第31回
今年の一冊座談会「明るいコロナ生活」(1)
2020.12.28更新
ミシマ社では毎年恒例となっている「今年の一冊座談会」(昨年の記事はこちら)。今年も自由が丘と京都のそれぞれで座談会を行いました。今年の座談会は「明るいコロナ生活」をテーマに、メンバーひとりひとりが、今年読んだ本のなかからおすすめの一冊をプレゼンをしました。本日は自由が丘メンバーの、明日は京都メンバーの座談会の様子をお届けいたします。
***
スガが選ぶ「今年の一冊」
今年、益田ミリさんの『今日の人生2 世界がどんなに変わっても』(ミシマ社)に、感想のおはがきをたくさんいただきました。今年は仕事や生活の形が激変し不安を感じるなか、『今日の人生2』で描かれている、コロナでも変わらない日常の暖かな光景やそれを見つめるミリさんの眼差しに、ホッと一息つけた方が多かったのではないかと思います。
私が選んだ、現代川柳のアンソロジー『金曜日の川柳』をおすすめする理由も同じです。本の帯に「どうして、こんなことをわざわざ書くんだろう」とある通りで、日常の小さな小さな、だからこそ人間らしいシーンに、笑ったりときに心の奥にグッと来たり。ときには想像力豊かで自由すぎるフィクションの句も。約350ページある本ではあるのですが、「すげえ、こんなのよく思いつくなあ」と思いながらあっという間に読み終わりました。現代川柳、注目ですよ!!
サトウが選ぶ「今年の一冊」
スガくんが選んだ本と短い文章というつながりがあるのですが、『音楽の肖像』という本を選びました。バッハ、ベートーベン、モーツァルトなどのクラシック音楽の作曲家を、堀内誠一さんの絵とエッセイ、谷川俊太郎さんの詩によって一人ずつ描かれています。堀内さんが描く肖像画も風景も本当にすばらしくて画集としても楽しめるし、エッセイも音楽史として勉強になるというか。もうこれを教科書にしたらいいと思うんです。音楽の鑑賞の授業って、無理やり感想を書かなくてはいけない感じがして私は好きではなかったのですが、谷川さんの詩は自由で、現代風の言葉を使いながらもクラシック音楽に本当にぴったりの詩をかかれているので、音楽の授業でも感想じゃなくて詩をかいたっていいし絵でもいいなと思いました。10年後読んでもきっと面白いし、一生読んで楽しめる一冊です。
オカダが選ぶ「今年の一冊」
私が選んだのは『四畳半タイムマシンブルース』です。ヨーロッパ企画さんの舞台「サマータイムマシン・ブルース」と、森見登美彦さんの小説『四畳半神話大系』が"悪魔合体"した一冊です。クーラーのリモコンが壊れてしまったとある夏の日、ひょんなことからタイムマシンを見つけ、「このタイムマシンで壊れる前のリモコンを取ってくれば良いのでは?」という思いつきから、登場人物たちが様々なハプニングに巻き込まれるというお話です。
今年は産休を経て社会復帰をした年で、家族の本をよく読んでいたのですが、そもそも読書が進まなかったり、暗い本を読んでいたりでした。その中で、この本がとびきり明るくておもしろい本でした。内容を知っていながらも夢中になって読んだし、コロナのことや、もやもやしていたことを忘れてこの世界にどっぷりハマって読むことができました。
森見さんが『四畳半神話大系』の世界観も壊さずに書いてらっしゃって、相性ピッタリでした。
モリが選ぶ「今年の一冊」
「内田先生ファンである私の今年の一冊はもちろん『日本習合論』(ミシマ社)なんですが・・・、「コロナ時代を明るく生きる」という意味では、今月の新刊の『料理と利他』です。
この本の元になった対談ほか、今年開催した土井先生の4本のMSlive!にめちゃめちゃに影響を受けました。
モリは料理も仕事も、レシピ通りにやりたい設計主義者だったんですが、土井先生の味噌汁作りを見せていただいて、作為のない自然に沿う料理のすばらしさに気づきました。それで料理も仕事も、今までの自分ではありえなかったような「ええ加減」なことにチャレンジできるようになりました。毎日ざっくり作ったみそ汁を家族でニコニコ食べて幸せです。こんなに明るい話がありますか!?
