第29回
雑誌『ちゃぶ台』って、どんなことを「特集」してきたの?(後編)
2022.09.08更新
みなさんこんにちは。ミシマガ編集部です。
ミシマ社が2015年に創刊した雑誌『ちゃぶ台』。現在は「生活者のための総合雑誌」を謳い、半年に一度刊行しています。
今年12月刊行予定の『ちゃぶ台10』では、特集に「母語ボゴボゴ、土っ!」を掲げることになりました。
私たちの生活を支える「母語」についてじっくり考えるため、本日、「ちゃぶ台編集室」と題して、こんな公開インタビューが行われます!
【本日!9/8(木)19:00~開催】
「編集長が訊く! サコ先生、『母語』ってなんですか?」
<出演>ウスビ・サコ(聞き手:『ちゃぶ台』編集長 三島邦弘)
編集部の予感をもとに、そのときどきで最も気になるテーマを「特集」に掲げる。そして、その道の最先端を行く方々に対談いただいたり、新しいことが試みられている現場へと取材に赴いたりする。すると、少しずつ、一冊の雑誌が生き物のように生成していく。それが『ちゃぶ台』のつくられ方です。
『ちゃぶ台』がこれまで大切にしてきた視点や、雑誌としての立場が端的に表れるのは、各号の特集といえるかもしれません。
そこで本日のミシマガでは、昨日に引き続き、『ちゃぶ台』創刊時からこれまでの特集をふりかえります!
その6「非常時代を明るく生きる」
デザイン、刊行時期などを全面リニューアルした『ちゃぶ台6』の特集は、「非常時代を明るく生きる」。
2020年秋、「終わらない梅雨、四〇度を超える猛暑、残暑なく突入した秋。人との接触を限りなくおさえなければいけない日々」。編集長の三島は今号の冒頭でそう書いています。
そのときから早2年。「非常時代」的状況は、今もなにひとつ変わっていないといえます。コロナ禍だけをとっても、ここまで長距離戦になるとはほとんど誰も想像していなかった。そういう意味では、今号が謳った「明るく生きる」ことの重要性は、発刊時よりも高まっているのかもしれません。
「明るく生きよう」と腹を括る。『ちゃぶ台』の言葉たちが、少しでもそのような力につながればと願っています。
最初に「自然が豊かで」で住むのにいいと思ったのに、災害で「自然は怖い」と逆転してしまった。だけど、今はさらにクルッと反転しました。自然が豊かで自然は怖い。けど、納得して生きられる。だから好き。そんな感じです。
―― 「土と子と木と水と火、形が似てる」より、中村明珍さんの言葉
【こんな記事が読めます】
土井善晴 地球とAIと人間
町屋良平 猫の顎のしたの三角のスペース
藤原辰史×松村圭一郎 分解とアナキズム
齋藤陽道 時間が残った
猪瀬浩平 さびしい社会、にぎやかな世界
木村俊介(聞き手) 「文藝」編集長・坂上陽子さんインタビュー
その7「ふれる、もれる、すくわれる」
『ちゃぶ台7』の特集は、「ふれる、もれる、すくわれる」。
伊藤亜紗さん『手の倫理』のキーワードが、さわると「ふれる」。藤原辰史さん『縁食論』の「洩れる(もれる)」。今号に掲載の、時代の先端を行くお二人の対談に、編集長ミシマ自身が「救われた」、そうして今号の特集となりました。
「研究者の言葉って難しいのかな」という予想を裏切り、コロナ禍でふさいだ心や社会観を緩めてくれる、そんな温かさと頼もしさに反響をたくさんいただきました。津村記久子さん・益田ミリさんのエッセイや、尾崎世界観さんの小説など、文芸が充実している号でもあります。
伊藤 なんか、私と藤原さんは「動詞族」ですよね。
藤原 動詞族!? どんな族ですか?(笑)
伊藤 ものを考えるときに、「名詞族」の人、「形容詞族」の人、「動詞族」の人がいると思うんです。動詞族は、動詞をベースにしてものを考える人です。――「対談 『ふれる、もれる』社会をどうつくる?」より、伊藤亜紗さんと藤原辰史さんの言葉
【こんな記事が読めます】
伊藤亜紗×藤原辰史 対談「ふれる、もれる」社会をどうつくる?
