする気持ちだけは無くしてはいけない。そんなことを教えてくれた一冊だった。2020.07.20
新潮社
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『葬送 』
創作の苦しみに静かに耐え続けたショパンとドラクロアだからこそ、互いの気高さをよく理解していたのだと心を打たれました。人間関係のあり方、創作に対する姿勢などのすべてが、2人の作品の相似形のごとく、誠実で典雅な文章で描写されており、呼吸が深くなります。
(ミシマ社サポーターさん)
2020.07.17
筑摩書房
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『たましいの場所 』
私は生きるのが下手で、不器用な人間です。もう少し、要領良く生きることが出来たら・・・と時々思ったり。でも、そんな風にしか生きられない自分でも良いんだ、そう思える一冊です。著者の早川さんは不器用で、正直すぎです。でも、そんな人が、真っ直ぐな人が生み出す音楽や言葉は人々の心を動かすのだと思いました。
(ミシマ社サポーターさん)
2020.07.15
新潮社
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『イワン・デニーソヴィチの一日 』
人はどこでも生きていける。どんな環境でも生き抜くことができると教えてくれた本。30年くらい昔に読んだので内容はすっかり忘れてしまった(!)けれど、読みながら受けた衝撃は、今も鮮明に憶えています。
(ミシマ社サポーターさん)
2020.07.13
新潮社
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『イワン・デニーソヴィチの一日 』
人はどこでも生きていける。どんな環境でも生き抜くことができると教えてくれた本。30年くらい昔に読んだので内容はすっかり忘れてしまった(!)けれど、読みながら受けた衝撃は、今も鮮明に憶えています。
(ミシマ社サポーターさん ミシマ社サポーターさん)
2020.07.13
アルテスパブリッシング
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『文科系のためのヒップホップ入門3 』
現在アメリカで社会問題となっている人種差別の混乱。アメリカの黒人たちが社会へメッセージを広げる最も効果的な手段が歌=ヒップホップでした。本書は60年代の公民権運動のような国民としての権利獲得ではなく、差別そのものへの抗議の意思を強く表明する現代の「ブラック・ライヴズ・マター」運動などヒップホップカルチャーの時評から見えてくる本当のアメリカに驚くはずです。
2020.07.10
光文社新書
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『日本の映画産業を殺すクールジャパンマネー 』
これまでに1000億円以上の公的資金が投入されてきた「クールジャパン」。映画、アニメ、ゲームなどクリエイティブ産業も含まれているものの、「クールジャパンマネー」はクリエイティブを支える人へ1円も向けられていなかったという事実。官民ファンドで設立した会社の報告が詐欺同等のものであったり、官僚が巨額な投資について口頭で決済に公文書を残していないなどどこかで聞いた話が盛りだくさん。10ページ読んだだけで日本でクリエイティブを仕事にすることが嫌になる一冊です。
2020.07.09
笠間書院
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『世界現代怪異事典 』
話題の大著『日本現代怪異事典』に待望の世界編が登場しましたよ! 注目はスレンダーマンなどネットで拡散した怪異の項目。地域や国を問わず拡散するネット初の怖い話は「クリーピーパスタ」と呼ばれ、とても現代的な怪異なのですが、ここをしっかりと押さえているのが怪異ファンにはツボです。これからの夏におすすめの一冊です!
2020.07.06
新潮新書
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『トラックドライバーにも言わせて 』
小柄でかわいらしい女性、という印象の筆者だが、(本文中の写真より)トラックドライバー経験者である。トラックの車体の特徴や、過酷な労働条件、道路事情と大きな事故の原因、トラックドライバーのインタビューなど、盛りだくさんの内容。この本が話題となり、トラックドライバーを取り巻く状況が少しでも良くなることを祈ります。
(ミシマ社サポーター 伊良部恵美子さん)
2020.07.03