あと、「自社本はダメ」って言われるかと思ってもう一冊・・・他社本で今年一番面白かったのは、白井聡さんの『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社)です。マルクスや資本論の末に「美味しいもの」の話になったので、「土井先生につながった!」と衝撃を受けました」
イケハタ「一人だけ3冊紹介している・・・」
ホシノ「モリくんが土井先生のすき焼き食べてリアルに鼻血出したところを見て、こんなことほんとに起こるんだ・・・って思いました」
イケハタが選ぶ「今年の一冊」
ぼくの今年の一冊は『人類堆肥化計画』です。著者の東千茅さんは、奈良県の宇陀で里山生活を送っている方で、〈里山生活=清貧〉という固定観念をぶち壊す悪魔的な一冊です。
「生きものを殺す悦び」なんてことが書かれていたりして、一見ギョッとするような、不道徳な感じもするのですが、そこを突き詰めていくと「たくさん殺すためには、たくさん育まないといけない」ということにもなっていくのが面白くて。飼っている鶏に「ニック」、稲に「穂波ちゃん」と名付けて、丹精込めて育てた末に、その子たちを殺して食べることの悦び。「生きることを生きる」ためのマニフェストでもあり、春夏秋冬の里山ぐらしを丹念に描写したエッセイでもあり、言葉遣いは文学的でもあり、本当に「生きている」感がドクドクと伝わってくる文章です。藤原辰史さん、デイヴィッド・モンゴメリさん、バタイユ、坂口安吾などの引用も多彩で、「人間と自然」といったテーマに興味のある方にとっては、ブックガイドにもなると思います。
ホシノが選ぶ「今年の一冊」
私は津村記久子さんの『サキの忘れ物』を選びました。9つの作品
外の世界が荒れ模様でも、
***
座談会のあとは、自然発生的に本の交換会になりました。「明るいコロナ生活」という1つのテーマを設定した座談会ではありましたが、様々なジャンルの書籍が選ばれていることや、コロナと直接関係のある本が選ばれていなかったことが興味深く思えます。
明日は京都オフィスの座談会の様子をお届けします。
(京都メンバーの座談会記事はこちら)
編集部からのお知らせ
2021年度ミシマ社サポーターのご案内
募集期間:2020年12月1日〜2021年3月31日
サポーター期間:2021年4月1日~2022年3月31日
*募集期間以降も受け付けておりますが、次年度の更新時期はみなさま2022年の4月となります。途中入会のサポーターさまには、その年の特典をさかのぼって、すべてお贈りいたします。
★2021年1月までにお申し込みいただいた方限定で、ミシマ社カレンダーをプレゼントします!
昨年つくったミシマ社カレンダー。今年もこんな感じでつくっています。
2021年度のサポーターの種類と特典
下記の三種類からお選びください。サポーター特典は、毎月、1年間お届けいたします(中身は月によって変わります)。
◎ミシマ社サポーター【サポーター費:30,000円+税】
いただいたサポーター費のうち約25,000円分をミシマ社の出版活動に、残りをサポーター制度の運営に使用いたします。
【ミシマ社からの贈り物】
* ミシマ社サポーター新聞(1カ月のミシマ社の活動を、メンバーが手書きで紹介する新聞)
* 紙版ミシマガジン(非売品の雑誌。年2回発行・・・の予定です!)
*生活者のための総合雑誌『ちゃぶ台』(年2回発刊)と今年度の新刊1〜2冊(何が届くかはお楽しみに!)
* 特典本に関連するMSLive!(オンライン配信イベント)へのご招待
* ミシマ社オリジナルグッズ
・・・などを予定しております!(※特典の内容は変更になる場合もございます。ご了承くださいませ。)
◎ウルトラサポーター【サポーター費:100,000円+税】
いただいたサポーター費のうち約95,000円分をミシマ社の出版活動に、残りをサポーター制度の運営に使用いたします。
【ミシマ社からの贈り物】
上記のミシマ社サポーター特典に加え、
*ウルトラサポーターさん交流会
◎ウルトラサポーター書籍つき【サポーター費:150,000円+税】
上記のウルトラサポーター特典に加えて、その年に刊行するミシマ社の新刊(「ちいさいミシマ社」刊も含む)を全てプレゼントいたします。いただいたサポーター費のうち約100,000円分をミシマ社の出版活動に、残りをサポーター制度の運営に使用いたします。
お申し込み方法
サポーター費のお支払いの方法によって、お申し込み方法が変わります。以下よりお選びください。
⑴ ミシマ社のウェブショップから クレジット決済・コンビニ決済・PayPal・銀行振込 をご希望の場合
ミシマ社の本屋さんショップ(ミシマ社公式オンラインショップ)にてお申込みくださいませ。
⑵ 郵便振替をご希望の場合
下のボタンから、ご登録フォームに必要事項をご記入のうえ、お手続きください。後日、ミシマ社から払込用紙をお送りいたします。
ご不明な点がございましたら、下記までご連絡くださいませ。
E-mail:supporters@mishimasha.com
TEL:075-746-3438