尾崎世界観 びいと
寄藤文平 未来の描き方
益田ミリ(作)平澤一平(絵) ちゃぶ台ディスタンス
村上慧 他人の生活は、つまり自分の生活であって
中村明珍×宮田正樹 対談 喜びは収穫だけじゃない
その8「『さびしい』が、ひっくり返る」
『ちゃぶ台8』の特集は、「『さびしい』が、ひっくり返る」。
コロナ禍、先の見えない不安。いつまで続くかわからない自粛生活。元の日常に"もどる"ことを望みながら、「さびしい」を抱えながら、それでも、「現在」という揺るがぬ現実を生きていかねばならない。
ならばそのさみしさをひっくり返せないか? このテーマをめぐって、さまざまな方にご寄稿いただきました。
空元気を出そうとするのではなく、さびしさも悪くない、さびしさは悪くない、と気づくことが自分を救ってくれるのかもしれません。さびしさの先の自分は意外にもすっきりした気持ちになれる1冊です。
「さびしい」は一つの状態であって、べつに欠損ではない。
――「『さびしい』をひっくり返す」より、津村記久子さんの言葉
【こんな記事が読めます】
・松村圭一郎×村瀨孝生 対談 弱さとアナキズム
・藤原辰史 民間人について
・工藤律子 人のつながり、命のつながり パンデミック下のスペインより
・中島岳志×辻山良雄×三島邦弘 著者、書店主と考える これからの本のこと
その9「書店、再び共有地」
『ちゃぶ台9』の特集は、「書店、再び共有地」。
平川克美さんは『共有地をつくる』で、誰のものでもなく、かつ誰もが立ち入ることができる「共有地」の必要性を提唱されました。その具体例として、私たちのなかにまっさきに浮かんだのが「書店」!
全国の共有地の実践例を探るべく、営業チームメンバーが、普段からやりとりさせてもらっている「現代の共有地足りうる本屋さん」10店を取材しました。
・Seesaw Books「行き場を失った人のシェルターに」
・ブックカフェ「フルハウス」「ただそこに居ることができる "魂の避難場所"」
・栞日「自分のスタバをつくりたかった!?」
・Antenna Books & Cafe ココシバ「移民の町で」
・ポルベニールブックストア「お客さんが『雑談』をする!?」
・ブックハウスひびうた「生きづらさを感じる人の居場所として」
・毎日食堂/MAINICHI STORE「想像を馳せる買い物」
・ウィー東城店「お客さんの要望を聞くうちに『よろず屋』」
・汽水空港「『食える公園』という名の畑がある」
・うなぎBOOKS 旧塚本邸「ニュルニュルっと入り込む」
「なんでもない場所」がないと、だんだん自分と世界が乖離していきます。自分を慰めてくれる場が少なくなり、人が孤独に陥っているのがいまの社会だと思いますいまの社会だと思います。
――「平川克美×辻山良雄「小商いをはじめたら、共有地ができてしまった」
より、辻山良雄さんの言葉
【こんな記事が読めます】
三好愛 でてきたよ
高橋久美子/渡邉麻里子 対談 怒られの二人――それでも今、行動する理由
斉藤倫 ゆっくりながれぼし
松嶋健 基盤的コミュニズムをめぐる断章――〈縁〉と多孔性
次号の『ちゃぶ台10』特集は「母語ボゴボゴ、土っ!」。母語がボゴボゴとあふれてくる? そして、言葉と「土」の関係とは・・・?
いったいどんな一冊になるのか、編集部にとっても先行きは未知数ですが、ぜひお楽しみにお待ちください!
(終)
編集部からのお知らせ
【9/10(土)】平川克美×平松佑介×加藤優一「銭湯の編集術 番外編 銭湯のあるくらし~共有地としての銭湯の現在~」@SPBS TOYOSU&オンライン配信
<開催概要>9月10日(土)14:00~15:30
<出演>
平川克美
平松佑介(小杉湯三代目)
加藤優一(銭湯ぐらし代表)
<会場>
【オフライン】SPBS TOYOSU(東京都江東区豊洲2-2-1 アーバンドックららぽーと豊洲3 4F
【オンライン】Zoom ウェビナーを使用します。
<定員>会場視聴 30名 / オンライン 上限なし
<参加費>
【会場視聴】
・会場視聴チケット:2,200円(税込)
・『共有地をつくる』書籍+会場視聴チケット:4,360円(
【オンライン】
・オンライン視聴チケット:1,650円(税込)
・『共有地をつくる』書籍+オンライン視聴チケット:3,
■ 主催・企画:SPBS THE SCHOOL
■ 協力:ミシマ社
<内容>
生活スタイルが多様化したことにより、
街の中で人と人が顔を合わせる交流の場=「共有地」
SPBSで今年5月~7月に開催した連続講座「銭湯の編集術」
今回は「銭湯の編集術」のスピンオフ企画として、
「共有地としての銭湯の現在」
ゲストには今年『共有地をつくる わたしの「実践私有批判」』を上梓した
文筆家・平川克美さん、高円寺の老舗銭湯「小杉湯」三代目番頭・
〈銭湯ぐらし〉代表・加藤優一さんをお招きします。
「誰のものでもないが、
わたしたちの生活はずいぶん風通しの良いものになるのではないか
共有地として発展し続けている高円寺の老舗銭湯「小杉湯」
エリアリノベーションの観点から銭湯を軸として街の地域資源を生
3人が考える共有地としての銭湯のあるくらしとは。
銭湯、食堂、喫茶店、縁側……
誰のものでもあり、誰のものでもない場所、「共有地」